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鈴芽が賢かったら10分で終わってた物語【すずめの戸締まり】

金曜ロードショーが初見だった。かなり早い段階で権利買ってたのか、ネット配信も昨夜ネトフリが取ったくらい。

感想としては、普通に観てても楽しめるし感動するけど神道や神話、エネルギーの視点で見るともっと面白いと思う。

一回見れば十分だけど。

今回はあんまり言われてないところが気になったので、触れていきたい。


あらすじ

1人の少女が、ある時山の中で不思議な扉に遭遇する。その矢先、日本中で扉が出現し始め、その扉が開くことでさまざまな災いが次々と起こっていく。そこで、少女は各地の扉を閉める旅へ出発する。

不思議な扉を閉める閉じ師の青年と出会ったことから、全国を回るたびに出る話。

新海誠の完成されたパターン

君の名は以降の新海誠作品は完全にパターンが決まっている。

何かの神様や神社が出てきて、不思議なことが起こる。主人公と異性の誰かが出会う。大きな使命が与えられて、2人で協力することが災いを避ける。

完全にこれだ。天気の子は、好きな子を救うために東京を水没させたが一応ハッピーエンドらしい。

この完成されたパターンに、RADWIMPSの曲が加わればいくつでも作品が生まれる。

当然作品ごとにテーマは違うけど、パズルの入れ替えみたいなもの。

新海誠作品は全部見たけど、すずめの戸締まりが恋愛要素も薄くて1番マシだったかな。

開始10分で終われた物語

冒頭において、山中の廃墟で廃墟にぽつんと佇む古ぼけた扉を発見する主人公。

この扉を開けて異界を覗いたあげく、封印の要石を抜いてしまった。

どの段階において、扉が開いてたかは分からないがもし主人公のせいなら彼女の振る舞い次第では、その後の騒ぎはなかった。

あなたは廃墟に扉だけが残されていたら、触りますか?

色々と文字の書いてある石を触りますか?

これを触ってしまう人が災いを生む側だと思う。

ここは何かおかしいとか、人が入っていい場所ではないとかそういう感覚が欠けている。

入っちゃいけない場所にはいる。

曲がってはいけない道で曲がる。

居てはいけない時間にそこにいる。

それらは見えないものを感じる力が足りてない証拠である。この主人公はヒーローのように描かれたが、不本意に封印を壊した破壊者のように見えた。

結果、彼女は長く封印していた自分の過去に立ち向かうがそれは結果だ。

扉とは、あちらとこちらを隔つものだ。

また境目にはよくない力がある。

畳の縁を踏んではいけないとか、神社の鳥居で跨がなくていけないなど境目には注意を払うのが常識である。

また、知識がなくても何故か踏んではいけない気がする。その感覚を失っている。そこが強く描かれていた。

鍵閉めの祝詞の意味

草太は鍵を閉める際に、祝詞を唱える。

それは、

かけまくしもかしこき日不見(ひみず)の神よ。
遠つ(とおつ)御祖(みおや)の産土(うぶすな)よ。
久しく拝領つかまつったこの山河(やまかわ)、
かしこみかしこみ、謹んでお返し申す。

であり、訳すると口に出すのも烏滸がましいミミズの神よ。先祖代々の土地神よ。

長い間お借りしていた土地を、恐れ多くもお返します。となる。

鍵閉めにしては妙な祝詞に感じる。

あれは地鎮祭だと思う。

地鎮祭とは、建物を建てる前に、その土地を守っている氏神様から土地を利用する許可を得ることであり、人は神様から土地をお借りしてるという考え方。

廃墟になったり、災害で使わなくなった土地を神様にお返ししていくのが閉じ師なのだ。

閉じ師の仕事は大切が故に見えない方がいいという話が響いた。

地震とは、その土地の神様の怒りという視点なのかも。

東京のミミズは路線図

次は短い話だが、東京のミミズが地下鉄の路線や龍に見えたことだ。

東京の要石はおそらく皇居の地下に刺さっていて、今では地下鉄の横にある空間だったと思う。

ミミズは地下鉄と一緒に飛び出してきて、空に上がった姿は路線に沿った姿に見えた。

東京は地下鉄が血管のように張り巡らされており、それだけの土地を神様からお借りしてる。

従って怒りも大きいということか。

また、龍脈にも見えた。

龍穴とは、陰陽道や古代道教、風水術における繁栄するとされている土地のことである。また、龍穴へ向かう流れを龍脈という。

地のパワーが龍のようにウネウネしてるから、龍脈と呼ばれてる。

既に完了してる未来の自分からのメッセージ

主人公が幼い頃に被災して、迷い込んだ常世。そこで母のような女性と髪の長い男性を見ている。

彼らは未来の自分と草太であったことが最後に判明する。

母を探して彷徨っている中で、なぜか椅子だけを見つけたのは未来の自分が椅子を渡したから。

過去の自分に対して未来から椅子を渡すわけで、あの椅子だけ4次元の世界を回っている。

彼女は既に母の死を乗り越えて大人になろうとしてる自分から、励まされることで前を向けたのだ。

こういう話は最近よく使われる。

東京リベンジャーズやテネットもこの類だ。

既に良くなると分かってる未来の自分が過去の自分にメッセージを送る。しかし、そのメッセージも既に自分がもらったものなのだ。

自分を導くのは、過去と現在そして未来の自分がつながっていると信じることだった。

すずめの戸締まりでは、土地の邪なものが暴れないように戸締まりしていく。途中では人にも乗り移り、自分の中の悪が他人を攻撃する。

人にぶつけるのは簡単なことだが、それは争いを生むので自分の中にも戸締まりをしてあげる。

それが大人だというメッセージをそこかしこで感じた。

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