弁護士との打ち合わせ

裁判――というと私はテレビやゲームの中の話だと思っていた。
今まで生きてきた中で裁判所など一度も行ったことがなく、
また関りを持つことも全くなかった。
そのまま一生を終えるだろうと考えており、
まさか自ら裁判を行うとは夢にも思わなかった。
今回はそんな話の冒頭を綴ろう。

弁護士への訪問日程が決まり私は準備を進めた。
と言っても前回の別の弁護士訪問の際にある程度資料をまとめていたので、
その後に送付されてきた『返金申請書兼同意書』を付け加えた位だ。

事務所訪問の当日、私は非常に緊張していた。
何せこれから裁判を行う事になるかもしれないという不安と、
「こんなくだらない案件を相談しにくるな」と言われるのではないかという
不安が入り交じりあまり良い精神状態ではなかった。

予定通りの時間に事務所に入り受付事務員へ挨拶を済ませる。
そして少し待った後、弁護士が入室してきた。

まず驚いたのは打ち合わせを行う弁護士が1人では無かった。
複数名の弁護士が入室してきて着席した。
私は裁判を行うことになるかもしれない旨を伝えていたため
「一般的にこのように複数名で話を進めるのですか?」と尋ねると
「複数名で担当した方が作業がスムーズに進むんですよ」と回答された。
なるほど。確かにその方が効率的だ。
しかしあまり広くは無い部屋で弁護士に囲まれることにより
私の緊張は更に増した。

「それではよろしくお願いいたします。」打ち合わせが始まった。
ある程度の概要は伝えていたが手持ちの資料を共有し、
あらためて現状の確認を行う。
先方も一通りメディアへの取材記録やクラウドファンディングの内容に
ついて既に確認を済ませていたため、大きな祖語はなく話は進んだ。

「うん、これは内容次第でほぼ100%勝てる案件だね」
予想はしていたがあらためて言葉を耳にすると少し安堵した。
そしてこう付け加えられた。
「あとは本格的に裁判を進めるのであればもちろん費用が発生するよ。」
もちろんそのつもりだ。その為にpaypalで費用も集めてあった。

「費用は大体どれくらいでしょうか?」私は尋ねる。
「そうだね。正直この案件を引き受ける弁護士はそうそういないと思うし
 我々としてもそんなにメリットのある話ではないんだ。
 ただ、今回のケースは特殊だ。クラウドファンディングの制度を悪用し
 ている。これはmitoさんの為というのもあるが、本当に困っている人が支
 援を受けられなくなってはいけないという問題提起が主となるから引き受
 けるよ。着手金30万+成功報酬30万円+諸費用だね。(金額は概算)」

paypal支援で20万円程の支援があったので金額については何とかなりそうだと思った。私は念のため尋ねた。
「今インターネット上で支援を募っているのだけれど引き続き支援をお願いしてこれを費用に当てても良いですか?」
少し間を置いた後回答が来た。

「今回はクラウドファンディングの問題点を指摘するための裁判になる。
   それに対してこちらもクラウドファンディングを用いるのは、
   場合によっては裁判官の心証を悪くするかもしれない。
   だから発生するお金は全て自分で支払って欲しい」

正直この展開は予想していなかった。そして痛い。金額が大きい。
それでもここまで来て退くわけにはいかない。
「わかりました。よろしくお願いいたします。」

そしていよいよ裁判の内容を決める作業が始まる。
「mitoさんの目的は何?お金?名誉?」
私は答えた。
「社会的制裁です。間違った事がまかり通る世の中ではいけないと思います。」
「ではそのような内容で訴状を作成しましょう」
請求内容の詳細を決める作業が進められた。

私は基本的に受け身の体制で「これでいい?」と聞かれ問題がないか確認する程度であった。そして出来上がったのがTwitterで報告した訴状内容だ。
あらためて内容を確認すると、もし仮に滞りなく裁判が終わったとしても
得られるものはパスポートの返却と微々たる金額であり、
弁護士費用を考えると大きくマイナスだと思った。

だが「誰かがこれをやらなければならない」という気持ちに変わりは
なかったのでその内容で裁判を進めることに合意した。
私はこの時自分の中で決めた目標があった。

①口外禁止という条項は絶対に飲まない
②金銭で解決するつもりは無い
③全てが終わったら世間一般にこのことを伝えたい
 もし出来ればyoutuberのヒロシさんの生放送で報告会をしたい

これらを目標に頑張ろうと決意した。
打ち合わせの最後に弁護士から声を掛けられた。
「そういえばバズれば何でもいいと取材を受けていましたね。
    最後に一発大きな花火をバズらせましょう!」

それは数か月後現実となった。

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