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Stones alive complex (Hematite in quartz)


ダークマターの空域を飛ぶ、レイブンたち。

ダークマターと聞いたら遠い宇宙の果てにある謎物資みたいなイメージがあるけれども、我らが地球もずっぽしその濃厚な味わいの暗黒物質空間をGOTOええ感じに飛行中なのであって、断じてご近所様のうわさ話なレベルとして扱ってはならない。
今この瞬間にも、皆様方の身体を数百万個の暗黒物質が通り抜けている。そう言われれば、全身の毛穴がむずむずするはず。大丈夫安心して。そのむずむずは、ほっといてよい。肩凝り腰痛冷え性に効能があるそうだ。エビデンスは、もちろん無い。

反物質のカラスたちは、そのむずむず物質を伝播してゆく飛行隊である。

「電撃戦、準備しーや!」

イナズマレイブン隊の隊長機、コールネームはイレブンイレブンレイブン。彼は、11機の僚機に号令を発した。

僚機たちは、てんでばらばらに飛び交っており視認できない。
思い思い気ままに、まだマイナスの存在として時空に拡散していた。

ここでマイナスの存在がイメージしずらい方のために、簡略して説明しよう。

空を、カラスが飛んでいる。これは通常のプラスの存在だ。
それに対して。
空を、カラスがちょうどすっぽり入れるカラスの形をした空間の亀裂が飛んでいる。これがマイナスの存在だ。
そこにカラスはいない。しかし、カラスの形をした空洞は飛んでいて、やがてそこにカラスが入る予定ということだ。

ならばそこに入る予定のカラスは、今どこにいるのかって?
まだ時空全体と混ざり合ってて、てんでばらばらに飛び散っている。

「集合やて!
はよ集合しーや!」

返信が無い僚機へ、隊長は繰り返し呼びかけた。

「我らの奇襲攻撃は、
2丸2丸1111日の1111をもって、
作戦行動に移るんやでぇ!
おまえら、どこにおんねん!」

すでに80パーセントほどプラスの存在として収束し実体化している隊長は、業を煮やしてきた。
カラスの形をした空洞にダークマターが臨界値を超えて充填されると、プラスの存在として実体化が始まる。その充電力のことは「意思」と呼ばれていた。

(隊長さん、はんなりキレてはるわ・・・)

部下の一機がのほほんと言う。

(どこにおんねんって。
どこにでもおるわい。
わてらは時空に満遍なく拡散してるからな)

別の一機が言った。

言うというより、11機のレイブンたちは時空に拡散しているのだから、仲間たちどおしで同化しており。
言うまでもなく、想うだけで意識は交流できる。

(もうちょい日があるのに、せっかちやね隊長は)

(実体化すると物理法則に縛られるから、しんどいねん)

(それそれ。
実体化したらすぐ、重力ってやつにどかんやられんで。
せやから、実体に慣れるウォームアップの時間が必要やねんよ)

(それなあ・・・
その時間ってやつに制約されるのも、めっちゃしんどいねん。
ここの無時間は、ごっつ快適やし。
エンドレスの連休や)

(せやけど。
あっちらの陰謀実行日って、
いちいち11って数字が好きやよね。
験担ぎ?)

(ヤキンとボアズの柱やろ。
せやから今回はタイミングを合わして、
カウンターぎみに奇襲するミッションやねんて)

レイブンたちの談笑というか集団の独り言は、いちいち騒がしい。

ちなみに。
同じこの時空で生活している皆様方の身体は、レイブンたちとも同化していることになる。そう言われれば、身体の中がうずうずしてくるかもしれない。
大丈夫安心して。そのうずうずは、食欲不振倦怠感などに効能がある。エビデンスは無い。

防衛部隊の任についてる方の酒呑童子、清姫、平将門、ガルーダその他はその量子論的うずうずに敏感体質なので、シンクロしてうずいていた。

(おわり)

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