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愛情不足の特産品

あたしには、腹違いの4歳上の姉がいる。10年以上社会に出ていない。いわゆるニートと言われる部類だろう。

あまりに前の事で忘れてしまったが、姉はきっと初めての彼氏であろう人と同棲していた。当たり前のように妊娠した。けれど姉よりも5歳くらい歳上の彼氏は結婚するつもりはないという。そしてまた当たり前のように中絶した。

その後すぐに別れることになり、彼の仕事の都合で他の県に行くことになった時、姉はすでに仕事を辞めてついていっていたのだ。

実家に帰ってきてからも姉は社会に戻る気はなかった。というか病んでしまっていた。姉は元々あたしと一緒には住んでおらず、詳細はわからないが、いつの間にか鬱病と診断されていた。

思えば、姉は子供の頃は活発で、よく外で虫をとったりして遊んでいた。姉は父親方の祖母が育てていたので、家は違ったが、あたしはけっこう泊まりに行っていた。

虫が好きな姉は、トンボなどを捕まえてきては、自分の部屋中に放していた。その時は「すげぇ!この部屋かっこいい!」とまで思っていたが、今考えると数十匹のトンボが部屋の中を飛んでいるのだから気持ちが悪い。(しかもたまに踏む…)

プラモデルを作るような細かい作業も得意で、部屋にはガンダムのプラモデルが行く度に殖えていた。そんなところもすごく尊敬していた。

絵を描くのも得意だった。あたしには真似できない(がさつなもので)繊細なタッチの絵を描いていた。父親も趣味で繊細な絵を描く人だったので、姉はそこに似たのだろう。

ゲームも得意だった。ジャンルお構いなしで次々クリアしてしまう。ドラクエなどは普通にレベル99まで上げてしまうぐらい、コツコツ積みあげる作業も得意だった。

姉はあたしの尊敬する存在で、どうあがいたってこの人を超えることは出来ないだろうと思っていた。

そんな姉が今はニート。才能は有り余るぐらい持っているのに。

ただ、母親が違うせいか、うちの母親は姉の事に関しては遠慮して口出ししない。あたしにも姉とはあまり関わってほしくないように言う。

あたしは姉をきちんと救いたかった。だって、たった一人の血をわけた姉だもの!尊敬する姉だもの!

とは言ったものの、おかしくなった姉はしょっちゅう夜中に電話をかけてくるし、こっちは仕事上早番もあるし、子供もいるしで相手をするのに疲れてしまった。

それに加え、母親からの関わるなという重圧もあって、今は疎遠になってしまっている。

姉はよく言っていた。「あたしは実の母親に見捨てられたんだ。だから今こうしてるんだ」…やはり何歳になっても母親の影響って半端ないものだと思う。

なんで姉を置いてった?うちの母親もなんで自分の子供のように育てられなかった?なんで不足した愛情を埋めてあげられなかった?とれる手はいくらでもあったじゃないか!

共通の父親も亡くなった今、あたしのところまでは、詳しい事情は届いてこないだろうけど、これこそ大人の事情の産物だ。見て見ぬふりをされて造りあげられた愛情不足の特産品。

たまたま身近にいるが、世の中にはもっといっぱい溢れているだろうに。

あたしにもっと力があれば!その薬漬けの世界から救えたかもしれない!と思うことも子供を守ることで精一杯のあたしのキャパでは傲りでしかない。



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