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早めに教員退職して後悔したこと

 20年以上続けていた教員を、今年の春に、定年より10年くらい早めに辞めてから、約半年。
 「後悔していること」は何か?考えてみた。
 ~結果、ほぼない。

 もともと軽い知り合いには、面倒なので自分の職業を言わないまま付き合う習慣があったからか。学校外の人との付き合いは、変わらない。
 勤め始めた頃には、新しく知り合う人に対して正直に職業を言っていた。けれど、「教員をしている」と言うと…「大変ですね」とか「すごいですね」と持ち上げられたり、「先生だからわかるだろうけど」と妙に挑戦的な態度をされたり、不登校や特別支援に関係する悩みを「それだけでは何とも言えない」というような情報をもとに相談をされたりするのが面倒で…だんだん職業を聞かれても適当にごまかすようになっていた。そのため、教師をしていた時から、学校外で学校関係者以外と学校について話すことはほぼなかった。職場の同僚と休日にも一緒に遊ぶということも、あまりなかった。私の人柄をよく知っている家族や友達は、早めに辞めることを「もったいない」等と言いつつ、二言目には「いつか早めにやめると思っていた」というような反応で、さほど驚かれなかった。ということで、人間関係としては、退職をしてもほぼ変わらない。
 
 「教員を辞めて~」と考えて、すぐに思いつくのは、「健康的に生活することができるようになった」というような、いいことしかない。が…
 でも、ないわけではない。「後悔していること」。
 勤めていた時によかったことを思い出して、今と比べて考えてみると…

 一番に「後悔していること」は…「授業ができないこと」、かな。
 「授業」は通りがかりの人にできるわけではない。職業として教員をしている人のみに許された特権だと思う。授業できる権利は。(例えば…トークショーでも講演会でも路上ライブでも、一時間40人の客を集めて集中させ続けるというのはスゴイ魅力がないと無理だと思う。が、授業では、多いクラスでは40人に対して、ほぼ一時間、座っていることを強制して、なんなら集中していなければ注意して、自分に注目させ続けることが許されている。しかも、それを一年間続けることができる。子ども達の若い貴重な時間を、それだけ強制的に「自分の話を聞け」と言えるのは、すごい権利だと思う。もちろん教科書とか学習指導要領とか、やることがあるのでまるごと自由ではないとはいえ。でも、何を教えるにしてもいくばくかの自由はあるし、そこにその教員らしさは出せる。新人の頃からずっと。他の職業ではありえない、すごい権利だと思う。)
 長年教員をしていると、何かを見た時に「あ、これ教材になる」と思うクセがついてしまっている。が、次の瞬間、「もう授業することはないのだった」と思う悲しさはある。ただ、これは「産みの苦しみ」と表裏一体なので、「もう授業準備に悩まなくてもいい」という解放感にもなっている。悩みと楽しさが一体となっているのだけれど。現役時代は、それが際限なく続いていたので、常に考え続けていて結構疲れた。が、その指導が当たった時はめちゃくちゃグッとくる、他のことでは代わりにならないくらいのいい気分になる。若かりし頃、先輩の先生に「指導でグンと子どもが伸びる楽しさを知ってしまうと、一度大当たりするとパチンコをやめられなくなるみたいに、足を洗えなくなる」と言われた。本当にそう思う。その子ども達にハマる授業ができた時の楽しさは、中毒性があると思う。脳内から何か特別な物質が出る感じがする。と言いつつ辞めてしまったけれど…^^;
 あと、ごく一部にいるやる気がある教員と一緒に色々と考えた指導が当たったり、子ども達の生活にまで学んだことが広がったりした時の喜びが味わえないこと。生活に広がった時に保護者とともに喜ぶようなことも、もうできないこと。ただ、これも、働かない教員や明らかに間違えた道を走っていく教員への対応というマイナス点がなくなったことを考えるとプラマイゼロくらいか。ただ、真剣に教員として子どもに向き合っていくことができる人と働いて、一緒に試行錯誤していって成果を出せた時の喜びは、退職してから自分のペースでのんびり働いていては絶対味わえない深い喜びで、それも他には代えがたいことではある。その真逆のようなやっかいなタイプの人間との付き合いもセットになっているとはいえ。

 そして、今はまだわからないけれど、今後「後悔しそうなこと」としては…「お金について」。
 正直、まだ実感はない。辞める前に何度も色々なシュミレーションをして計算してみて、質素に暮らしていけば大丈夫だとは思っているけれど、計算の額が膨大すぎて合っている自信はない。自分や家族に何があるかわからないし、災害は突然やってくるものだろうし、税金も年金も改悪のリスクはある。
 「いざとなったら何をしてもいいから働こう」という気持ちは常に持ち続けようとは思っている。完全にブレーキをかけてしまわない感じ。今の世の中、教員不足でもあるみたいだし、教員の仕事が嫌で辞めたわけではないので、最終手段として復帰する気持ちもなくさないようにしている。(色々と興味があることを経験したくて辞めたので、今後の人生では、なるべく教員以外の仕事を体験していきたいけれど。)それと合わせて、「倹約できる所は倹約しよう」とも思っている。例えば、歩いて図書館に行って本を借りてくるだけなら0円で楽しめる。お金をかけなくてもできる楽しみを増やしたいと思う。

 まだ、教員を辞めて半年。だから気づかないデメリットが、今後色々と出てくるのかもしれない。でも、今のところ、頭をかきむしるような後悔はせずに穏やかに過ごすことができている。「教員退職してよかったこと」も、そのうちまとめてみようと思う。明らかに、そちらの方が多いような気がするなぁ…。

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