Stones alive complex (Larimar)
運命の分かれ道を直進していたら、なんだか神々しい存在が立ちはだかった。
なんだか神々しい響きの声を出す。
(これこれ、そこなそこつ者よ!)
まわりをキョロキョロしてみたが、誰もいない。
てことは・・・?
(お前だよ!お前!
ベタなひとボケをかましてるお前だよ!)
先端にスカラベの飾りがついてるなんだか神々しい杖を振り回し、なんだか神々しい存在(以降略して、なん神存)はひどく激高している。
(運命の分かれ道をしれっと直進するとは、何事ぞ!
なにゆえ右か左かを選ばん!)
てへへ顔をして答える。
「特にこれといった理由は無いんですけど・・・
強いて根本的な原因で言うならば、
スティーブ・ジョブズのせいかな。
歩きスマホをしてて、見過ごしてしまいました」
(選ぼうともしてなかった、だと?)
「つい、うっかり・・・」
(ジョブズめっ!)
その返事は、なん神存のプライドで起爆する地雷をまた踏み抜いたようだ。
(せっかく作ったんだぞ、分かれ道を!)
「話の流れから察すると。
そういう分岐点を設置する担当の方らしいので、質問したいんですが。
どうして作るんですか、様々な分岐点を?」
(スタイリッシュなファンタジーをたくさん観たいんだよ!)
「その動機のせいで、世間の民はいつも動悸息切れ目眩がしてますよ。
シナリオ分岐の設計が雑すぎて、クリア条件に問題点が多すぎるというレビューばかりになってますが。
ところでここは、どこですか?」
(そのスマホは防水仕様かね?)
「生活防水仕様です」
(ここは、ナイル川の底だ)
「なんですって?
思いがけず太宰治的な展開になってると?!」
(運命は川の流れのようにだよ。
あらゆるさだめは、ナイルへと還る)
「そういうシステムなんですか?」
(スタイリッシュでファンタジーだろ?)
「すぐ戻らなきゃ!
スマホが壊れてしまう!」
(ノースマホ、
ノーライフ。
が、生き様なのかね君は?
呼吸はできているのか?
今は。
ノー呼吸、
ノーライフ。
へと、生き様を変えるべき緊急事態なのでは?)
「確かに。
スマホに夢中で、うっかり呼吸も忘れてました。
ゴボゴボ・・・
ところで、
帰り道はどっち方向なんですか?」
(ナイル川のナイルとは、『川」という意味なんだよ。
だからここは、『川川』という名の場所なのだ。
運命の源流である川しか存在してないのだよ」
なん神存は、ふんぞり返った。
「そのウンチクがなにか?
ゴボゴボ・・・」
(重要な分岐点を分岐すらしなかった者が、
帰り道という選択はできない。
そう、暗にほのめかしたかったのだ・・・」
「哲学的でスタイリッシュな教訓ですね。
カッコいい・・・
ゴボゴボ・・・」
目のまわりの黒いクマドリにカッコつけた目が沈むなん神存へ、視線を送ってると呼吸が苦しくなってきた。
(感心しとる場合かね?
運命の分かれ道は直進もできるという悪しき前例を、世に広めて欲しくないこっちサイドの事情もあってな。
お前をあっち側へ帰すわけにはいかんのだ。
ほらほら余裕ぶっこいてると、呼吸がもたんぞ!
ふはははは)
スマホへ視線を戻す。
「おお!
スマホ見てる間は呼吸を忘れるので、
割と大丈夫そうですよ!」
(ちっ。ジョブズめ!)
「それにここって、
WIFI飛んでますよね?」
(えっ?
そうなの?)
「知らなかったんですか?」
(デジタルには、ややうといのでな。
ぶっちゃけ自宅のピラミッドの固定電話しか、持ってない。
誰がいつのまに、こんな次元の狭間まで電波塔建てやがったんだ!)
「ふむふむ。
まさかと思って確かめてみたら、
GPSも届いてますねぇ・・・」
(それが何か?)
「グーグルマップで、
帰り道が検索できました」
(ジョブズめーっ!)
(おわり)
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