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セーラの叔父さま 12話

クルー大尉の死

その後私たちは日本の話や世界中を旅した叔父さまの冒険談とかいろんな事を楽しく語り明かした。

そんな毎日が続いたある日のこと。
珍しく真面目な顔をした叔父さまが私の部屋にやって来た。

「セーラ、悲しい知らせがある」
「叔父さま、どうなさったの?・・・まさか・・・お父様が・・・」
「そうだ。残念ながら君の父上、僕にとっては義理の兄にあたるクルー大尉が亡くなった」
「!」

私自身はセーラに憑依しているだけでクルー大尉とは父娘関係になるってイマイチ感覚的に思えないのだがそれでもやはりショックはショックなのだ。人が亡くなるのは悲しい。60歳を過ぎたおばさんだと周りの人たちが亡くなる経験は結構あるのだ。誰も死なない世界があればいいとも思わないこともないが不老不死っていうのも辛いだろうなあ・・・なんて考えてしまう。・・・おっと、話が横道にそれてしまった。

「実は僕は先日君の話を聞いてからインドにいる僕の友人にクルー大尉の事を調べて貰ってたんだ。
友人がクルー大尉を見つけたときはもう身体が弱り切っていてどうしようもない状態だったようなんだ。もし助けることが出来れば助けてあげたかったんだが・・・残念ながら・・・君の助けになれずに申し訳ない」
「いいえ、叔父さまそんなことまでしていただいて感謝します。本当にありがとうございます」

そう言いながら私の目から涙がぽろぽろとあふれてきた。
そんな私を優しくハグして叔父さまはそっと頭を撫でる。
「セーラ、今から君は大変な目に遭うかもしれない。でも心配しないでいいから。僕ができる限りのことをしてあげるから」

フランス人ってどうしてこんなキザな台詞をスラスラと言えるんだろう・・・と頭の片隅で思いながら止まらない涙を叔父さまの素敵な服で拭ってしまってどうしようかと考えている私はやっぱり日本の中年のおばさんだなあとこっそり苦笑していた。

それから数日が経った。
私は相変わらず叔父さまの家で暮らしている。
このままミンチン女子学院に戻らずにすめばひもじさや寒さの中でこき使われることもないだろう。しかし、この小説の中では大筋小説通り話が進むようになっているようだからたぶん私は戻る運命になっているのだろう。

そして・・・とうとうミンチン先生から手紙が届いたのだ。

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