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幼児期こそ運動遊びを!敏捷性の発達に好影響があります

今回は「幼児の反応時間と遊びとの関係性」についてお話します。

現代の幼児は「敏捷性」が鈍くなっている!?

最近、幼児が転んだ際に手をつく反応が遅れ、上体を保護できず、頭や顔をケガしてしまうケースが多いことが報告されています。コロナ渦以降、この傾向は特に目立つようになりました。

とっさの場面で手足を伸ばして頭を保護したり、姿勢を安定させようとしたりすることを「保護伸展反応」と言いますが、現代の幼児は昔に比べて「保護伸展反応」がかなり低下していることが予想されます。

周りの動きに対して体を素早く適切に動かしたり、自分が意図する動きを素早く実現したりする能力が十分に発達していないと考えられるのです。

下記の図からも分かる通り、幼児期における「神経系」の発達はめざましいです。神経機能の発達は「敏捷(びんしょう)性」の発達にも影響しますので、幼児期に学習経験を多く積むことで敏捷性の発達も大きく異なってくると考えられます。

ゲーム遊びと運動遊びどっちが好きですか?

現代は幼い頃からテレビゲーム(以下「ゲーム遊び」と呼びます)をする幼児が増えていますよね。そこで、ゲーム遊びと運動遊びが「敏捷性」の発達にどのように影響するのかについて調べてみたので調査結果を紹介します。

石川県にある12保育園に通う年中および年長のお子さん636名を対象に「幼児の敏捷性測定と遊びに関する調査」を行いました。

敏捷性については「単純反応時間測定」「左右反復横跳びテスト」といった運動パターンの異なる2種類のテストで測定し、これらの総合得点を「敏捷性得点」としました。

▼単純反応時間測定:幼児の「情報処理機能」を測るために実施

▼左右反復横跳びテスト:幼児の「運動出力機能」を測るために実施

ゲーム遊びについては、園児の保護者に家庭での様子について下記の質問に答えていただいたところ、「ゲームをよくする」 園児は4歳児で37.6%、5歳児で36.5% という結果になりました。

家庭以外での遊びについては、園児自身に好きな遊びを選んでもらう方法で調査しました。その結果、「動的な遊び」を好む園児(動的な遊びのカードを2枚以上選択した園児)は4歳児で57.1%、5歳児で61.0%いました。

ゲーム遊びと運動遊びが「敏捷性」の発達に与える影響

これらの調査結果を踏まえて「敏捷性」と「遊び」の関係性を分析したところ以下のことが分かりました。

1️⃣ゲームをよくする園児は、ゲームをしない園児に比べて「単純反応時間」が速かった(「反復横跳び」の結果には大きな差はなかった)。
▶︎「神経系の発達が顕著な幼児期にゲーム遊びをすることで、視覚情報に対する反応時間が速まる」と言える。

2️⃣運動遊び(動的な遊び)が好きな園児は、静的な遊びが好きな園児に比べて「単純反応時間」に加えて「反復横跳び」の結果も優れていた。
▶︎「神経系の発達が顕著な幼児期における運動遊びは、刺激に対する反応の速さと全身的な動作の敏捷性のどちらも高める」と言える。

また、単純反応時間測定と反復横跳びテストの総合得点を「敏捷性得点」としましたが、これは「運動遊びが好き」かつ「ゲームをしない」園児の得点が一番高いという結果になりました。

発達が著しい幼児期こそ「運動遊び」を積極的に!

今回の研究結果から、「ゲーム遊び」は視覚情報に対する上肢系の反応時間に対する効果はあるものの全身の敏捷性を高める効果はなく、一方で「運動遊び」は反応の速さを高めるとともに全身的な動作の敏捷性を高める効果があることが分かりました。

全身の敏捷性は、将来スポーツをする時だけではなく、日常生活で起こる不意の危険を回避するためにも欠かせない能力です。

神経系の発達がめざましい幼児期には、テレビゲームなどの静的な遊びだけでなく、実践的な運動遊びを積極的に経験していくことが大切と言えます。

ぜひ、保育園やご家庭での遊びの参考にしてみてください!


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