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宮本浩次『ロマンスの夜』で見かけたロックな女性

 先日の宮本浩次コンサート『ロマンスの夜』でのこと。
 『冬の花』の終盤で、周りが着席しているなか、1人の女性が突然スッと立ち上がり、右腕を振り上げ、頭上高くに拳を掲げた。何か決意表明でもしているかのようにステージを見つめ、拳を掲げたまま微動だにせず真っ直ぐに立ち尽くす。初期衝動に忠実な姿はまさにロックだった。こんな姿を見ると「やっぱり、歌には敵わない…」と思ってしまう。この女性を突き動かす、この歌には何があるのだろう…?と考える。そして、この歌にあるのは『切実さ』だと思った。また、同じように彼女も切実さを纏っているように見えた。

 日常で見せることは無いけれど、人は何かしらこのような思いを抱えて暮らしているのだと思う。そんな、胸の奥にある置き所のない切実さに、歌の持つ切実さが呼応して、一瞬にして心を解き放し、抑えていた感情に思いっきり飛び込ませてくれる。

 更には、この歌の持つ力強さに勇気づけられる。負けたって、逃げたって構わない。それでも私は負けたくない。そう思わせてくれる力がある。この歌の『ああ、私が負けるわけがない』の声に何度となく励まされた。

 わけのわからぬ優しさでは、慰めにもならない時がある。そんな時、身を切るような切実さに救われる。歌にはこんな不思議なことが当たり前のように起こるから敵わない。そして、コンサートはそれを精一杯サポートし、共鳴、共振させてくれる場なのだと思う。だから、私は足を運ばずにはいられないのかもしれない。

ひと知れず されど誇らかに咲け
ああ わたしは 冬の花

『冬の花』宮本浩次

 歌詞とシンクロした彼女の姿は最高に格好よかった。


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