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夏の部活と211系

別にいじめられていたわけでもない。嫌われていたわけでもない。誰かと大喧嘩したようなこともない。

それでも、人付き合いは嫌いだ。
極力、人と関わらずに生活をしたい。コミュニケーションを取りたくない。一日中部屋から出ず、一言も話さずに終わる一日を過ごすことに憧れを感じる。

何が私をそうさせたのか。

それは、きっと小・中・高でやっていた野球部での部活動あろう。

野球部といえば、良くも悪くも体育会系。

集団行動が原則なので、アルバイトとか就職の面接で部活の経験を話すと、印象が良い。

きっと「集団行動が取れる=組織に入っても和を乱さない」みたいな評価なんじゃないかな?俺、人事じゃないから知らんけど。

その集団行動が、私は嫌いだった。
それでは、嫌だった出来事をここで紹介していく。

・先輩は神
→1・2年早く生まれて来たからって偉そうにしやがって。死ね

・レギュラーは神
→上手いやつは仕方ないけど、対して上手くないのに監督とかコーチにゴマすってレギュラーになったやつが、何で偉そうにしてんねん。死ね。

・オフ日や朝に自主練しようと言い出すやつ
→断ると後で村八分にするやんか。自主練なんだから、一人で黙々と自主的にやれや。周りを巻き込むな。ボケ。

・気持ちを1つにするために、頭を丸めようと言い出すやつ
→せっかく髪型坊主指定じゃない学校に入学したのにバカか?これも断ると村八分にするやん。見た目でわかるから、周りも「あいつ、省かれてる」ってわかっちゃうじゃん。髪型一つで心がまとまるなら、チームスポーツの日本代表とか、プロスポーツ選手とかは全員坊主にすりゃいいじゃんな。

・連帯責任
→意味わからん。やらかした奴だけ責任取れや。

たぶん、こういうことがあったから、人と関わりたくないんだと思う。「部活動を通じて、人として成長できた」とか言うやついるけど、俺は失われた時間だと思ってる。

プロになるわけでも、甲子園行くわけでも無いのだから、強豪校の真似事なんてしないで、楽しくワイワイやればいいのよ。

そんな感じで、日々の部活動を、自我を捨てたロボットのように過ごしていた私だが、一つだけ意見した。

それは、遠征の移動の時だ。

その時だけは、監督、キャプテンに意見した。

「電車乗る時だけは、周りの乗客に迷惑かけちゃうといけないんで、集団にならず、分散して乗ったほうが良いと思います。」

うちの学校はバスを借りる財力もないので、遠征はもっぱら電車移動+タクシー相乗りであった。

監督は周りの迷惑を考え、すんなり受け入れてくれた。

それでも、大勢の部員は2~3両に散らばる程度。

完全なる個人行動を取ったのは、鉄オタの先輩と、私の2人だけであった。

ちょうどその時が2004年。高崎線や宇都宮線の211系にグリーン車が導入され始めたタイミングであった。

導入され始めの時は、グリーン車の利用定着を図るためか、グリーン券不要で乗車ができた。

その年は遠征先が本庄、熊谷、桐生と、高崎線沿線が多く、先輩と私だけグリーン車に乗り、快適な遠征だった(周りは別料金だと思っていたか、そもそもグリーン車が連結されているのを知らなかったようだ)。

211系は、夏の遠征の思い出だった。

いつの間にか211系は置き換えられ、地方に転属した。

就職をしてからは、車通勤ということもあり、電車に乗る機会が減った。

その間に、学生時代に乗ってた電車は地方へ転属したり、廃車となっていた。




その日は伊勢崎への出張だった。

暑さで話題の伊勢崎。帰りはビールが美味いに違いない。

駅ではグリーン車が無くなり短くなった211系が待っていた。

夏の遠征を思い出した。

「んー、しょうがない。自腹切ってグリーン車乗るか」

車両は違えど、ビールを飲みながら見る2階からの景色は、当時の景色そのものだった。


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