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フルートカフェ第13回 「フルートと電子音楽」生命の息吹と情報的身体の拡張

音楽のことフルートのことを様々な角度から探求するトーク番組フルートカフェようこそ。無意識の世界に広がる壮大な冒険の旅へ一緒にまいりましょう。


このシリーズはスタンドFMとYoutubeと両方でも配信しています。

音楽ファンの皆様、こんにちは。フルートの事、音楽の事を様々な角度から探求するシリーズ「フルートカフェ」へようこそ。生命の息吹を伝えるフルートの音色と共に、無意識の世界に広がる壮大な冒険へ一緒に参りましょう!

フルートと電子音楽

今回は私が数年前から取り組んでいるフルートと電子音楽のお話をします。
フルートと電子音楽って、一体どういう事?とお思いになると思います。
同時に、私達が日常で耳にする音楽は、何らかの形で電子的に加工されたものの方が圧倒的に多い。フルートと電子音楽を合わせない理由もない時代になってきました。

音楽と人の関わり リベラルアーツの完成

人類で一番最初の音楽はどんなものだったか、想像してみましょう。衣食住が整って安心できる空間でないと、中々音楽に取り組む余裕もないですが、それでも、日常のふとした瞬間に、小鳥のさえずりに耳を傾けたり、石や木などでリズムを叩いたり、遠くに何かを伝えるために節をつけて声を鳴らしてみたり、そんな様子が思い浮かびますね。

記録として残っている古いものでは、紀元前3000年前、エジプトの壁画にも楽器演奏の様子が描かれていて、儀式や祭りのときに、音楽がさかんに演奏されていた事がうかがえます。

紀元前1000年、ギリシャではピタゴラス学派らによって、音楽の研究が盛んに行われ、哲学・音楽・数学・天文学などのリベラルアーツの体系が整えられました。元々は宗教の儀式や、祭りなど、人々の意識を統一したり、現状の外の意識へ導く手段として発展した音楽が、哲学や数学と同じラインで研究される事によって、人間がどうしたら、選択的自由を手に入れ、より発展していくか、という学びと成長のプロセスに音楽が重要な役割を果たしていた事がわかります。その後、貴族や教会のパトロネージュにより、西洋クラシックのベースが強化されます。

日本古来の音楽と暮らしの中の音楽

日本の音楽は、残念ながら古代はどんな音楽が奏でられていたか、記録がないのですが、古事記・日本書紀に記されている歌謡から、何かしらの歌曲が存在した事がわかります。そもそも日本が統一されていない時代ですから、土地土地に独自の音楽があった事でしょう。

6世紀ごろ、大陸文化の伝来が始まり、日本古来の音楽と融合して、10世紀ごろ宮廷音楽としての雅楽が完成しました。たまたま、記録として残っているのが、環境が整っていた宮廷のもので、やはり土地独自の音楽は全国各地に存在していたと思います。

それでも基本的には、音楽は、身分が高く、暮らしに余裕がある人が楽しむものでした。平安時代が過ぎ、武家が台頭してくると、雅楽が衰退し、民衆芸能が発達してきます。能楽など将軍の庇護を受け、武家の中で発展した音楽もありますが、歌舞伎のように大衆文化と共に発展した所が日本の音楽の面白い所だと思います。パトロンの後ろ盾をきっかけに大きく発展した西洋クラシックとは大きく異なる点です。

人間の発展と音楽の関わり

いずれにしろ、世界各地で、新しい楽器の開発や、効果的な舞台装置など、改良と進化を重ねながら、人々の暮らしの中で、刺激を与えたり、遠くの国の物語を伝えたり、癒しを生み出したり、異世界と繋がるきっかけを作ったりと、音楽は人間の発展の段階で、常に重要な役割を果たしてきました。

生活スタイルが変化すると共に、音楽の形も変化します。元は宗教儀式などで、神々の世界と交信するため、日々の労働の疲れを癒す祭りで、皆の意識を統一し、トランス状態にするため、パトロンや教会の権力を鼓舞するため、暮らしの中に、刺激を与え、次なる創造へ向かうための起爆剤として、各時代の音楽人の弛まぬ努力で音楽も発展しました。

情報空間でのコミュニケーションと音楽

音楽は空気の振動を利用して人から人へ伝わります。デジタル技術の発達によって、同じ場を共有しなくても、情報空間を通じてコミニュケーションが取れるようになりました。ここ数年の世界情勢の思わぬ副作用で、新しい選択肢もどんどん増えています。オンラインでコミュニケーションをとること、キャッシュレスのデジタルマネーを利用する事。ほぼ強制的に今までとは違うライフスタイルへの変化となりましたが、芸術的視点で見れば、大きなチャンスです。

どんな事でも、慣れない事、知らない世界に触れる事は怖い事。目に見えない音楽の世界では、新しい事を開拓するパイオニアのミュージシャンは常に最初の段階では、世間の批判にさらされました。ただ、一度その表現が認知された途端、今度は圧倒的な支持を得ます。言葉を使わない音楽は、常に時代の先を行きます。今の時代に音の場を共有できる事、本当に喜びに感じています。音の波をサーフィンしながら今の時代を一緒に過ごしましょう!

アコースティックからエレクトリックへ

いよいよ本題のフルートと電子音楽ですが、20年近くアコースティックの世界で、本気で演奏してきたからこそ、電子音楽と組み合わせたスタイルへのトランジションは簡単なものではありませんでした。

最初にお話したように、私たちを取り巻く環境は、どんどん新しい技術が取り入れられていて、音の記録・再生の方法一つを見ても、私が勉強していた時はまだギリギリカセットテープがあって、今のように誰でもストリーミングでスマホで音楽を聴くような状況は、想像もつきませんでした。この後も想像もつかない方法で、音楽の共有の方法が発展していく事と思います。

フルートなど、アコースティックな楽器は、身体を響かせて、会場の空気と一体化する喜びはありますが、最大のパフォーマンスを発揮するには、音が良く響く会場が望ましく、場に依存すると言う弱点があります。

たくさんの人と共有する事、アクセスの良さを考慮しても、電子音楽を取り入れない理由がない状況なのですが、今までやってきた事、「フルートはこうあるべき」と言うような、自分が音楽を学んだ時に身につけてしまった固定概念が邪魔をして、中々思い切って前に進めない状況でした。

素晴らしい電子音楽家との出会い

そんな状況を打破してくれたのが、素晴らしい電子音楽家の存在。ありがたい事に、電子楽器を演奏する素晴らしいミュージシャンとの共演の機会を何度か頂いて、それがあまりに楽しくて、こう言う人ともっと共演するために、自分もやりたい!と思うようになりました。

という訳で、私の電子楽器を含めた表現へのトランジションのきっかけは、素晴らしい電子音楽を演奏するミュージシャンともっと音楽的に会話をしたい、と言うもの。

全音楽家が電子化にトライした2年間

そうこうしているうちに、世界情勢が激変して、生活のほとんどがオンラインに変化。そもそも電子的に音を加工する事に全く興味のないミュージシャンまで、皆オンラインでの活動に移行しなければいけない状況になりましたね。

今、やっと落ち着いてきて、またリアルなライブも復活していますが、全員が一度、配信などのプロセスを体験する、と言う事は非常に重要な事だったとおみます。なにしろ、知らない事は怖い事ですが、一度体験してしまえば、良いものは良いと認めざるを得ない。

実際、最近までは良くある誤解で、長年アコースティックに親しんできた人から、アコースティックの方が電子音楽より良い、と言う意見を聞く事がありましたが、この2年を経て、それは視野の狭い考えだという事を皆実感したと思います。電子的に音を加工する事の可能性、そして、ただボタンを押しているだけではない、その微妙な調整にかけるエネルギーは、アコースティックな音楽を習得するまでのトレーニングと何ら遜色のない、綺麗な音を出すまでは、大変な道のりだと言う事をみんな気がつく事ができたと思います。

アコースティックと電子音楽の相乗効果

私も実際やってみて、アコースティックと電子音楽、どちらも本当に奥深く、やればやるほど、どちらか一方にできて、どちらか一方にできない事は決してない、と言う事を痛感しています。

もちろん、それぞれ得意・不得意な分野はありますが、現状の外へ聴き手を導くという音楽の本来の役割を果たすためには、アコースティック・エレクトロニックどちらも関係なくて、ただただ、自分がいる環境において、最高の音をつくる事に全力をかける、その事に尽きると思います。その環境も、電子的なアプローチを併用する事で、圧倒的に選択肢が増えます。

良くある誤解

エレクトロニックな表現を始めた時、

①アコースティックの方が音が良い
②電子音楽は倍音がカットされる

と言うような事が聞こえてきたりしたのですが、

①は単純に良い電子音楽を聴いた事のない、もしくは奏者が下手のどちらか、もしくは両方。
②はおそらくMP3と勘違いしている (そもそも倍音が多ければ多いほど良いという事はない)

など、奏者側もリスナーも、聴いた事のない音、今までにない音楽だからこそ、コミニュケーションにバグが発生してしまう事もありましたが、やればやるほど、アコースティックと電子音楽に差異はないし、むしろ相乗効果で想像もしない展開を生み出せる事を、お客様からのフィードバックも含めて実感しています。

生命の息吹と情報的身体の拡張

アコースティックの面白さは、フルートのようなエアリードの場合、内的宇宙(呼吸)と外的宇宙(管体を通って響かせた外の世界)との接点が音のはじまりだと言うこと。

その音を電子的に加工する事の面白さは、リバーブなどによって自由自在に空間の広さを創出できたり、ループやカットアップによって時間軸を操作する事で、パラレルワールドを表現できたり、無数の可能性が広がります。

身体を響かせて、リアルな空間と一体化するだけでなく、情報空間で音を増幅させたり、時間軸を多層的に展開していく事で、情報的身体はどんどん拡張していきます。

音楽は意識の乗り物

古来より、人間は移動距離を拡張する事で進化して来ました。徒歩▶︎馬▶︎汽車▶︎車
▶︎飛行機▶︎宇宙船 人間の発展に乗り物の進化は重要な役割を果たして来ました。

所が、情報空間では乗り物がなくても、どこへでも、
意識だけで自由自在に移動する事ができます。音楽は意識の乗り物です。

フルートとエレクトロニクスで、音の波に乗って、想像もした事のない場所
へ一緒に参りましょう!

フルートと電子音楽の最新ライブ

最新のライブでフルートと電子音楽をフィーチャーします。

9月24日(土) Miya Flute+Effects Solo 13 Views 
東北沢・OTOOTO
¥2,000 19:30 Start

フルートと電子音をめぐる13の冒険。Miyaの最新の音をお届けする【13Views】ついに、フルモジュラーデビュー!フルートと電子楽器で誰も聴いた事のない新しい音楽をお届けします。

配信なし・会場のみのスペシャルなライブ。席数限定です。
こちらよりご予約ください

Miyaの最新情報 こちらで発信しています。チャンネル登録よろしくお願いします。▶︎https://bit.ly/Miyasroom

音声のみはこちらからご視聴頂けます💁‍♀️✨


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