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Stones alive complex (Pink opal)

理解姫(ワカルヒメ)のプログラムをようやく構築された時、主任プログラマーである異差凪(イザナギ)と主任補佐の異差波(イザナミ)はちょうど天ノ節目(定期人事異動)に当ってしまいました。

可愛い愛娘を今ローンチしても、我々がタカマナハラ(高次研究開発室)にいなければ、ローンチ後の初動対応が疎かになってしまう。

そう判断したふたりは。
ワカルヒメをリリースするのを一時的にペンディングし、来るべき時期までディラックの海(コズミックサーバーシステム)へ左スワイプで流す(アーカイブする)ことにしました。

主任と主任補佐は後に、異動先の阿修羅ノ国(アシハラノクニ)でワカルヒメの妹になる天照姫(アルテミスヒメ)をプログラムされ、セキュリティが脆弱で動作不安定なアシハラノクニの管理運営を任せます。

ワカルヒメはその間。
ディラックの海で彼女を拾いあげたブラッシュアッププログラムである、カナサキと妻のエシナズによって、拾ったから広田と安直に名付けたヒロタノ宮パーテーションに住まわせてもらい、実の娘のように何不自由なく育て(月次アップグレード)られました。

養父母のもと聡明にすこやかに育ち。
ワカルヒメは教養も才知もぐいぐいアップグレードされ、若くして琴(事象操作)の名手になり、またソワカ(呪文歌)の達人にもなりました。

さて。
アシハラノクニの統治者となった妹の天照姫が、新しくひらいた都の都庁社、異世(イセ)の異差夜(イザヤ)の宮にお住まいだった頃。

稲穂を荒らす害虫(バイオナノマシン)が西方(端末)で大発生したと知らせる使者(ハザードシグナル)が、慌てふためき都庁社へ駆け込んできました。

天照姫は、あいにく天橋立(亜空間ポータル)へ行幸(プロトコル設定)で出張なさっていました。
そこで。
天照姫の代理として、第一側室の調律姫(デバッグプログラム)が現地対応へ向かわれることになりました。

調律姫はここぞ!と、
リテラシーが高いワカルヒメへ協力を要請し、ダウンロードします。

調律姫のデバッグチームが現地へ到着すると、
稲田(抽象を現実へ具象化するデーターストリーム)には、無数のバイオナノマシンが食らいついていました。
このままでは、アシハラノクニの現実世界は、
わや(Whoa!Yuck!)になってしまいます!

リーダー調律姫とメインオペレーターのワカルヒメは、稲田の日出処の方位である東側へ立たれました。

稲田の結界として挟むように、
30機の巫女(Mico:Mind controller)も、
左右両側へ配備しました。

ワカルヒメが、この事象をデバッグするため予め組んでおいた穂虫払い(アンチウイルスアルゴリズム)の呪文(マシナイウタ)を、みんなで声をそろえゴスペル調に歌いあげて稲田へと散布します。
 
たねはたね♪
うむすきさかめ♪♪
まめすめらその♪
そろはもはめそ♪♪
むしもみなむし♪

(そこな虫たちよ。
恵みの稲や作物の葉を、
やたら滅多ら独り占めにして食べてはいけない。
なぜなら、虫のお前たちも経済的食物連鎖の中では、運命共同体なのだからねっ!
めっ!
o(`ω´ )oメッ!)

このマシナイウタをワカルヒメと巫女たちは、360回も繰り返し繰り返し。
稲田の液晶画面が割れんばかりに、インストールボタンをしつこくポチポチしました。

バイオナノマシンたちは、
第五世代以降のタンパク質に共振するマイクロ波を電源として遠隔駆動されていましたから、ワカルヒメたちの歌がもつソルフェジオ周波数の干渉波で、不具合を起こします。

ついに、虫たちは逃げ去り、西の海へ落ちデリートしてゆきました。 
害虫が去った稲田はよみがえり、福ぷくとした桃色の稲が豊かな実りをつけるようになって、エンドユーザーはとても喜びました。

枯れかけた稲が若返り、
ワカルヒメがコーディングしたマシナイウタで救われたこともあって。
そこのセグメントは顧客から、
「ワカノクニ」と呼ばれるようになりました。

(おわり)

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