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クリエータ紹介(12) 畑さん、丹下さん - デザインと技術で、10代・20代の「プレゼント選び」に新たなスタンダードを

このnoteでは、福岡未踏的人材発掘・育成コンソーシアム(通称・福岡未踏)のプロジェクト採択者について、プロジェクトの詳細や福岡未踏にかける思いをご紹介します。

今回は、畑倫平さんと丹下創太さんの挑戦をお伝えします。彼らが取り組んでいるプロジェクト「Hosh!」について、彼らの出会いやプロジェクトの詳細、そして福岡未踏での目標についてお話を伺いました。

プロフィール

  • プロジェクト名:Hosh! ~他の人の欲しいのも検索できるサービス~

  • 支援プランと期間:Grow(23年11月~24年1月)

  • クリエータ:畑 倫平さん(九州大学 工学部 電気情報工学科 3年)、丹下 創太さん(九州大学 芸術工学府 ストラテジックデザインコース2年)

畑倫平さん ブースト会議での様子

これまでの歩み、来歴

畑さんは、九州大学の工学部 電気情報工学科に在籍する22歳。同じ分野を学んでいた彼の父親の影響もあってか、プログラミングとAI(人工知能)に深い興味を持ち、大学生活をスタートしました。しかし、新型コロナウイルスの影響でオンライン授業が主流となり、自宅での学びが中心となったり、2年次には大学の授業だけでは物足りなく感じるようになったことから、自らの手で何かを創り出したいという思いを強く持つようになりました。そんななか、大学院の先輩との出会いをきっかけとして、先輩の勧めでWebプログラミングを学び始め、その面白さに魅了されると同時に、自分の手で直接社会に影響を与えることのできるプログラマーとしての道を志すようになったと言います。

さらに畑さんは、大学3年生になるタイミングで大胆な決断をします。それは、大学を休学し、自らのスタートアップ企業を立ち上げることでした。休学と起業を決意した背景には、新たな知識を身につけ、より広い視野を持ちたいという思いがありました。実際に彼は起業してから不動産検索アプリの開発、WordPressを活用したWebサイト制作など、多岐にわたるプロジェクトに挑戦。さらに、アルバイト先の塾で生徒の進捗管理システムを開発するなど、多彩な経験を積んできました。

一方、丹下さんは、九州大学大学院の芸術工学府 ストラテジックデザインコースの2年生、24歳です。彼のデザインへの関心は、彼の祖父が設計士だったことから生まれました。当初は建築の道に進むことも考えていましたが、受験の過程でデザインの分野に興味を持ち、最終的には芸術工学部を選択。大学での学びを通して、プロダクトデザインやサービスデザインに深く携わります。丹下さんのデザインに対する情熱は、具体的な創作活動にも表れています。コロナ禍の影響を受けて開始した500日連続のグラフィック制作は、彼のクリエイティブな才能をさらに磨く機会となりました。また、彼はWeWorkの学生アンバサダーとしても活動し、学生と社会人の間で橋渡しをするイベントの運営にも取り組んでいます。さらに、彼のデザインはコロナ禍のCM用のキャラクターに採用されるなど、すでに社会で高く評価されています。

ふたりは、福岡市が支援する取り組み「エンジニアフレンドリーシティ福岡」が2022年から開催しているハッカソン・コンテスト、Engineer Driven Day(EDD)で出会いました。EDDのプロジェクトでデザイナーの力が必要になったチームに開発者として参加していたのが畑さん。そこに、デザイナーとして丹下さんが加わったのです。

年齢も専門も異なる二人は、それぞれの分野での経験と専門性を生かし、互いに刺激を受けながら「Hosh!」というプロジェクトに取り組んでいます。

プロジェクトの概要

「Hosh!」は、若者たちのプレゼント選びを革新するアプリケーションです。特に10代から20代の若者に焦点を当て、その世代の方々が直面する「大切な人へのプレゼント選びの難しさ」という普遍的な課題に取り組んでいます。「Hosh!」のビジョンは、ユーザーが理想のプレゼントを見つけるためのサポートを提供することです。

このアプリケーションでは、ユーザーが自身の欲しいものをリストにして登録し、他のユーザーと共有することができます。この機能により、プレゼントを選ぶ際に、他の人が何を欲しがっているのかを参照することが可能になります。さらに、他のユーザーのリストを見ることで、年代やバックグラウンドが異なる人々の欲しいものにも触れることができ、プレゼント選びのアイデアを広げることができます。また、気に入ったアイテムをお気に入りリストに追加することで、後から簡単にアクセスすることが可能です。

EDDで取り組んだ「Hosh!」の初期のバージョンでは、ユーザーがデータを登録するモチベーションの設計不足や、収集データの少なさが大きな課題でした。また、プレゼントを贈る機会自体が限られているため、アプリの使用頻度を高めるための工夫も求められていました。これらの課題に対処するため、畑さんと丹下さんは、ユーザーが自分の現在の欲求や気分を投稿し、他のユーザーからの推薦を受けるインタラクティブな機能の導入を考えています。また、ゲーム要素を取り入れることで、アプリをより楽しく、親しみやすいものにしようと計画しています。例えば、会議のアイスブレイクや飲み会などで使えるゲームを通じて、「Hosh!」を体験してもらうことで、新しいユーザー層を引き付けることを目指しています。

「Hosh!」は、10代〜20代にとって、プレゼントを選ぶ手法として新たなスタンダードとなることを目指しています。テクノロジーとデザインの融合により、プレゼント選びのストレスを軽減し、より豊かな体験を提供することがこのプロジェクトの核となっています。畑さんと丹下さんは、ユーザーの心に響く、使いやすく、楽しいアプリの実現に向け、熱心に取り組んでいます。

丹下創太さん 成果報告合宿での様子

福岡未踏への応募理由

EDDプロジェクトで、彼らは「Hosh!」の基礎となるものを開発することができたものの、彼らには、「Hosh!」をさらに良いものにしたいという情熱がありました。ちょうどEDDのプロジェクトが終了するタイミングで、引き継ぐ形で福岡未踏に応募。彼らにとって福岡未踏が魅力となったポイントは、「資金援助」と「フィードバックの機会」です。

実際、多くの時間を割くため、資金援助があることには大いに助けられているそうです。しかし、それ以上にメリットが大きいのが、メンターからのフィードバック。「自分たちでは生み出せなかったアイデアをもらえています。僕たちふたりだと『これでいける!』と思っても、指摘をいただいて気付くこともあります」と丹下さんは話します。例えば、ユーザーが「Hosh!」に自身の欲求や気分を投稿するにあたり、8つの選択肢から選んでもらう形式にして、どんな時でもいずれかの選択肢は選べるように網羅したい、と彼らは考えていました。しかし、メンターの方から頂いたのは、「むしろ『こんな感情の時に開いてもらえるアプリにする』と決めてから開発をするのが良いよ」というアドバイス。「短い期間でプロダクト開発を進めるにあたっては、ある程度利用シーンを絞ることも大事だと気付かされました」と振り返ります。彼らは、福岡未踏への参加を通じて、プロジェクトの質を向上させ、ユーザー体験をさらに深化させるための専門的な意見や指導を受けられるチャンスと捉えています。

成果報告会での様子

福岡未踏で成し遂げたいこと

アプリの開発を担当する畑さんにとって、福岡未踏での最大の目標は、特にユーザーが「Hosh!」を知るきっかけにもなる「ゲーム」の部分と、使うきっかけになる「欲求の発信とプレゼントのレコメンド」部分に関する実装、そして実際にユーザーが利用したうえでフィードバックを受け取ることです。また、福岡未踏に、専門分野の異なる丹下さんと一緒に参加したことによって、「UI/UXデザイン」の視点を持てたことが財産となったと畑さんは感じています。今後の人生でもアプリ開発やものづくりに携わりたいと考えているうえで、「どうやったらユーザーが使ってくれるか」に関する知見、視点を得られたことに大きな価値を感じています。

デザインを担当する丹下さんの目標は、デザインの観点から「Hosh!」をより魅力的で使いやすい製品にすることです。また、丹下さんの長期的な目標は、自身の作品が広く社会に認知され、影響を与えることです。丹下さんが関わった作品が話題になり、自分から関わったことを話すよりも先にプロダクトの話題が出るなど、作品が評価されることを夢見て挑戦を続けています。もちろん、「Hosh!」がそのプロダクトになるかもしれません。

彼らの共通の目標は、福岡未踏プロジェクトを通じて、ユーザーに「Hosh!」を実際に届け、さらに利用したユーザーの声を聞くことです。そのため、互いの得意分野でプロジェクトに貢献しながら、今日も開発を進めています。

畑倫平さん 「Hosh!」のコンセプトを発表している様子
中央)担当PM中村優吾氏とお二人

おわりに

年齢や専門の異なるふたりのプロジェクト「Hosh!」。ふたりは「若者たちのプレゼント選び」という日常的な問題に対して、お互いへのリスペクトを持ち、革新的な解決策を提供しようとしています。単に課題を解決しうるロジックだけでなく、ゲーム性やインタラクティブ性を備えるなど、どうしたら使ってもらえるかまで考え抜かれたプロダクト。街中で話題になる日も近そうですね!

福岡未踏とは

福岡未踏的人材発掘・育成コンソーシアム(通称、福岡未踏)とは、福岡県在住の若手クリエータを発掘・育成し、クリエータの「何かを作るための第一歩」を支援し、また、IPA未踏と同等の支援に加え、複数のIPA未踏経験者からなるPM・メンター陣にて、プレ人材向けの支援を行います。