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コーポレート実務家になるための高負荷トレーニング術

中小企業やスタートアップでコーポレート関係の仕事をしていると、

生き残るためには、強くなるしか無かったんだ

という歴戦のコーポレート実務家に出会うことがあるだろう。そういった人は、どこかの会社で管理部長(CAO)を転々とやっていたり、経理財務責任者(CFO)を複数社でやっていたり、管理部構築・IPO支援コンサルをやっていたりしてて、転職市場には99%出てこないのだけれど、現実にはそれなりに存在している。

歴戦のコーポレート実務家になりたい!と目をキラキラ輝かせる人が果たしているのか分からないけれど、今この瞬間において、"生き残るためには、自分がもっと勉強して管理部を回せるようになるしかない・・・!"と思っている人は沢山いると思う。そういったひとりコーポレート向けに、管理部人材の育成をライフワークにしている人間として、トレーニングメソッドを2つ紹介しようと思う。

まず1つ目。ギリギリまでタスクを詰め込み、自分のリソースで処理できるタスク量を超えた業務を請け負うこと。分かりやすく言うならウエイトトレーニングだ。自分のキャパシティではやり切れないと分かっている状態で、やり切れない量の仕事を引き受ける。どう頑張っても3人月かかる月次決算を一人で請け負う、なんて分かりやすい。チームメンバーが休んだ時や、新規プロジェクトがスタートしてリソース枯渇が見えたときが挑戦のチャンスだ。

作業に使える直接的な空きリソースが8時間x20日=160時間/月だとして、200時間~240時間/月ないと絶対に終わらないような業務量を請け負うと、否が応でも死ぬ気で効率化・高速化に頭が走る。必要な仕事と不要な仕事の判断、作業品質を少し下げるだけで速度が著しく上がる仕事と、速度を上げれば手戻りが増えて逆効果になる仕事の見極め、作業開始前の準備の方が作業開始後の技術よりはるかに影響が大きい上流工程と下流工程の重要性への気付き。そういった感覚を研ぎ澄ましていくには、自分の能力を"強制的に"上げる環境を作ってチャレンジを重ねるしか無い。

こういったトレーニングをやっていくと分かるけれど、トレーニングを継続して半年や1年以上積んだ場合、作業速度はトレーニングを積んでいない人のアウトプットの3倍や5倍をはるかに超えるようになる。そして、この仕事はAさんなら50時間でもギリギリだけど、あの人なら10時間でも余裕があるんだよなな、といった現象がごく普通に発生するようになる。

ただし、高負荷トレーニングには当然リスクもある。アスリートがオーバートレーニングをして肉離れなどの怪我を起こすように、タスクを長期間で詰め込みすぎれば心身にガタが出る。タイピング量の倍増による腱鞘炎、睡眠不足とストレス増によるメンタル不調、運動量の低下による体力と柔軟性の低下、そして思っていたほど自分の限界を押し上げられなかった場合に起きる関与プロジェクトの失敗や納期遅延(油断していると全て現実のものとなる)。

高負荷トレーニングをする場合は、"ガタが来たらトレーニングを中止する"という強い意思を持っておかないと、取り返しの付かない事故につながる。実践には注意が必要だけれども、短期的に高負荷トレーニングを仕事に取り入れることは著しい効果があるので、"歴戦のコーポレート実務家"を目指すなら定期的にやってみよう。

続いて2つ目。実務書を数冊買い揃えて、納期を決めて、実際にやる機会がなくても担当可能と言える業務を強制的に広げること。できれば短期的にでも担当させてもらう方が望ましい。例えば経理財務領域に強みがあるけれど、労務法務領域は弱いという人や、逆に労務総務領域に関してはプロだが経理財務はてんで分からないという管理部長は多い。社内異動で管理部長になったので経理財務も労務も法務も分からないが、ビジネスとプロジェクトマネジメントには精通している、という人もいるだろう。

採用予算や組織設計の関係上、こういった特定領域に強みがある人が管理部長を担うことは珍しくないけれど、管理部機能をゴリゴリマネジメントする立場である以上、せめて各業務を最低限担当できるだけの知識は欲しいところだ。例えば以下あたりの業務は、一通りできるだけで十分担当クラスとして戦力になるし、少人数企業ではたったこれだけで管理部長として即戦力になる。

経理財務領域:日常仕訳(請求書、口座振替、クレカ、経費精算)、振込業務における総振データ作成と実行、総振仕訳、売掛金の消込と滞留債権管理、請求書・領収書の整理保管

労務領域:給与計算(社会保険・住民税・所得税控除)、勤怠管理(ロジック理解、リマインド)、社保手続(入退社&定時決定&随時改定)

経験ナシ、上司ナシで勉強できるのか?と思うかもしれないけれど、本屋には行けば「中小企業の経理・労務を一人でやる本」は沢山売っているし、実際に独学で身につけている人はごまんといる。適時開示や連結決算、監査折衝、取締役会向けマネジメントレポート、予実管理といったごく一部の会社にしか存在しない業務を独学で身につけるのはチャレンジングだけれど、全国100万以上の事業者で行われている日常経理や労務といった業務は、ある程度のレベルまでは十分独学でカバーできる。

というわけで、コーポレート実務家になるための比較的チャレンジしやすいトレーニングメソッドを2つ紹介した。コーポレート業務は日々法律もアップデートされていく世界であり、死ぬまで勉強といっても過言ではない。"歴戦のコーポレート実務家"は非常に重宝される存在でもあるので、是非チャレンジを続けてほしい。

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