止水の砦の水位は、
恒（つね）に大なり。
その血潮は、まもなく血界を超える。
この過激なフリーフォールのために、臨界へと人為的に押し上げられてきたドミノの山。
そしてジョーカーは、旧世界の三角山を支えていたヴォールトのキーストーンを引っこ抜く。

そして、飛び立つ黒い白鳥。
そして、駆け出す灰色のサイ。
見えない野獣たち。
そして、レインボー通貨を噴く金虎の咆哮。
そして、大東亜共栄圏の新芽をくわえる鳩。
見えない聖獣たち。

『量子コンピューターと核融合炉』
ふたつのキーポイントを語った国士のジャンヌ・ダルクは、このキーストーンが白日夢ではないことを知っているのか？
モッキンバードを撃ち落とすテスラの試金石。
こことあそことあっちに、すでにそれが実在すると知っているのか？
それこそが白王の列島を、新世界へ向かう箱舟にすることを知っているのか？

二重スリット実験のように、
選ばなかった選択が到達点への波を推す。
観測者不在の間だけ、ロンドン橋を通り抜けワルツを踊る光波たち。赤の女王を悼むかに。

量子領域とゆっくり融合してゆく亜火ノ聖命たちのどこかしらかで、着メロが鳴った。

『テキサスで再起動する白い城』

清姫の、おのが命の次に大事なスマホに光るは、命よりも大事な座敷わらしからのメール文字。

（おわり）