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サブスクは、お客様を想いつづけ、お客様に愛されていくビジネスモデル

先日開催されたイベント「海外事例から考えるD2Cブランドの未来」に参加し、snaq me服部さんのお話がとても学びが多かったので備忘としてメモ。

バリューチェーンを”全体”で設計する

カミソリのD2CブランドであるDSC(Dollar shave club)Harry's(いずれも業界大手2社に買収されている)の違いをバリューチェーン全体で比較すると、バリューチェーンの各要素を個別でみるのでなく、両者ともバリューチェーン"全体で"設計され、そして全く別のもの。

どう違うかはsnaq me服部さんのnoteに詳細記載されています。
(とっても勉強になりました…!)

DSCはパッケージが100%recyclable、冊子もデザインが可愛い
カミソリブランドのインスタ、フォロワー19万...

D2Cとは「思想」

服部さんのお話でとても腑に落ちたことの一つは、「D2Cとは"モデル"ではなく"思想"なのではないか」というお話。

ちなみに私は"D2C"の定義としては以下で認識していました。ほとんどの方がそうじゃないかな?と思いますが。

自社で企画・製造した商品を、ECサイトなどの自社チャネルで販売するモデル 
(引用)『D2C』とは?事例と共に説明します。

先ほどのカミソリのHarry'sはWalmartなど大手スーパーでも販売を行なっていたり、この定義に当てはまらないケースがあるとのこと。
一方で、これまで"D2C"と言われてきたブランドの多くは、自社で商品開発〜製造〜マーケティング〜販売することにより、顧客接点を増やし、顧客データを活用することでいかに顧客中心に価値提供し、より良い顧客体験を設計していくかという「思想」に基づいていると。

これまでは「商品開発〜製造〜販売」のバリューチェーンに関して定義として語られてくることが多かったですが、それは"より良い顧客体験"を実現する手段の一つであって、本質的な価値は”体験”にあるということ。

スケールしているD2Cの共通項

海外で成功しているD2Cブランドがもつ共通項は何か、服部さんいわく以下の2つ。

・いち早く市場に入ること(先行優位)
・顧客接点、チャネルを多くもつこと

まずは、いかにD2Cブランドとしていち早く市場に入るかどうか。
アメリカではD2Cのカミソリブランドはすでに100くらいできているそう。でも、ほとんどのブランドは恐らく先行企業の真似事なのではと。いち早く市場に乗り出し、ブランドを確立し(ブランディング)、消費者にファンになってもらうことがスケールするために必要なこと。

もう一つは、顧客接点を多くもつこと。接点が増える=より多くの顧客との出会いが増えるだけではなく、顧客にとってより価値の高い体験設計ができるため。

市場を"創造"するD2Cブランド

すでにある市場に参入するだけでなく、新たな市場を創っているD2Cブランドも。
例えば、「Ritual(リチュアル)」はビタミンサプリのサブスクリプションサービスですが、それまでビタミン剤を摂取することを習慣としてなかった層が顧客の3割を占めているそう。
もともと、Ritualの創業者シュナイダーが、妊娠をきっかけに成分に関して透明性のあるサプリを探してもなかったことをきっかけに起業し、同じような層に購入されるようになったとのこと。
既存のサプリメーカーが価格競争で市場のパイを取り合っている中、Ritualは潜在層にアプローチでき、市場を創ったとのことで、やっぱり原体験としての課題から生まれる発想は強い、、。

”顧客層の30%は、それまでビタミン剤を摂る習慣がなかった人々”
(引用)「インスタ映えするビタミン剤」で急成長、Ritualが狙う4兆円市場


飽きないサブスクサービスにするための施策

サブスクはチャーンレートが重要なKPIの一つですが、当日の質問で「商品に飽きられないようにするためにどのような施策を行なっているか」というものがありました。
以前に、お花のサブスクについて「飽きたから解約しようかな...」というようなツイートを見たこともあり、特にモノ系のサブスクは商品に短期的な効果が実感できるなど必要不可欠な要素がない限り飽きは一つの課題になりやすいのではと感じていました。
それに対して、snaq.meでは具体的に以下の施策を行なっているとのこと。

・パッケージを変える
・冊子で次回へのワクワクに繋がるようにする
・基本は毎回ちがうスナックが届くようにする

スナックは常に100種類くらいある状態で、うち10%くらい入れ替えを続けることでSKUを増やしすぎず(コストを保ちつつ)、飽きられないようにしていると。(海外のfav fit fanというサブスクBOXは飽きに対する施策が上手のよう)

また、次へのワクワク感をもってもらえるように冊子を工夫したり、新しいスナックを届けるようにしているそうです。(希望すれば同じスナックを届けることもできる)

そう考えると、商品開発やデザイン、在庫管理にかかるコストなど結構かさみ、たとえ中間マージンがなくても必ずしも安く提供できるものでもなさそう、というのが今回の新たな気付きでした。
とはいえ、中間マージンや広告とは異なり、既存ユーザーに「ワクワク感」や「美味しさ」などの価値を継続的に提供できるので同じコストでもこちらの方が本質的で素敵、、。

大事なことは、本当のファンを作ること

引用:https://www.instagram.com/snaq.me/

服部さんいわくサブスクで大事なのは、いかに本当のファンを作ってバイラルで広まるかとのこと。過去にインフルエンサーマーケもやったことはあるそうですが、フィードで流れていくため広告と同じで長期的な顧客に繋がりにくくあまり効かなかったとのこと。
一時的にLTVが短い顧客が増えたとしてもあまり意味がなく、いかにより良い顧客体験価値を提供し、ファンになってもらい継続的に利用してもらうかを重要視した施策を(目の前の利益にとらわれず)実施することが大事、

余談ですが、先日CHANEL(コスメ)が、各国のインフルエンサーを自社の研究所に招いて、商品が作られる工程を見せたり、品質の良さを研究員の言葉から伝えるということをしていました。

これは従来のインフルエンサーマーケのように、単にインフルエンサーにPR投稿してください、というような依頼をするのではなくインフルエンサー(コスメご意見番的な人)にファンになってもらい、その結果自然なインフルエンス(orバイラル)を狙ったもの(多分?)。
なのでインフルエンサーマーケもより本質的に、何を重要視して取り組むのかしっかりと設計していくのが今後の本流になりそうな気がしました。
(とはいえ、CHANELは招いたインフルエンサーに映え写真のシチュエーションをいくつか用意していて、短期的なインフルエンスに関してもしっかりと設計されてたので抜かりない)

snaq.meの話に戻すと、マーケ施策としてはソーシャルで拡まりやすい設計はやはり重要とのこと。snaq.meの場合、もともと商品が届いた状態で写真をとると、中身のスナックが見えていなかったそうです。

以下、最所あさみさんのツイートより。左が新、右が旧パッケージ。

また、塗り絵ができるようなパッケージにしたら、実際にユーザーの方が塗り絵をして写真をアップしていたのことで、いかにソーシャルで広まる仕掛けを作るか、というのはもはや欠かせない視点。

またsnaq.meはオフラインで年2回のイベントを行ない、ユーザーとコミュニケーションをとっているとのことでした。内容はクイズ大会や新商品紹介、1日カフェを開くなどだそうです。オンラインでのコミュニティ形成としてはユーザー同士がコミュニケーションを取れるような掲示板があります。

"バランスの良い成長"が求められるモノのサブスク

現在snaq.meは綺麗な右肩上がり直線でじわじわと成長しているとのことでした。何かを境に急激に成長したことはなく、逆にそうなってしまうと供給が追い付かないので厳しいとのこと。これもなかなか難しいポイント、、!

食べ物だと特に製造過多はフードロスに繋がってしまうし、需要や製造・配送・販売のリードタイムを計算してバランスを意識しないといけない難しさがあるな〜と感じました。

おわりに

イベントを終えて思ったのは「アフターデジタル」で言及されているような中国のサービスたちに、D2Cやサブスクに関する色々なヒントが詰まっていそうだなと。もう一度読み返したい!

すべてがオンライン化し、データ化した先にはそれを活用したより良い顧客体験があること。ユーザーによる評価や、ユーザーの行動データなど、ユーザーに体験価値として還元できるデータをいかに集め、それによって良い体験を作っていくことが、D2Cであれサブスクであれ、今後の競争優位になっていくのかなと改めて感じました。

D2Cだからこそ実現できる価値提供、それを実現するための泥臭さとか細かさとかたくさんあって、お客様に対する強い思い、愛情が重要でそれこそがすべての原動力になるモデル。それがあると、最終的にはお客様に愛されていく。

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