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欧州ビッグクラブのグッズ展開まとめ

えとみほさんの問題提起に刺激を受けて、欧州ビッグクラブのグッズ展開がどうなっているのか、noteにシリーズにまとめてみようと思い立ちました。分析というよりはレポーティングで、Jクラブの今後のグッズ展開の参考になるような、ポジティブな議論が起こるといいなと思います。

■グッズ展開の整理

近年のサッカークラブのグッズ展開は、「日常使い」「ロゴのシンプル化」「スポーツ性」で整理して語ると、とても面白い議論になるのではないかなと思っています。

①日常使い
どんなサッカーファンでも大半の時間は日常生活を送っているわけで、好きなクラブのグッズを非日常である試合日にのみ身に着けられるものではなく、ショッピングやビジネス、自宅などあらゆる日常シーンに取り入れて、好きなクラブのプロモーションをサラッとカッコよくやりたい(あわよくば話題にしたい)と実は思っています。

しかし一見してそれと分かるグッズでは日常のなかでは激しく浮いてしまい、それは自身の生活にもクラブにとっても有益なことではないと考え、身につけるに至りません。
非日常である試合日に身につけると最高に楽しいユニフォームやタオルマフラーが悪いわけではなく、日常で使えるグッズの選択肢がもっと増えてほしい、というのがファンの望みです。

↑はバイエルン・ミュンヘン、マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、アーセナルのネクタイ。個人的にはネクタイは今後人気出ると思います。

バイエルン・ミュンヘンでももちろんタオルマフラーはガンガン売っていました。試合日に身に着ける非日常グッズは販売の柱でしょう。

マンチェスター・シティはキッズ/ベビー向けも非常に充実していました。絵本の内容ももちろんしたたかに…。

欧州ビッグクラブでも日常使いできるグッズへの意識は高く、グッズショップはアパレルショップのようなマネキンや家具屋のようなモデルルームを設置し、あなたの日常に溶け込めるよというイメージを作り、グッズ使用への信頼を高める努力をしています。なかでもマンチェスター・ユナイテッドは「ライフスタイル」というコーナー自体を設置しており興味深く映りました。

②ロゴのシンプル化
エンブレムやロゴはクラブの歴史や誇りを感じさせる極めて重要なものですが、いざ日常使いのできるグッズを開発しようとした際に、そのデザインの複雑さがハードルとなりがちなことは事実でしょう。

しかしそのままでは商品は売れずクラブは世に存在感を出せず、新たな時代にクラブの素晴らしさを伝えていくことが困難になっていきます。

そこで多くのクラブが取り組んでいるのが、エンブレムやロゴからアイデンティティを上手く抽出し引き継いだシンプルなデザインのロゴをグッズに適用させていくことです。

↑アーセナルはクラブ前身の兵器工場の労働者チームのアイデンティティを引き継いだ、大砲のみのロゴをシャツに展開していたり、

↑そもそもAFC(Arsenal FCの略)と小さく書かれたのみの利用もあったり。このくらい簡略化しすぎる場合、どこかに補足説明的にもう少し何のクラブが分かる要素を置いています。この商品ではタグでした。

こうしたロゴ開発は様々なジャンルの商品開発を容易にし、また「ライトなファンがこれなら身に着けられるだろうと手を伸ばしやすくなる」ことも重要な観点ではないかと考えます。エンブレムはちょっと重くて身に着けられなくとも、シンプルロゴくらいなら身に着けてもよい、と考えるライトファンは多くいるはずです。


すでにJクラブも多く取り組んでいると思いますが、皆さんの好きなクラブにはこうしたシンプルロゴを柔軟に利用したグッズがあるでしょうか?


③スポーツ性
ロゴをシンプル化し、日常使いのできるグッズを開発していくと、それぞれのジャンルで既存ブランドが激しくしのぎを削っている市場に近づいていくのではないかと考えます。

その場合、買いたいブランドはどちらか、質は、デザインは、価格は、と純粋な比較対象として争うことになり、商品開発のみにフルリソースを投入できないスポーツクラブは分が悪いように思われます。

しかしここには一考の余地があります。世の中がスポーツの持つ健康的、爽やかさ、機能性といったイメージに対して関心を高めているという状況を活かした差別化ができないか。
クラブのグッズはその他ブランドに対して、上記のようなスポーツ性をより根源的に纏うことができるはず。またこうしたスポーツ性を欲する既存ブランドとのコラボを展開していくこともできます。


■欧州ビッグクラブのグッズ展開は?

「日常使い」「ロゴのシンプル化」「スポーツ性」は、欧州ビッグクラブを中心に全体的なトレンドとして見受けられると感じています。

サッカー産業のグローバル化によるファン層や規模の変化があり、必ずしもスタジアムに来る数万人だけがマーケティングにおけるメインターゲットでなくなり、その新たなターゲットに向けた商品開発が進んでいる(およびクラブのアイデンティティも応じて整理されてきている)というのが僕の理解です。今回いくつかの欧州クラブのグッズを回って見てきたので、次回からはそのレポートをします。

Jクラブは欧州ビッグクラブのようなグローバル化はしていませんが、女性やファミリー層、金Jの仕事帰りサラリーマン(?)などもともとのファン層が多様であることから、彼らにも負けない商品開発ができる土壌があると信じます。


皆さんの好きなJクラブの「これはイケてる!」と思うグッズ、もしくは作ってもらいたいグッズなど紹介してもらえたら嬉しいです。ベストプラクティスが共有されることは、日本サッカー界全体にとっての貴重な財産になるはずです。


※1 宇都宮徹壱さんのウェブマガジンでのえとみほさんへのインタビュー記事も面白かったです。
https://www.targma.jp/tetsumaga/2018/05/10/post8861/
※2 スポーツ観戦女子をどう増やす?女性ファンつかむカギはビジネスの現場に
http://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/feature/15/070800035/122600015/
※3 拝啓 Jリーグ様。〜Jリーグ見ない系女子が考えていること〜
http://dearfootball.net/article/999

※4 もちろん日常使いグッズ開発においては課題が存在すると考えています。これは今後やれればと。
・クラブ内の開発ノウハウの課題
・求められるクオリティの課題
・アパレルブランドの競合となる課題

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