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【産学連携】上智大学・森永教授と「やりがいを感じながら働く」をテーマに取り組んだPBL授業で見えてきたこと(Part1)

三井物産人材開発の大川です。今回は、2023年10月から12月の2ヶ月間当社で取り組んだ上智大学・武蔵大学とのPBL(Project-based Learning)授業について紹介いたします。


プロジェクトの全体像

10月から2ヶ月間、上智大学経済学部の森永雄太教授協力のもと、上智大学経済学部と武蔵大学経済学部の2年生合同でPBL授業を実施しました。
今回、私たちは森永先生の研究領域でもある「ウェルビーイング」「エンゲージメント向上」に焦点を当て、「働く上でのやりがいを実現するための研修企画」をPBLテーマに設定しました。

●10月のキックオフは各大学において対面形式で実施しました。少子高齢化もあって労働力不足が加速する中、企業や組織において働き方が変化している現状や、一人ひとりがやりがいをもって働く組織づくりが当社に寄せられる課題であることをお伝えしました。当日はグループ編成を行い、プロジェクトに取り組むにあたっての目標、グランドルールを策定しました。
●PJテーマ
『組織の成長に貢献しながら、1人1人がやりがいを​感じながら働くために大切なことは何か。​また、それを実現するための研修を企画する。』
●10、11月は各グループでまずは現状の把握、課題の特定を行い、その上で研修企画で取り組む課題と目的の整理、企画案を作成しました。
●最終的に、12月16日に当社オフィスに両大学の26名学生が集まり最終発表会を行いました。
 全8グループが考えてきた研修企画案を説明することに加え、実際にその研修の一部を実演し、学生や当社社員が受講者役として参加しました。

テーマに込めた想い

今回私たちはPBL授業で取り組んだことのない「やりがい」にテーマを設定しました。
昨今、ウェルビーイング経営やエンゲージメントサーベイの取り組み等、多くの企業で「1人1人のやりがい向上」に向けた取り組みが行われています。
当社のクライアントでも多種多様な業界・領域で、多様な人材が、多様な働き方の中で一緒に働いています。
当社においても、Afterコロナの状況で組織がより成果を出すために、働きやすい環境づくりや組織づくりを向上するための相談を受けることがとても増えてきています。
今後就職を控えている、いわゆるZ世代の学生の皆さんにとって、やりがいを感じるために何が大切と考え、どのような研修、取り組みが必要と思うのか。普段の授業での学びやアルバイト等の社会との接点を通じて感じている経験を踏まえ発表してもらいたいとの想いからテーマを決めました。

オンデマンドを活用した講義パートの取り組み

今回、プロジェクトテーマに取り組むにあたって、現状の分析、問題から課題を特定し、課題を解決するための企画までをフレームワークを使いながら整理してもらうため、レクチャーを2つ実施しました。
過去、対面形式で実施をしていましたが、一度聞いても忘れてしまう、実際に取り組むときにもう一度確認したいとの声もあり、今回動画で学生に共有し、いつでも、どこでも、何度でも見られるように工夫しました。
またフレームワークシートを用いて整理できるようにし、11月に中間共有会を行い、課題の特定状況、研修企画の方向性を発表し、当社社員からフィードバックを実施しました。

人・組織領域を学ぶ学生ならではの理論の導入

授業で学んだ知識や先行研究の理論を調査し、企画に組み込んでいることが多くみられました。
研修企画テーマ:キャリア焦燥感を防ぎ、理想のキャリアを叶える
このグループでは、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱している成功循環モデルに着目し、組織内での関係性を向上させ、やりがい向上につなげる企画案を作成していました。研修プログラム案では新聞記事を使用したビジネスゲーム、こたつを活用した相互理解ワーク等、とてもユニークな発想で組み立てていました。一部、当日の実演でワークを行ってくれましたが、とても盛り上がりました。

上智大学発表グループ資料より抜粋

●研修企画テーマ:自己評価と他者評価のズレを認識し小さくする
このグループでは、自己評価と他者評価においてGAPがあるという調査データから課題の把握を行い、その要因は理想と現実のズレが生じている背景があることを理論で説明しました。
研修実演の中では既存の360度シートを参考に「シン・360度評価シート」と称して自分たち目線で取り組みやすい評価シートを作成し、全員で取り組みました。
自己評価と他者評価のGAPを確認し、相互フィードバックを行い、自分では認識できていなかった部分を認識できることが分かりました。

武蔵大学発表グループ資料より抜粋

担当者の気づき

本プロジェクトでは学生自身が現状の整理、課題の特定、課題を解決するための研修を企画し、最終発表会で実演するという、企画から実施まで一気通貫での取り組みを行いました。
その中で、3つの特徴があると感じました。
1. 先行研究調査、理論の導入
前段でも記載した通り、学生自身で先行研究や既存で調査データを調べ、現状から課題を特定することを意識していました。そして、すべてのグループが理論を1つ以上加えて研究企画案を作成し、発表していました。
2. 最終発表会での実演を意識した構成、工夫
学生を受講者に見立てて研修実演を行いましたが、すべてのグループの実演において全員が参加し、ワークを通じて気づきがある工夫をされていました。真面目に取り組む一方で、笑い声や楽しい会話が多く上がっており、全員が積極的に取り組める構成を全グループが意識していました。
3. 学生ならではの発想、ツールの活用
Z世代、学生目線で研修に取り組みやすいことを意識して、LINEオープンチャットを活用してのワークや資料をSNSでの写真を活用した自己紹介等、企業で研修を実施している中でも取り組んでいることも学生ならではの一工夫を入れて実施していたことに、普段の業務では得られない気づき、刺激を得ることができました。

学生にとっての気づき

26名の学生にプロジェクト事後アンケートを実施しました。参加した学生にとって、PBLの特徴でもある企業との関わりを活かした学び・気づき多い時間だったことが分かりました。
以下アンケートからの抜粋を記載となります。
●プロジェクトを「やって良かった」と思いますか。
【評価】4.69/5点
【理由】
・大学を超えた人達の各々の発想が聞けた。社会人の方からのフィードバックが聞けた。自分が一つの研修を考えてプレゼンテーションをした。という経験は自信につながると感じた。
・1つの課題に対して自分自身で考えて発表まで持っていくというプロセスを経験すること、特に実際に企業の方の前で行う経験は貴重であり、自分自身の成長に必ず役に立っていると思いました。
・社会で起きている事象について考え、それを実際に企業に提案するという機会は、中々ないため、非常にためになった。

●プロジェクトで「学び」はありましたか。
【評価】4.58/5点
【理由】
・グループで物事を進める難しさや、企画を考える難しさを学んだ。 しかし、プロジェクトが進んでいく中で、少しずつ上手く進められるようになれた。
・どんな些細な意見でもいいから発言すること、発表を聞いている人が楽しく参加できるように工夫することが大切だということを学んだ。
・他大学との交流においてスライド、資料、発表においても参考になるものがたくさんありました。

●授業での学びを活用できましたか。
【評価】4.38/5点
【理由】
・理論を授業内で学ぶ機会はあまり無かったが、シェアドリーダーシップを先生に説明していただいて、その部分は意識しながら活動できた。
・元々私は組織論の授業をあまりとっておらず、事前知識がない中でのスタートでした。調べた理論を実際に運用してみることで、より理解を深められたと思います。
・経営組織論の授業内容での学びを活用できた。

●プロジェクト開始前と終了した今で変わったところは何か。
・やり切った感がすごいです。プレゼンという課題を一緒に乗り越えたことでチームの仲が深まったと感じました。
・今までチームプロジェクトでここまでコミットしてこなかったが、今回コミットする事で自分に足りない点や出来る事がよく分かった。
・将来働くにあたって、研修のアイデアを考えるのが楽しかったので、人材開発に関する業界も視野に入れたいなぁと思うようになった。

最後に

参加してくれた学生のみなさん、森永先生、この2か月間授業の時間に限らず、自分の時間を使ってグループで決めたテーマについて調べたり、考えたりしながら本気で取り組んでくれたことに御礼を申し上げます。
今後の学生生活や社会人生活にこの取り組みでの経験を活かしていただけますと幸いです。

森永教授:全グループ発表後での取り組みへの総括

本プロジェクト取り組み報告のPart2として、森永雄太教授との対談を行いました。
森永先生がなぜウェルビーイング、エンゲージメントに関する研究を始めたのか。今後の森永先生の関心領域は何か。
来週中に投稿予定ですので、併せてお読みいただけますと嬉しいです。

長文にもかかわらずお読みいただきありがとうございました。
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協力:森永 雄太氏(上智大学 経済学部 経営学科 教授)
もりなが・ゆうた/兵庫県宝塚市生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。博士(経営学)。組織学会編集委員会編集委員、日本労働研究雑誌編集委員。
著書は『ジョブ・クラフティングのマネジメント』(千倉書房、2023年)、『ジョブ・クラフティング: 仕事の自律的再創造に向けた理論的・実践的アプローチ』(白桃書房、2023年,共著)など。これまで日本経営学会論文賞、日本労務学会研究奨励賞、経営行動科学学会大会優秀賞など学会での受賞多数。

事務局:三井物産人材開発株式会社 伊藤 有、佐々木 孝仁、中島 涼菜、大川 卓