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ユカタン半島周遊 南北アメリカ自転車縦断 メキシコ(16)

メリダのホステルで1泊し、翌12月13日にサイクリングを再開。まずは120㎞離れたチチェン・イッツァを目指す。チチェン・イッツァはマヤ文明の遺跡で、規模にせよ、重要度にせよ、(そして有名度においても)この後訪れる予定のグアテマラのティカル遺跡と双璧をなしている。

メリダの都市圏を抜けるまではちょっと苦労したが、国道180号線に出てからはほとんど平らな道。有料道路の分岐点まではちゃんと路肩があったし、その先は路肩は無くなったものの交通量が少なくなって快適に走ることができた。(路肩があるのはメキシコでは珍しい。)

ただ、平らな上に両側ジャングルなので、肝心の景色の方はいまいち。しかもいくら走っても景色が変わらない。

実際ユカタン半島は(少なくとも私が走ったところは)どこまでも平らだった。そして湿度が非常に高い。地形も気候もこれまでのメキシコと全然違う。

平らなのでどんどん進み、午後2時にはチチェン・イッツァに着いてしまった。もともと今日はチチェン・イッツァ近辺で野宿して遺跡の観光は明日にするつもりだったのだが、今日中に見てしまうことにする。

入場料88ペソ。さすが第一級の観光名所だけあって、お値段もなかなかだが(笑)、さすがにチチェン・イッツァには入らないわけにはいかないだろう。

何と言っても最初に登場するピラミッドがすごすぎる。登ったが、上に立つとかなり怖い。一面ジャングルの眺めはすごいが正直楽しむ余裕がない。

それ以外の建物も見てまわったが、どれも大規模ですごい。語彙が貧弱で「すごい、すごい」しか出てこないのが悲しいが、とにかくすごい。一体どうして、そしてどうやってこんな建造物を彼らは造ることができたのか。人間の才能というのはかくも素晴らしい。

夕方になって観光客もほとんどいなくなったので、もう一度ピラミッドに登る。(2回も登る物好きはなかなかいないはず(笑)。)2回目はだいぶ余裕ができて、怖いながらも景色を楽しむことができた。どこを見ても、どこまでも平ら。丸い地平線が見渡せる。そして夕日に染まる遺跡たち。

これ以上ない、と思える夕暮れを過ごして、一旦退場。一旦、というのは、夜に光のショーをやるのだが、昼の入場券があれば無料になるのでそちらも見ることにしたから。

崇高なマヤの遺跡に観光客を楽しませるためだけの光のショーなんて邪道でないか、と思っていたが、ピラミッドに光が当たると幻想的でそれなりに楽しめた。ただ、内容はマヤ文明やチチェン・イッツァの歴史についてだったようだが、スペイン語なのでよくわからず。最後は飽きてしまったけど。

終了したのは8時でもう真っ暗。星がきれいで、流れ星もいくつか見えた。

、、、と、ここで終われば、「素晴らしい一日でした」になるんだけど(笑)。

この後暗い中、野宿する場所を探さないといけない。幸い、最寄りの町であるピステから遺跡までは道路以外にサイクリングロードがあり、その脇でテントを張った。

しめしめ、これで快適、と思い、就寝したが、夜中の1時に見回りの人に見つかって、「ここはダメ」みたいなことを言われてしまう。

「マジかよ」とは思ったが、見逃してくれる感じでもなかったので、素直にテントを片付け、自転車に乗る。

国道まで戻ると、遺跡に通じる道路は閉まっていて、真夜中にも関わらず何と警官が1人警備していた。世界的に有名な遺跡、ともなるとここまでしないといけないらしい。これでは「出ていけ」と言われるのも仕方ない、と納得する。

国道からは最寄りの町ピステではなく、反対のバヤドリドに向かって走る。

見回りの人は「ピステに行けば宿がある」みたいなことを言っていたようだが、この時間では宿も開いてないだろう。仮に開いていたとしてもこんな時間から宿に入るのもしゃくだし、ということで、他に野宿できるところを探すことにする。今日はなんとしても野宿してやる。

真夜中なので、遠くへは行けない。ほんの1kmほど走ったところの道路脇に小さなスペースを見つけ、そこにテントを張った。

しかし、夜中はトラックが頻繁に通る。音がうるさいだけでなく、通過するたびにテントが風で揺れる。結局ほとんど眠れなかった。

ここまでの旅行で、1~2を争うくらいの大変な夜だったかもしれない。

※※※※※

翌日は40㎞だけ走って、バヤドリドのホステルで1泊。ユカタン半島は観光客が多いので、主要な町ならだいたいどこもホステルがある。両替しなければいけなかったのと、チチェン・イッツァで絵葉書をたくさん買ったので、手紙を書くことに午後を丸々費やした。

ホステルは朝食付きだったので(と言ってもトーストとコーヒーだけだが)、食堂で食べているときにシカゴから来た女性と話をした。彼女はカンクンの近くで3ヵ月間渡り鳥の研究をした後、1ヵ月ほどユカタン半島を旅行している、とのこと。

渡り鳥の多くは冬は中南米で過ごし、夏はシカゴを始めとするアメリカ北部やカナダで過ごすらしい。それだけでもすごいのに、中には南アメリカ南部から北極まで旅する種もいる、とのことだった。

バヤドリドからは国道180号線を進めば最終的にはリゾートシティーであるカンクンに出る。しかしリゾートにそれほど興味がある訳でもないし、カンクンまで行くとだいぶ遠回りになる。そこで途中から地方道に入り、トゥルムを目指すことにした。

途中のコバという村にもマヤ文明の遺跡があったので行ってみる。入場料38ペソ。遺跡は4つのグループに分かれていて、1つ1つがかなり離れているが、ジャングルの木陰の道は気持ちよい。コバの遺跡はそこまで有名でないせいか、完全に復元されているものはないが、逆にそれがジャングルの中の遺跡らしくて良かったりする。

積まれた石の上にかなり立派な木が生えているのを見て、よくまあこんなところに生えたものだ、と思う。この木は大地に根を張るのにきっと大変な思いをしたのだろうな。でも今はちゃんと一人前。

一周して最後にピラミッドに出る。このピラミッドは高さ42mで、ユカタン半島の遺跡の中では一番高い。階段が急すぎて、しかも崩れかかったりしていて非常に怖いが、ちゃんと上まで登ることができる。上からの眺め(スリル満点)を楽しんで、降りるときは補助用にかけてあるロープを掴んで、しゃがみながらでないと降りられなかった。

トゥルムまでの道もこれまで同様ひたすら真っ平ら。途中通り過ぎるマヤ族の集落の家はどれも藁ぶき屋根だった。ヤシの葉を乾燥させた藁を使うらしいが、日本の古い民家に似ていて面白い。

カリブ海沿いの町、トゥルムには4時過ぎに到着。どうも雲行きが怪しいので、ホステルに泊まった。

※※※※※

トゥルムのビーチで1泊野宿しながらのんびり過ごしてもいいな、と思っていたが、朝起きてみるとかなり曇っている。やはりビーチは晴天でしかも暑い日でないと楽しめない。そのどちらでもないので、先を行くことにする。

トゥルムにもマヤ文明の遺跡がある。せめてビーチの代わりにと思い、行ってみた。コバの遺跡同様、入場料38ペソ。

トゥルムの遺跡はこれまでのどのマヤ文明の遺跡とも違っていた。大きなピラミッドはない代わりに、遺跡全体が城壁で覆われている。さらに、遺跡のすぐ向こうは初めて見るカリブ海。一本の線を境に手前はエメラルドグリーンで沖合は黒に近い青。なんでこんなにはっきりと色が分かれるのだろうか。

トゥルムからは途中1泊野宿して250㎞先のチェトゥマルへ。私にとってはチェトゥマルはメキシコ最後の町で、次はいよいよベリーズである。






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