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22 March 2022 / A day sky was so blue and magnolia was in full bloom.

今日、幼馴染みが虹の橋を渡った。
私の母と彼女の母が友人同士であり、近所に住んでいたことから、私たちはある意味生まれる前から友だちだった。
ほぼ同じ頃が出産予定日だったけど、私が予定日よりも早く9日に生まれ、彼女は同月の24日に生まれた。未熟児ギリギリだった私と未熟児だった彼女は、生まれてすぐの暫くを同じ病院の保育器の中で過ごした。

彼女は常に私の一歩先をゆく優等生で、私にとっては前を行く彼女が頼もしく、誇りであった。
保育園、小学校、中学校と一緒に進み、彼女は地元の進学校へ。私は勉強が出来なかったので入れる高校がなく、お金さえ払えば行ける地元の私立へ行った。別々の高校でも彼女との関係が途切れることなく、彼女は大学生に。私はアイルランドへ留学をした。
アイルランドと日本で離れても、彼女との関係は続いて、私が帰省をすれば必ず会い、大学の長期の休みを使って彼女はアイルランドへ遊びに来てくれた。彼女が大学生活を送っている場所に私が遊びに行ったこともある。その後もずっと彼女との縁は続いた。きっと彼女の誕生日を祝わないことってなかったんじゃないかと思うくらい、距離はあっても私たちの心が離れることはなかった。
去年の11月にお互いに45歳になった。

45年間、彼女とは濃い時間をいっぱい過ごさせてもらった。幼馴染みという言葉では表現しきれない、かけがえのない存在で、正直、彼女がもうこの世に存在しないということを信じられない。

私がアイルランドに再移住するから、出国前に会おうと3週間前に地元の公園で会った。
彼女の病気のこともあり、感染期間はとうに過ぎていたとはいえ私がコロナになってからあまり月日がたっていなかったので、会わずに出国することも考えていたが、彼女が換気の良い場所でマスクしてなら大丈夫だと言ってくれて会うことになった。
会わずに出国するなんてなしだよーと言った彼女は、私以上に先のことを考えていたんだろうと、今になって思う。

風のない温かい日で公園のベンチに座って数時間を一緒に過ごした。
17時をまわり、冷え込んで来たからお互いに帰ろうかと言って、彼女をハグした。細い細い彼女のカラダを抱きしめながら、彼女の病気を私の体が吸い取ってしまえばいいのに、と言葉にすると彼女は何度もありがとう、ありがとう。と言った。

彼女の病状を聞いていたので、ハグをしながら、もう2度と会えないのかもしれないなと思った。思ったけれど口には出さなかった。同時に心のどこかで夏に帰省をしたらまた会えるかもしれないという小さな期待もあった。

私と彼女が最後にあった翌週。
彼女は家族と病院へ行った。
夏を迎えるのは厳しいと思ってくださいと告知された家族とサクラを見るまでは頑張りたいなと言った彼女。
その一週間は比較的、穏やかに過ごしたとのこと。
約一週間前より体調が急激に悪化。
入院してしまうとコロナの関係で誰とも会えなくなるので、彼女は自宅を選んだ。
会いたい人には会っておいた方がよいと伝えられ、彼女自身が会っておきたい友人たちに連絡をし、何人かの友人たちが彼女を見舞った。
3月22日 自宅で家族に囲まれて彼女は45年の人生の幕を閉じた。

目を閉じると彼女の笑顔を思い出す
目を閉じると抱きしめた彼女の細いカラダを思い出す。
目を閉じると彼女の残した子どもたちの姿が浮かぶ。
目を閉じると彼女の声がきこえそう。

私がこれが最後かもしれないと彼女を抱きしめた3週間前。お互いに言わなかったけれど彼女も同じ気持ちだったんじゃないかと思うと、彼女の心の痛みを感じたような気がして、思わず胸を手でおさえる。

彼女の妹から訃報が届いた。
永眠という言葉が信じられなくて息をするのを忘れそうだった。呼吸を忘れなかったのは嗚咽が漏れたから。

今日はアイルランドの空がとても青くて
マグノリア(木蓮)が大きく咲き誇っていた。
空の青さまでもが悲しかった。

英語のフレーズでcrossing a rainbow bridgeという表現がある。大切な人がこの世去った時に使うフレーズ。
アイルランドは雨がよく降るし、天気も変わりやすいのでよく虹が出る。

これから虹を見たら彼女のことを思うのだと思う。

もう暫くするとアイルランドでもサクラが咲く。
サクラが咲く頃までがんばって生きたいなと言っていた彼女。これからの私の人生、サクラを見るたびに私は彼女のことを思うのだと思う。

サクラの美しさに悲しみを感じ涙するのだと思う。
そして悲しみを感じ生きていられることに感謝するのだと思う。

出会ってくれてありがとう。
たくさんの思い出をありがとう。
ありがとうという言葉では伝えきれないほどの、あなたが与えてくれた全てにありがとう。

Rest in peace my dearest S.
You will be always in my thoughts.

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