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Martin B style マンドリン 1922

マンドリンをやってみようか、そう思った。長年ギターに親しむ私だが、他の弦楽器を試みたことがなかった。そういえば、リヴォン・ヘルムはドラムセットを離れたときにはよくマンドリンを手にしている。ベースメントテープスのレコードジャケットではマンドリンをフィドルに似せて抱えるディランがいる。おそらく同じだろうマンドリンを抱えるリヴォンの写真もある。

調べてみると、それはマーチン社のフラットマンドリンだった。マンドリンと言えばギブソンが人気で高価だが、マーチンのマンドリンはやや安価で手に入れやすい。ネットで検索すると、平塚の楽器屋「リアリー」にマーチンマンドリンを見つけた。さっそくドライブがてら湘南平塚まで行った。「リアリー」は手頃なビンテージギターを集めている店だった。マンドリンを知らない私は店主に解説してもらい、少し弾いて見せてもらった。人の良さそうな店主はマンドリンのコードブックをオマケにつけてくれた。

トップはスプルスで胴体はローズウッド。テールピースとペグは付け替えられていたが、古い部品も年代物のケースに入っていた。シリアルナンバーから1922年のものらしい。マーチンギターだったら大変なものだが、マンドリンの市場価値は低い。それでも、経年劣化した色合いはもちろん、ヘリンボーンやスノーフレイクのインレイがマーチンらしい高級感を醸し出している。店主は「ブルーグラスのストロークだったらギブソンだが、マーチンは音色が良くアイリッシュなどにマッチするよ」と教えてくれた。

あれからもう10年以上経過しただろうか。私のマンドリンの演奏技術はちっとも上達しない。ポロポロと鳴る音色はギターのそれとは異なり、私はそれだけで満足してしまうのだ。もう一世紀以上の年代を過ごしてきたものだから、胴体はすっかり乾燥し、いわゆる箱鳴りする。私の同素材のマーチンOM-42と並べると親子のような感じがする。いや、お爺さんと孫かもしれない。新年早々に購入したマンドリン教則本を手にしながら、今年こそ少し上達させてくれと「物言わぬ友人」に願掛けした。

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