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【丁寧に作られたものが与えてくれるもの】

「このぐらいでいいと妥協でつくられたものは、手にした人の人生をむなしくさせる」という言葉が強く自分の中にある。

今年、西村佳哲さんのワークショップで過ごした時間は2023年の中でもトップに来るような出来事で、私の人生に刻まれた彩り。

遠野のクィーンズメドウと、陸前高田の箱根テラスで過ごした4泊5日の時間は、余韻が心地よく響き渡る。

「インタビューのワークショップ」や「書くワークショップ」は、「きく」ということと「書く」ということに、4泊5日間向き合っていく時間。

ものすごく静かで穏やかで自分の中にある深い泉に気づいていくような時間。

見えないものが見えるようになるのが成長というけど、見てなかったものを目をこらして、高さを変えて見るような感覚。

箱根テラスで過ごした9月の景色

どこを切り取っても、そこに自分がいること、身を置けることが心地いい空間で過ごすことの影響を知る。

ふと目を上げると自然が飛び込んでくる。

クィーンズメドウの大きな窓は、ゆるやかに景色に溶け込む
ふと窓の外に馬がいる、なんでもなくそこにいる
暖炉の前で語る時間
眩しくてやさしいキッチン

自然の中にひとつづきのように暮らしがある景色は、はじめてなのに懐かしくて、本来こういう場所で生きることが「いきもの」らしいのではないかと思う。

自然との調和の中でつくられた場所は、ゆったりと深呼吸が出来て、自分の気配がなくなっていくようだ。

箱根テラスの大きな窓を開け放つと自然と一体化する
大きなテーブルは木のぬくもり
右が学ぶ場 左が宿泊
山の中腹から海が見える 空が広い
対話したり、一人になれる大きなテラス
ゆったり本を読む時間

東北には縁が無かったのだけど、このワークショップで訪れることになった。
なんといっても遠いのがいい。
笑っちゃうぐらい乗り換えて行くのだが、どんどんとローカル線になって、ガタゴト揺れながら移動して行くのが、目の端を流れて行く景色の中で日常から離れていくことを身体が知っていく。
だいたい駅から建物まで交通手段が車だったりタクシーで、どんどんと遠く、はてしなく不便な場所へと誘われる。
それはちょっとした不安と期待とともに。

はじめましての人たちと4泊5日も、ひたすらこもって過ごすのだ。

だから、開放感のある場所が与えてくれる力は大きいのだろう。

そして美味しすぎるご飯たち。
「ワークショップは食事が要」と、私たちだけのために泊まり込みで食事をつくってくださるのが、本当に豊か。

テラスで食べたのもしあわせ時間
シーベジタブルの赤トサカなど海藻もいっぱい
デザートも毎回美味しい
お野菜は地元のものや青森から持参されたそう
初女さんのおむすび
癖になるカレー
食感がたのしい
クッキーの間にココナッツアイス
パンは蒸し器でフワフワ バターとスジのりたっぷり

丁寧に野菜や食材を使われてるのが伝わって、歯触りや食感がうれしくなる。

ひとつひとつ、それぞれがしみじみ美味しいのでみんな黙ってモグモグじっくり食べる。
「すごい技を毎回繰り出されるみたいだ」と言ってた人もいたけど、同じ野菜なのに、こんなふうに毎回違う姿で現れるのはドレスを着替えるみたいで「どう?」と言われてるみたいで興奮する。

丁寧につくられた場所で、
丁寧につくられたものをいただくと、
世界の進み方も変わってくる。

わたし、が、どんどんと溶けていって、
なんでもない存在になっていく
だから、どんどんと言葉がなくなっていく

若い人たちと過ごして、一番自分が子どもっぽくてエモーショナルに生きてることを感じる。
よく笑い、よく泣いて、感情がそのままにそこにある感じ。

思考がなくなり、感覚と感情だけになっていくよう。

わたし、という取り扱い方を忘れて、
ただそこにいるだけを味わう

きっと、もっと、
何もしない、でもいいんだろう

丁寧に包まれるわたしがいるだけで
ゆりかごのようにゆれるだけで
それだけでいいと思う時間

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