ミスター・フーの事件簿 10
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Tverか!
10
フー刑事と張本刑事は競馬場に来ていた。
「ヤオチョウマ?」
とフー刑事が競馬場のスタッフに声をかけた。
八百長か?
どうしてこの状況で八百長を疑うのか?
スタッフは戸惑っていた。
そもそもそのスタッフからは麻薬取引の情報を引き出すはずだったのだ。この競馬場を使って麻薬取引が行われているという疑惑があったからだ。
それがいきなり八百長の話なのか?
フー刑事はスタッフの回答を待った。
スタッフは観念したかのように答えた。
「見逃してくださいよ。八百長なんてみんなやっていることなんですよ。そうでもしなきゃあこちとらやっていられやせんぜ。有力な情報を提供しますので何卒穏便に願いますよ」
「要求は?」
「そんなもう滅相もありませんよ。八百長を見逃してくれればもうそれだけで結構ですから」
競馬場のスタッフの情報によって、無事に麻薬取引の犯人たちを逮捕することができた。
しかしまあ、恐るべしフー刑事。
一瞬にして競馬場の八百長を見抜くとは。
「どうして八百長をしているってわかったんだ?」
張本刑事はフー刑事に訊ねた。
「何か要求があるのかって聞いただけです」
フー刑事は答えた。
後でわかったことだが、中国語で要求という言葉をヤオチョウと発音するというのだ。マは疑問形のときに使う言葉。
つまり「要求吗」とは「要求は?」という意味だった。
つづく。
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