見出し画像

海外旅行パッキング

海外といっても香港と中国だが、頻繁に行き来した時期があった。出張する度に生活用具を小型のスーツケース詰めるのだが、だんだん手際がよくなる自分に気が付いた。普段は旅行するにしても妻任せだから、出張旅行のパッキングは何か新鮮だった。出張先で利用するコンセントアダプターや小型の髭剃りは、忘れないようにスーツケースに入れっぱなしになった。

あるとき無印良品に旅行パッキン用の小物があることに気が付いた。小型のポーチやメッシュのバッグは使い勝手が良さそうだった。海外旅行を経験した商品開発者のアイデアなのだろう。こういうのに私は弱い。さっそくいくつか買ってみた。着替えを入れる洗濯物バッグ、コンセントアダプターや延長コードをまとめて入れるバッグ等。

これだけでスーツケースの中はきれいに整理された。それまで着替えはホテルの部屋に付属しているランドリーバック(ビニール袋)に入れていた。それで機能的には問題ないのだが、無印のバッグを使うとホテルのベッドに開いたスーツケースの中は見事に整理整頓された。何事も見えない処をしっかりすることが大事だと、自己満足した。

ある出張帰り、たしか杭州だった。空港の荷物検査で私のスーツケースが引っかかった。搭乗客が並ぶ列の中で事務員からスーツケースを開けるように指示された。素直にスーツケースを開けると、きれいに整理整頓された自慢の(笑)パッキングが現れた。スーツケースに注目する私の背後から、ウワッ!という声が漏れた気がした。

私の隣には、靴下や下着がぐしゃぐしゃになった芸術的なスーツケースを開帳した紳士がいたたまれない姿で立っていた。私は事務員から指示され、無印のバックをいくつか開き、中身をチェックしてもらった。検査が無事に終わり、スーツケースを閉じる私は事件を解決したシャーロック・ホームズのように少し鼻高々だった。

一緒に搭乗客の列に並んでいた同僚は、素晴らしく整理されているねと驚嘆の声を上げた。同僚女史は私じゃなくて助かったわ、恥ずかしくて絶対開けられないと漏らした。今でも二人に会うとこの話題が出る。備え良ければ…だが、私はパッキングの面白さに開眼しただけだった。たまたまそれを公衆の面前に露呈することになってしまった。それだけのことだった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?