――――時は遡り2019年4月
これは茨城県で働く一人の男の物語である。

ある日スマホのニュース記事の一覧を眺めていた時ふと目についた記事があった。

『水戸に1万円のクラウドファンディングで納豆ご飯定食が生涯無料で食べられる店がオープン』

私は水戸で昼食を食べることが多かったのでこのニュース記事には大きく興味を持った。早速アクセスを行うと確かに見出しの通りのニュース記事が書いてあった。

「確かに実際に1万円で定食が生涯無料で食べられたら得だな…。実際牛丼チェーン店でさえ400円位かかるし初期投資を行えばこれはいいチャンスかもしれない。ただなぁ、どうせこういうのって何か裏があったりするんじゃないのか？」と記事について他のニュースを調べていたところテレビにも取り上げられたりしており、ある程度信頼できそうな雰囲気であった。

「まぁこういうのはきっと何年かしたら閉店したりして使えなくなるんだろうな。それでもそれまで使えれば十分お得か。えっと…これを買うにはクラウドファンディングというのを行えばよいのか。どれどれ。」私は割と即決で買い物をする方なので早速購入用のクラウドファンディングのサイトを開いた。

そこに表示されていたのは『募集締め切り』という文字。どうやら先着100名限定のパスポート販売だったらしい。私は落胆したが、一度欲しくなると手に入れたくなる性分なので思い切って店に電話をかけてみた。しかしながら電話での返答はホームページ上の表記と同様ですでに販売は締め切ったとの内容であった。売っていないものは仕方がないのでしばらくはその事を忘れていたがある日また気になるニュースが目に入った。

『納豆ご飯生涯無料パスポートを追加で1,000人分受付』

これはチャンスと思い早速クラウドファンディングの申し込みを行った。　なんといっても本人限定の使用に限られるが、その他の条件もなく一日一回使用出来るパスポートを1万円で購入出来るのであれば安いものであり、　私はパスポートが届くのを心待ちにしていた。

店がグランドオープンするのは7月10日。
その日を楽しみに待っており、またパスポートの到着も楽しみにしていた。
だがしかしここで問題がおきる。パスポートがいつになっても届かない。

「流石にオープンの日までには届くだろうなぁ」と思っていたが結局
7月10日を過ぎてもパスポートが届かなかった。
住所を入れ間違えたかと心配になり問い合わせを行おうかと考えていた
オープン2日後に店舗からメールが届く。要約するとこうだ。

『開店日の7月10日に届けるとプロジェクトページに書いていないので、
申し訳ないがその旨を理解してほしい。7月中には届けます。』

大変残念な内容ではあったが小さな店舗であり人手に限りがあるのも仕方がないと思い気長に待つことにした。
―――結局パスポートが届いたのは7月31日頃であった。