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フラットマンドリン Gibson A-40

ネットオークションで好みのフラットマンドリンと出会った。A型でFホールのフラットマンドリン。トップのブロンド色が魅力的なGibson A-40 は1950から1970年に販売されたビギナー用のフラットマンドリン。経年の古びた姿がなんとも魅力的に見えた。

首尾よく落札すると、ガムテープにくるまれた梱包が届いた。ステッカーだらけの古びたハードケースを開くと、ほこりにまみれたブロンド色の姿が表れた。おそらく半世紀の間に複数人のプレーヤーの相手をし、何の因果か日本に飛び、それが私の手元にやって来たに違いない。 古い弦を外し、汚れを拭った。埃やタバコのヤニ?で汚れている。傷もかなりある。汚れを取り払いワックスで磨くと、飴色の姿が現われる。トップ(表板)のスプルースの木目が美しい。新しい弦を張り試し弾きする。枯れたボディーから素朴ながら明るい音が響く。Fホールなので音量はやや小さめだが充分だ。ネックにわずかだが反りがある。

翌日、友人のギター工房に持って行く。友人(ギター職人)はケースを開き「こりぁ、いいねぇ」とつぶやきながらマンドリンを手に取り子細に見分する。やおらネック指板の剥離を指摘し、まずはそれを修理しようと診断した。一月ほどして連絡があり、寒い冬の工房に出かけた。友人は「良い音、しているよ」と微笑みながらマンドリンを手渡してくれた。指板の剥離はきれいに修復されていた。それから一年ほどして、わずかなネックの反りが気になった。私の指力が弱いのか、1-2フレットの弦高が高く感じた。友人からマンドリン専門のルシアーを紹介してもらい修理調整を依頼した。そして数か月後、見事に再生されたマンドリンが私の手元に帰ってきた。

オークションで入手したマンドリンは、二回の入院を経てプレーヤーコンディションになった。おそらく私と同じ60歳代だから、体に不具合があって不思議じゃない。一つ直すと、次の不具合が見つかる。そんなものだろう。また直せばよい。こうして「物言わぬ相棒」がまた一つ増えた。物は増やしたくないが「相棒」はいくら増えても良い。

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