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コーポレート領域でスキルアップするための習慣

経理、財務、法務、労務、総務、人事、採用、経営管理、経営企画。コーポレートと呼ばれる領域には、多くの細分化された専門領域が存在しており、各専門領域の中に、様々な難易度の業務が存在する。例えば経理であれば、経理事務と呼ばれる証憑整理やデータ入力のように、短時間のレクチャーを受けたメンバーで回せるように設計される業務もあれば、開示書類の作成や監査折衝、連結パッケージといった、1年以上かけてマネージャークラスを採用しても中々うまくいかないという水準の業務もある。どの業務が偉いという話ではないけれど、法務も、労務も、経営管理も、その他あらゆるコーポレート業務も、同様だ。1時間で身につく業務から、1年以上修行・勉強を続けていかないとモノにならない業務まで幅広く存在する。

そんなコーポレートの世界で生きていると痛感するのが、修行メソッドの少なさだろう。コーポレート人材としてスキルアップ、レベルアップしきたいと思う人はいるけれど、具体的にどうすればレベルアップできるかを知り、その上で継続的に実践できる人は中々多くない(それを知っている人は、すぐにどこかの管理部長になっている)。

そこで本記事では、顧問の先生に相談したり、本屋で参考書を少し手にとって見たり、ネットで調べてみたり、そういったスキルアップを毎週、毎月、毎年続けている中小企業のコーポレート職の方々に向けて、今日から誰でも習慣にできるコーポレートのスキルアップ習慣を3つ紹介する。

ちなみに、Excelやスプレッドシートを使いこなそう!とか、タイピングを早くしよう!といったデジタルツールに関する言及は本記事では省略する(そういったものは、当たり前に認識されているはずなので)。


習慣①メディアやブログの記事だけでなく、行政機関・官公庁のサイトや法律原文をチェックする

不慣れで作業手順を覚えていない業務をやるときに、Googleでとりあえず検索する人は多いだろう。「オフィス移転 手続き」とか、「給与変更 やること」とか「入社手続き タスクリスト」とか、そういったキーワードを検索したことが無いコーポレート職は、中々いないと思う。

現代は随分と便利な世の中で、日本中で高頻度で発生するであろう主要なコーポレートのトピックについては、会計ソフトの会社や労務管理ツールの会社などのオウンドメディアで解説がされていたり、士業の先生方によるブログ解説があったりして、ざっくり何をやればいいのかはサクッと把握できる。

でも、メディアやブログの記事だけを読んでいても、本当の自分の知識にはならない。コーポレート領域で知識を増やしていくなら、第三者による解説だけでなく、オフィシャルな情報を参照する癖をつける必要がある。

例えば協会けんぽ加入の会社なら、労務手続き時には、年金機構の社会保険事務担当向けページも読むこと。法人登記の際は、法務局の商業・法人登記申請手続のページも見ること。中小企業の会計処理に悩んだら、「中小企業の会計に関する基本要領」を読んでみること。株主総会や取締役会の法律上の要件について悩んだら、e-Gov法令検索で会社法の該当箇所も読んでみること。

こういったオフィシャルなページを見に行くと、想像以上にやるべきことが解説されており、多くのメディア解説記事のコンテンツが、特定のケースを省略した限定的なものだと気付くようになる。ものによっては、実はルール自体曖昧で、この解説は慣習でしかないのでは・・・?というパターンにもそのうち気付くようになる。

当然、コーポレート担当は士業のような専門家ではないので、その業務をする上で知るべきことや法改正、業界情報全てを把握するのは中々難しい。けれども1つ1つの業務の背景を理解していると、各業務に求められる要件が分かるし、何より士業の先生方とのコミュニケーションや、資料準備といった実務が格段に進めやすくなる。


習慣②コーポレート支援系SaaSの裏側のロジックを理解する

ラッキーなことに、昨今はあらゆる手続きをラクに終わらせてくれるコーポレート支援SaaSが増えているので、登記も、社会保険の手続きも、決算書の作成から申告も、やろうと思えばSaaS上でできてしまう。

コーポーレート職の新人であれば、こうったSaaSの裏側を意識せずに"無自覚"に操作し、"なぜそれが正しいのか"を考えずに作業するところから初めても良い。けれど、ずっとそのままの状態でいる限りは、"できているつもりの人"から"理解した上で、できている人"にはなれない。理解するには、もう一歩踏み込んで勉強をする必要がある。

例えば、給与計算。給与計算ソフトが算出してくる給与計算ロジックを、手元のスプレッドシートで再現してみる。年金事務所のウェブサイトから社会保険料のExcelをダウンロードし、国税庁のサイトから所得税の源泉徴収のExcelをダウンロードし、全従業員の特別徴収住民税一覧表を作成し、毎月の給与支給額をもとに給与計算を行うシートを作ってみよう。SaaSがはじき出した計算結果と、手元のシートは同じ金額になるだろうか。控除額が一致しないのはなぜか。保険料の料率が最近変わった?所得税率が乙欄になっている?二以上事業所勤務の保険料は按分される?今まで見えていなかった景色が見えるようになる。(そして、給与計算がずっと間違っていたことに気付くようになる)

例えば、試算表。会計ソフト上で自動生成される試算表は、どうやったら仕訳帳から生成できるのか。仕訳帳をエクスポートして、ピボットテーブルでゴリゴリ回したり、sumifs関数をいくつも作ったら、本当に試算表の数字と合致するのか。ほんの1月分を作ってみるだけでいい。数字が合わないのはなぜか。会計ソフトの裏側の消費税処理はどうなっているのか。借方貸方はどう試算表に作用するのか。驚くほど解像度が上がるようになる。(そして、計上漏れや二重計上が発生していることに気付けるようになる)

習慣③広く浅く知らないコーポレート情報に日常的に触れる

毎日コーポレート業務をやっていると、どうしてもルーチン作業が多く、新しく勉強するトピックが見つかりにくくなったりする。資格試験はあるけれど、100時間も200時間もガッツリ勉強したいというわけじゃないんだよな・・・という人も多いだろう。

そういった場合には、サクっと読めるコーポレート系のメディアや専門誌を定期的に流し読みし、知らない用語や知識があったらガッツリ調べる習慣をオススメする。

例えば、弁護士ドットコムニュース。話題のニュースを法律観点で各領域の弁護士が解説しており、非法律家としての法律関連の知識のインプットや、論点整理の参考資料として非常に勉強になる。

他にも、業界専門誌を定期購読するのも良いインプットになる。自分の深めたい領域が分かっている場合は税務広報のような業界特化の専門誌を、コーポレート全般を広く深めていきたいという人は、企業実務や月刊総務といったバックオフィス全般の専門誌を読むと知らない知識に出会いやすい。



というわけで、今日から誰でも習慣にできるコーポレートのスキルアップ術を3つ紹介した。肩の力を抜いて、Netflixでドラマを見るかのようにスキルアップの習慣をつけると、ほんの半年や1年でも驚くべきほど世界が広がるので、是非試してみてほしい。


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