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君にHITOMEBORE〜summer paradise 2019〜

極彩色に映る夏の風物詩、TDCホールでグッズ列に並んでいると曇天からバケツをひっくり返したような大雨がコンクリートジャングルを濡らした。現場先で大雨に当たる日はいつも決まって何かが起こるということをこの時の私はすっかり忘れており、グッズ売り場を目の前に浮足立っていたのだった。

数年ぶりのジャニーズ現場は SnowMan summer paradise2019。最後にTDCへ行ったのはいつだろう。確か一昨年に三浦くん目当てに行った刀ミュぶりじゃなかろうか。あれから既に2回年を跨いでいたことと、今ここにいる理由が”ジャニーズを見に来た”という事実に大袈裟すぎるくらい人生を追想した。若手俳優の舞台現場にすっかり慣れてしまった身は新規も同然、ジャニーズ現場ならではのギラギラとした空気感漂うTDCに1人たじろいでいたらいつの間にか会場の最深部へと吸い込まれ、その先に待っている自席へ腰を下ろすと知らないお姉さんが上乗せするから自分と席を替わってほしいと声を掛けてきた。もしかすると今わたしがいる場所はジャニーズの現場ではなく、違う意味でやばいところなんじゃないのか?ただただ募る不信感でわけもわからず悠長に脳みそをでろっでろに溶かし、呑気に座っていたあのときにの自分に言いたい。まじ死ぬぞ って。


暗転後、ミッキーマウスの登場を心待ちにしている幼児のような気持ちでいたらparty×3を引っ提げて9人が出てきた。全然ミッキーなんかじゃなかった。崇高な9人の貴公子が荘厳とセンターステージに立ち並ぶ。その瞬く間に吹雪が乱れ舞い、でろっでろの脳内が一気に凝固した。「生きてた」シンプルにただこの事実を受け入れることに精一杯。そしてなんらかのフィルターを通して可視してきたありとあらゆるSnowManと、直に見ているSnowManのひとつひとつを照らし合わせていけることが本当に嬉しかった。青みかかったライトが映し出す彼らの純度は高く、峻烈な楽園が確かに此処にある。

貴い楽園の中、視界の人込みを掻き分けた先にいつかテレビで見つけた王子がいた。金色のたてがみを大きく靡かせて気高く舞い、獲物を捕らえたような鋭い瞳は至極の妖艶さを放つ百獣の王。かと思えば大型犬のごとくコロコロと動きまわる愛くるしさも内包に持ち、生身のラウールさんは画面で見るよりずっと生き生きとしていた。人を超えた何かの擬人化ではないかと思ってしまうくらいに。

目まぐるしい現状は瞬きすらも惜しく、過行く時を具現化するかのように落下物が乱反射を繰り返してゆらりと絶佳を落ちてゆく。そんな恍惚とした光景を添えてやってくる一人の貴公子、それは紛れもなくラウール先輩だった。いろんなファンと懇切丁寧にハイタッチ(も、しつつたまに指先を握らせていくという斬新なスタイルを繰り出していて笑った)をしていく中、差し出した手に力強く重ねてきたラウール先輩の手の質感はもう一生忘れられないだろう、そのくらいびっしょびしょで思わず笑ってしまった。こんなに貰って嬉しい手汗って他に ない。

ただすごいのはこれだけではなかった。なんとあろうことかいつの間にか目の前にはお立ち台が設置され、ラウール先輩がおよそ50cm内の距離にいるではありませんか。なんのこっちゃなんのこっちゃ。衣装の肌理が細かくてすごいな~~~~なんて思いながら恐慌で困惑する脳内を紛らわせようと試みるが、そのときにはすでに脳と視神経の連携がうまくいかず完全に次元の彼方に葬り去られた私は京都水族館のオオサンショウウオくらい微動だにしなかった。というか微動すらできなかった。極めつけは確か二回目の客降りだったと思う。虹色の海を闊歩するどこまでも美しく隙のないラウール先輩。一回目より多少マシになった高揚感に安堵を抱きながら、さあ次こそとことん拝見させていただきますッと意気込み、力強く目の前に構えた団扇。彼は気付いた。そして目の前で歩みを止める。

脳内で流れるカラフルEyes。「ねぇちょっと待ってよ、心の準備がね????君のことをそんなふうに見てたけど急に恋とか意識して???? 」ラウール先輩が私の真正面にいる。スラリとした小さい輪郭、温泉に浸かりたてのような潤い満ちた卵肌は世間の想像通りになめらかで、凛々しい眉と覗き込んでくる宝石のような大きい瞳は堀の深さで影が落ち、黒目の大きさがより引き立つ。あのとき、あの瞬間だけ確かにわたしはラウールさんの瞳に映った。言うならば軽率にひとりじめにしていた(殴られ覚悟)。3月に見たМステのラウール先輩が走馬灯のように駆け巡る。あのとき瞳の奥で手招きをされたような感覚は間違っていなかった。今、目の前で、しかも本人によってそれが実正されてしまった。ああ、なんてことだろう。

アンコールではまさにひとり彷徨うZIGZAGLOVEの渦中にいたわたし。担当とするにはまだ足りないスピードがボクの心を燃やして、、燃やすだけ燃やしておいて、、、。TDCの楽園こと summer paradise を終えて久しく見たコンクリートジャングルの生暖かさがじわりじわりと現実へ引き戻していく。あのときのお姉さんの気持ち、今やっとわかった。