TOP Bakery No.10 ~遠隔運営・出稼ぎ~

ガーナのパン屋の石本です。
前回はスタッフの退職について書かせて頂きました。
今回は2016年1月以降のTOP Bakeryの状況について書かせて頂きます。


クリスマス需要の反動


1日に3000個を販売したクリスマスとは打って変わり、1月は売上ががくんと下がり、パンが売れない日々が待っていました。
日本にいるとそこまでクリスマス需要について強く意識することはなかったのですが、キリスト教徒が6-7割と言われるガーナでは、クリスマスは家族で美味しいものを食べる、プレゼント交換をする、などかなり盛大にお祝いする為、クリスマス・セール中は市場がとても活発になります。パンですら通常の倍以上売れるわけですから、ジュースやアルコール、米や油や鶏などは飛ぶ様に売れて行きます。


そして、2016年1月、経済は見事なまでに停滞していました。
ベンダー達もパンを購入するお金がない、お客さん達も地方へのお土産にパンを買っていくお金がない、TOP Bakeryもお客さんからの代金回収が進まずお金がない。まるでバブルが崩壊したかの様でした。

画像1


パンにも季節的な需要の波があるとそこまで考えていなかったのですが、後に以下の様な季節性がある事がわかりました。


1~3月:クリスマスの反動で家計にお金がなく、財布の紐がきつく、パンが売れない。
4月:イースター需要によりパンが沢山売れる。
5~9月:雨は、ダイレクトにストリート・ベンダーの売上にマイナスに影響する為、天気を読み間違えるとパンが全く売れない。(天気がよければ安定的に売れる)
10~12月:クリスマスに向けて需要がじわじわと上がってくる。


事業の遠隔運営と出稼ぎ


原料を買って、パンを作って、売る。そして、データを記録し、会計は帳簿に記帳する。
日本だったら当たり前の様にやっている事が、ガーナのローカルレベルのパン屋では中々出来ておらず、TOP Bakeryも石本不在時には記録・記帳が出来ていないという状況がありました。


常々、「石本はいつかいなくなるだろう。TOP Bakeryは自分たちの会社として一人一人が責任を持って運営していってほしい」と話し、問題があった時も全体会議を行い、個々人が意見を言い、スタッフ達が自分たちで方針を決める様な体制をとっていました。勿論、完璧な事などなく、会議にならない事もあったし、何も結論を出せない事もあったし、石本の忍耐力がなく方針を押し付ける事も多々あったので、あくまで出来る限りスタッフに自主性を持ってほしい、自分たちのパン屋なんだ、という認識を持ってほしい、という意図を持って出来る限りで取り組んでいました。


2015年10月頃から、わざと1週間工場を離れてみて自分たちで運営させてみたりと、少しずつスタッフだけで事業運営ができるようにトレーニングを積んで行きました。
たった一週間なのに、販売数量も現金も在庫もめちゃくちゃになる事もありましたが、諦めずに少しずつスタッフたちに仕事を任せる様にして行きました。


「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」


連合艦隊司令長官、山本五十六の言葉を胸に、自分でやってしまいたい時も怒りたい時も我慢し、スタッフ達の成長を信じて見守る事にしました。
凡ミスの連続、不要な損失、反省しない態度、、、人に任せるのはこんなに大変なのかと何度も泣きたくなる様な、胃が痛くなる様な日々でした。


そして、クリスマスから3ヶ月後、石本の遠隔管理があれば一通り事業としてパン屋が回り、かつ、自転車操業ながら黒字・キャッシュフローもプラスに転じ、少しずつ事業を安定化させて行く事が出来ました。


一方で、引き続き運転資金は枯渇し自転車操業だった為、パン屋を継続・再生・拡大する為には、石本が再び資金調達するしかない状況でした。
運転資金を確保しなければならない、という思いと共に、パン屋を会社・事業と言える様なレベルで運営が出来ていなかった事を反省し、「働きながら会社経営について学べる様な仕事はないか」と考える様になりました。


そんな時、友人を介してDMM.comがアフリカ事業をやるという話を聞き、結果的に2016年4月からDMM.Africaに参画させてもらう事になりました。
DMM.Africaでは、亀山会長から直に事業についての考え方などを学ばせて頂く機会を得ると共に、投資や新規事業開発に関わる仕事をさせて頂き、本当に多くの事を学ばせて頂く2年間となりました。


一方で、遠隔管理でのパン屋運営は非常にストレスフルで、何度ももう止めてしまいたいと思い悩む局面ばかりが続いていました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?