いただいたお題でnote⑨南千住「gekidanU」

 南千住駅で降りる。バーガーキングを横目に横断歩道を渡って、10分もしないうちに遊さんの家に着く。そこは稽古場でもあって劇場でもある。去年の私の、4月の私の憩いの場だ。

gekidanUはなんていうんだろう、劇団員全員社会人だから社会人劇団と呼んでいいのかな?でも公演数は多くて社会人劇団という響きから伝わってくる趣味のニュアンスよりは志のある、何かを目指してる感じのある独特の場所でUがUであろうとするその感じがとても居心地が良いのであった。

私の演技が変わったのは、たぶんこの場所だと、私は思っている。なんていうか、正直、勝手にやったのだった。それも、やりたい放題とかやれること全部やり切るとかそういう方向性ではなくて、ちょっと弱目にそこでは生きられたんだった。良い人でも努力家でも変わった人でもいつも必死な若手でもなくて、ふわあっと全く責任を持たずにただ毎回稽古に参加して本番までにセリフを覚えて演出と少しすり合わせて話をして、という、普通のことを、自分の癖や悪い部分を正すこともなく、ただやった。出演者も全員が役者ではなくて、いつもは制作をやっている方とか初演技のプリティ中学生ちゃんとか大人になってからお芝居を始めた方とかがごちゃっと参加していたから、不器用ゆえに怒られるということも少なく、みんなが少しづつ不慣れな演技を自分のものにしていって、失敗しながら、自分のペースで続けた。

楽しかった。初心にかえったわけじゃなくて、もう一つの初心がここにあったのだった。それは、「勝ち負け」しないってことであった。目立とうとも足を引っ張らないように頑張ろうとも思わなかった。昔はたいてい、足を引っ張らないように頑張ろうと思っていたものだから大変だったし、選ばれなきゃ生き残れない、みたいな感覚もあって心の中ではどうにか勝とうとしていた、そんな自分もあったかもしれない。南千住で勝ち負けしなくなってから、自分の作・演で自腹で公演を打つやる気とコツを手に入れて、そこからは演技で勝とうと思ったことは一回もない。負けたと思ったこともない。その台本における自分の演技を手に入れられればそれで十分で、自分の体からうまく味が出ればそれで良くて、だって数億かかった舞台も1万円しかかかってない舞台も1秒は同じ1秒なのだから、その1秒を共有するのはやっぱり私とお客さんの心と体で、それを骨の髄まで分かっておきたいなって思う。

GekidanUの私がいっぱい喋っている③のURLを貼ります笑

https://m.youtube.com/watch?v=A4IPX2pi7KQ

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