静かなハイで眠れない

長年ジャニーズjrでがんばってきた姿を把握していただけに個人的な応援歴は浅くともやっぱり"デビュー"というまた一味違ったお知らせは息を呑むほど嬉しくて、しばらくテレビの前で体育座りのまま放心状態になっていた。

"デビューおめでとう!!"

ふわふわした気持ちに着地点を見つけられずにいる間はデビューという実感がなかなか湧いてこなかった。だからだろうか、報告を知った人々がネットの海を介して華々しく寿いでいる様子をすごく夢心地な気分で眺めていた気がする。ただこの公演自体はJr.全体の祭りと称していたため、当然デビュー発表の場だけではなかったし(もちろんだけど)、発表云々より演出内容に関する辛辣な意見も多く見られ、終演後は頬を抓ったような鈍痛が朝靄のようにしばらく各所を浮遊していた。だって仕方がない、あの空間を体験していたファンひとりひとりに好きな子がいて、その気持ちの数だけ思うことは様々で、そこに正解も不正解もないのだから。でも心のどこかで、もっとシンプルに"おめでとう"が届く場所で報告を聴きたかったなと贅沢にも思ってしまう自分がいた。真っ白い大きな花束に顔を寄せてlock on!を歌う9人が嬉しい気持ちを責任感で抑え込んでいるようにみえてザラザラとした苦味がほのかに残った。なんて言ったら怒られるのかな。

デビュー発表から数十分後、かつて応援していたあの子が画面に映った。その瞬間、中途半端な痛みでもたついている脳内に、色水が勢いよく浸透していくような感覚であの子に関する記憶が素早く駆け巡った。あのときこんなこと話してたなあとか、あの子とのやりとりを見ているのが好きだったなあとか。ドキドキしながら応援していた頃に比べると今は随分遠い場所にいる。けれど、あの子を気にかける気持ちは今もしっかりと覚えていた。任された仕事を真摯に全うしようとする彼の姿勢は当時と変わらず一目瞭然で、あの子に福音を鳴らす神かなにかになれたらいいのにと茫洋たる海を憂い彷徨う。大好きだった人の、そしてこれから応援していきたい人の、それぞれの幸せを確かに願うことの難しさ。