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発泡酒とわたし

 「かねがね、金がねえ」なんていう情けない文章を書いたことがある。大抵の場合、給料は酒と服に消えていくから、僕の財布にはいつも金が無い。友達と酒を飲んで、ひどく酔っ払った時、僕は「俺が出すよ!出す出す!」と言っているらしい。僕はそれをいつも覚えていない。次の日の昼、物凄い頭痛で起きては、財布の中身に驚く。なーんもねえ。大概そういうときには、友達から連絡が入っている。『昨日はありがとう!』と。なら良いや、と思いまた寝る。

 金が無いのだ。「有意義なお金の使い方」みたいなものを、僕は知らない。恥ずかしい話、貯蓄もわずかだ。24歳にもなって何をやっているのか。お父さんお母さん、ごめんなさい。

 それでも酒を飲みたい僕は、財布の中に入っている申し訳程度の金を数えて、コンビニへ向かう。224円。小学生の遠足にも行けない。ただ、小学生には決して楽しめない酒の魅惑にとり憑かれてしまったわたしは、千鳥足、おぼつかない足取りで「お酒コーナー」へと向かうのだ。バカの一つ覚えみたいに。目的はひとつ、「201円の発泡酒」である。

 発泡酒は、ものすごく薄い味がする。ビールとはまったく違う。ネガティブなことはあまり言いたくないが、あれはれっきとした「ニセモノ」だ。ビールの真似事である。が、僕は幾度となく彼に助けられたわけで、「彼」なんて言ってしまうのはちょっとベタベタしていて気持ち悪いが、恩人みたいなものだ。

 大抵の場合、発泡酒を買うような、発泡酒しか買えないような貧乏なわたしは、腹が減っている。晩飯もろくに食わず、ぐうぐうと鳴り続ける腹を押さえながら、酒を求めている。当然、アルコールが身体を回るスピードは非常なものだ。非常とは言ったが、これが常である。常なものだ。すぐに酔っ払ってしまう。

 千鳥足の幅がとことん広くなり、それに比例して、身体の振れ幅もどんどん広くなっていく。電柱、ポスト、その辺の自転車、店の看板など、あらゆる物にぶつかって、生傷を増やしながら帰宅する。翌朝は絶望的だ。

 財布のなかに、23円。俺は何をやっているんだ、と思いながらも、明日のデートに向けて残しておいたわずかな貯金だけを頼りに、風呂にも入らず布団にくるまった。だらしないが、楽しい生活だ。発泡酒はいつも、金の無い僕に優しい。はたして、優しいのか、それとも厳しいのか、酔いに酔った僕にはわからない。

頂いたお金で、酒と本を買いに行きます。ありがとうございます。