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博士からのことば

私の認識だと、博士は『ことば』の研究者なんだと思う。

『ことば』に関する本を書いている。

たくさんの本を読んでいて、ことばをたくさん知っている。

彼が私に投げかけることば達に、どれほどの気付きをもらっただろう。

私が気付かない私の想いを、どれだけ代わりに表現してくれただろう。

私が欲しいことばをたくさんくれた。

『どうしてわかるの?』何度聞いたかわからない。

博士と出会ってたくさん話して、触れ合って。

それを通じて歯医者のことを振り返り、理解を深めていった。


人生いつも全力投球な博士。

今まさにジャーナル論文の締め切り直前で追い込み中。

『この文章、俺が水をやらないとこの世に生まれない。だから水をやり続けなきゃいけない。むぎの気持ちも、むぎが水をやらないと枯れちゃうんだよ。枯らさないで。』

『俺で生き方を覚えてよ。〇〇さん(歯医者)じゃないかもしれない。自分(博士)でもないかもしれない。また新しい誰かが突然現れるかもしれない。そしたらそっちに行ってもいいんだよ。それをつなぐのが俺の役割かもしれない。』


博士はことばにすることを大切にしている人。

いつも『ことばにしないと伝わらない』と言ってる。

歯医者は逆かな。自分の気持ちを話すことは恥ずかしいと思ってるところがあって、なかなか話してくれない。お話しは大好きだけど、それは楽しむための会話という感じで。

深掘ったり、本音を言うことは得意ではないと思う。

だけど思いは行動に現れる。それを教えてくれたのは歯医者だ。

『ことば』で伝えるか『行動』で伝えるか。

その違いだけなんだ。

それはそれぞれの表現であって、根っこには『思い』がある。

どちらも力がある。

ことばも行動も。



歯医者との心理的な別れに混乱している私。

自分の一部になっていた歯医者を失い、自分の中の大事な何かが抜け落ちている感覚。

私が私じゃなくなったように思っている。

ごはんは食べられないし、ぐっすり眠れない。

目の下にはクマができて、こんなに暖かい日なのに痩せてしまったから身体が冷えていて寒い。

歯医者と暮らしていて、こんなにガリガリに痩せたことなんてなかった。ごはんが食べられなくなることなんてなかった。夜更かしして眠れていないことはあったけど、不安で眠れなくなったことなんてなかった。

大事な人を失った。

歯医者と暮らしている時の、写真の中で笑っている自分の顔はとても穏やかなことに気付く。

心から安心していたんだ。


その安全な場所を失ったから、私はもうあの頃のように笑えないんじゃないか。ごはんも美味しく食べられず、十分に眠ることもできないまま、年老いて、死を待つだけなんじゃないか。

そんな絶望を感じている。


そんな話をしていたら、

『むぎはむぎのままだよ。ちゃんといる。何も変わってない。(歯医者がいなくなって)変わってしまったと思いたいだけなんじゃないの?』

『俺のことだけ見てよ。むぎが掴んでくれないだけだよ。』

『どうして俺といるの?1人じゃ生活できないから?』

『俺は離れないよ。〇〇さん(歯医者)みたいに逃げない。』

『そろそろいじけちゃうかもよ。どっか行っちゃうかもよ。』

『俺じゃダメって言われてる気がする。』


博士は感情的だ。

そんなところが魅力的でもあり、歯医者とは正反対なところに惹かれて好きになった。


『どうして決めちゃうの?人生何があるかわからない。大丈夫。むぎは少しずつ変わってるよ。頑張ってる。』


たくさんのことばをもらってる。


博士が話すことば

博士が教えてくれた本で出会うことば


たくさんのことばが私の中に入ってくる。

新しい私を創っていく。

破壊と創造。


『ダイアローグ』という本を読んでいて『すべてのことは保留できる』ということを学んだ。

『そうだよ。今は答えを出さない。それが答え。今は話し合わない。それも答え。』

と、博士に『保留』について話したら、そんな風に言ってくれた。


新しい概念だ。


考えてること全部出さなくていいんだ。

自分だけが理解しておけば、出さなくてもいいんだ。保留しておける力が人間にはあるんだ。

必要な時に出せるように大事に仕舞っておいていい。

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