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文面と対面のコミュニケーションの違いは、「レスポンスの時間」である。

文面のコミュニケーションなら少し時間をおいてもそれほどどやされることはないし(緊急の場合を除く)、難しい要件の場合はゆっくり考えて返事を打つことができる。
しかし、対面でのコミュニケーションはそうもいかず、会話と会話の間が3秒空けば一気にその場の空気は微妙なものになる。対面では、その場その場のアドリブが常に求められるのだ。

私は実際、対面でのコミュニケーションには相当気を使っている(つもりだ)。この言葉を使ったら相手が傷付かないだろうか、この場における適切な表現は何か。

しかし、「3秒」という制限時間の中でそれを考え、言葉にして発するのは相当なエネルギーを要する。だから、私は人と話をする際とした後に異様な疲労感に襲われる。対面でのコミュニケーションが苦手という人の原因は、もしかしたらここにあるのかもしれない。逆に、それが得意だという人は、対話においてどうするのが最も適切かを経験の中で学び、熟知しているのだろう。

ここで困るのは、レスポンスに要せる時間がさらに短いシーンでの対話だ。例えば、酒の席。
酒の席でのコミュニケーションは、普段の会話よりもさらに猶予時間が短くなる。体感、1秒間が空けば一気に会話の流れは滞ってしまう。つまり、酒の席において表現や会話の内容について考えている時間など無いに等しい。

このような場合は、脳味噌の上っ面から出た―思考回路を経ずに発出される―言葉で会話を続行するしかない。言い換えれば、酒の席の会話において、内容などさして重要ではないのである。

もちろん、最低限の礼儀は弁えるべきだし、重大な失言があった場合は後から謝罪しなければならない。それでも、酒の席においてはポンポンポンと、大玉送りのごとく言葉を受け流していくスキルが求め得られる。そこに高尚な議論は必要ない。相手の言葉端を捕まえて、うまい具合に会話を広げていけばいいだけだ。

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