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いただいたお題でnote⑥さくら「さくらちゃん」

今年の桜は格別綺麗に見えた。散歩しながら、もうすっかり花は落ちてしまったけれど今度は健康的な元気いっぱいの緑を生やして、なんて一瞬の出来事なのだろう。私たちの日常より速いスピードで桜は自分を繰り返す。自然は私たちが感じるよりもっと、感じようと手を伸ばした隙に次の答えを用意するから、何年も何年も時間をかけるのだ、あなたたちを知りたいと思うその一心で。

今私はお風呂場でこの文章を書いている。立ったまま、膝くらいまで湯船に足をつかせて、iPadは湯船のふちのさらに上にある出窓みたいなスペースに置いて、汗を掻きながら、立ったまま書いている。良く温まるし、早く書き終わりたいし、けれど書くたびに少しづつ楽しくなってきてしまう。姿勢に疲れ始めてドボン、とつかりたくなるのだけれど指先が濡れるとやっかいなのでやはり一度も湯船のお世話にならずに已然として立ち続けたままだ。ただ立っているのはいいのだけれど中途半端な中腰だから肩甲骨のあたりが丸まって体に負荷がかかる。けれど一度始めてしまったのでどうもやめる気にならない。

このお風呂場で、立ったまま桜について思いを馳せてみる。ああこの小窓から、桜が見えたらなあ。お風呂場の小窓からは何も見えないんだ。まあこちらから見えたらあちらからも見えているということだから少しまずいんじゃないか。こちらから桜が見えたら、ここにつめたい冷酒を一杯置いて、飲みたいけれど、そんなことができたら次には何がしたいだろう。可愛い鳥や、動物が遊びに来たらいいなあ。そしたら小窓からちょっとだけ手を伸ばして、餌をあげちゃおうかな。

そこまでやったら誰かに自慢したくなるだろうな。それで会いたくなっちゃうんだよな、人に。このね、小窓から見える私の芳しいさくらちゃんを見ながら、きっと人に会いたくなっちゃうんだ。悲しいね、嬉しいけれどね。


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