第3回 成功者の悩みとカウンセリング 運が良いとき、逆境のとき
運勢の流れには順境と逆境があるといいます。
おおまかにいえば、順境とは上手くいっているとき、逆境とは苦しい状況が続くときです。
人生において順境と逆境を多く経験します。成功者は順境と逆境の差が驚くほど大きい場合があります。
上手くいくときは大きな成果を上げる。そのかわりに、失敗するときは他の人が立ち上がれないと思うほどの大きな失敗をする。そういうパターンを繰り返す成功者もいます。
とうぜんながら、そのような変化の波は成功者にとって大きな負担となります。そして順境と逆境の状況では、こころの状態も大きく変化します。
私は運勢についての専門家ではありませんが、人生で上手くいっているとき、苦しいときに、こころの状態がどう変化するかについて、実際のケースを通じてみてきました。
物事がうまくいっているとき、いかないときには、それぞれどのようなこころの状態で過ごせばいいのか。
それを考えるために今回はこころの状態からみた、順境と逆境について説明していきます。
順境と逆境のこころ
順境とはどのような状態でしょうか。
人生を送るなかで、上手く物事が運んでいる状態のときといわれます。それは大きな成果が出たときを想像することもあるかもしれませんが、それだけではありません。
一見、何事もないような状況が続いていて、多少の波はありつつも安定している状況。
それが順境の時期です。
順境の時期に起こりやすい、こころの状態は次の通りです。
今の状態が続くであろうという希望的観測。
気分は安定している。
周囲の人との友好的な交流ができる。
状況の良いところが見える。
他人の善意を受け取ることができる。良い人に囲まれていると思える。
冷静に状況をみる批判力は低下する。
高い買い物、過剰な投資など、必要のないものを手に入れようとする。
自信があって、自己効力感(私がすれば良い結果が出る)が高まる。
他人に対して批判的な意見を言うことができる。相手と交渉ができる。
新しい仕事や問題点が出てきても「新しい課題に取り組もう」と対処行動がとれる。
こころの成長という側面からは、逆境に比べて取組むべき課題の力が弱いため、成長は停滞しがち。
順境のときは気分が高まっているか、もしくは安定している状態です。本人の感覚としては、ストレスが少なく、物事が上手く進んでいるような感覚です。
それは一方で、物事は常に変化をしているという現実を、あまり見ようとしない状態ともいえます。
逆境を経験たことのある人にとっては、順境は「できる限り長く続いてほしい」と思える時間でもあります。
逆境のこころ
では逆境とはどのような状態でしょうか。そして、こころはどのような状態になるのでしょうか。
他人からの批判的な意見ばかり気になる。相手が伝えた内容以上にマイナスに受け取る。
周囲の人が、自分を理解してくれない、自分に悪意を持っているかもしれないと思う。
物事に対処しても結果が出てこないと感じる。自己効力感の低下。自己批判。
理想よりも目の前の現実に注意が集中する。
悪い状況が長く続くのではと否定的な状況予測をする。
仕事や課題に対して負担を強く感じる。対処行動をとるまでに時間がかかる、もしくはあきらめて行動しないことがある。
悩み事に対処できるのかどうかという不安が高まる。
結果を求めるが、行動の成果が出るまで時間がかかると感じて、焦る。
成長すべき課題がみえてくるため、実はこころが大きく成長するチャンス。
物事の失敗、成果が出ないことが続き、気持ちとしては八方ふさがりの状態になります。
少し物事が上向きになる出来事が起きても、すぐにマイナスが続く。しかも上手くいったと思ったら、次はまた辛いことが起きるという波が続きます。それが逆境の時期です。
マイナスの波が続くことで疲労が蓄積されます。「もうこんな状態は嫌だ」と思っても、状況は変わらないのでさらに追い詰められます。
成功者は、順境を重ねてきたから成功したのではなく、逆境に対処してきたから、結果を出せたのです。
順境のときは、気持ちとしては上手くいっていると思っても、こころの側面からすると、成長が滞っている場合があります。一方で逆境のときは気持ちとしては行き詰まっていても、こころの側面からは大きく成長するチャンスであることが多いです。
ただし逆境はこころの負担は大きくなるので、こころが弱ってくる、悩みが大きくなってしまうというデメリットがあります。
逆境のときも順境のときも、周囲の状況をどのように把握するかという判断力に影響を及ぼします。状況をどのように意味付けするかということは、こころの状態に大きく影響を受けるからです。
気分が落ち込んでいるときには、マイナスに意味付けしやすく、気分が高ぶっているときは必要以上にプラスの意味付けをします。
そのバランスをどのようにとるかが大切になります。
こういった特徴をふまえると、どのように順境、逆境を過ごせばいいのか、こころの構え方がみえてきます。
順境、逆境のときのこころの構え方
順境では冷静に状況を捉える力が弱まります。そして見た目の成長は起きていても、内的なこころの成長はあまり起きません。
「自分はできる人だ」という自尊心の肥大化は起きたとしても数日たてば、気分が収まります。
順境のときほど、行動は慎重にする必要があります。大きな決断をするときも、すぐに行動するより数日距離を置いて、冷静に判断できるというときまで待ってみる慎重さが求められます。
逆境では、肯定的に物事を捉える力が弱まります。そのため気持ちとしては逆に「今、確実に変化している」「ここまで積み上げてきた結果としてここにいる」という成果を確認することが大事です。
先が見えない状況なのですが、それはそこまで進んできたからこそ出会った状況という視点も必要です。それは成長の階段を上ったからこそ出会う課題。成長しない人には出会わない課題であることがわかります。
「なにができていない」「なにができない」よりも「ここまではできそう」「ここまではできた」という成果を確認することも必要です。
そうして長い逆境の時期を乗り切ったとき、次の大きな成果を手に入れることができるでしょう。
順境を続けたいという強い願い
順境をできる限り続けたいと望む方がおられます。それは当然だと思います。しかしながら、それを続けることは実際には難しいです。かならず人生には波があります。
順境を続けるためには、ひとつ方法があります。それは自ら逆境を引き起こすという方法です。
誰かに迷惑をかけて逆境に追い込むなどではなく、自分自身が苦しいと思うほどの目標を立てて実行することです。
そうなると自分が成長するような逆境の状況を自ら生み出すことができます。これはスポーツ選手のトレーニングが参考になります。
いいかえれば、しんどい状況でも自分がやらなければならないことを見つけ、それに取り組む。取り組んでいる自分を認め、信じる。それを続けている限り、かならず成果はみえるようになり逆境の状況が晴れていきます。
逆境にいる人が、どのようなこころの状態であり、何に取り組んでいるか。それをこころの側面から把握して支えるのがカウンセリングです。
逆境を軽くするというよりも、逆境から何を学び、逆境どう生きぬくのか。カウンセリングでは、そのこころを支えます。
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