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足部・足関節トレーニングプログラム

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足部・足関節は足関節捻挫に代表されるような急性外傷や、アキレス腱炎や足底腱膜炎など慢性的な障害が非常に多い部位として知られています。

しかし傷害発症に伴う機能不全を抱えたままのスポーツ復帰は再発や他の関節での代償を発生させるリスクがあります。

例を出すと足部におけるアーチ維持機能は内在筋により維持され、歩く、走る、ジャンプなどの際に動的安定機構として足部アーチの崩れを防ぐ働きを持ちますが、内在筋の機能不全により足部アーチが低下し扁平足障害などにつながる原因となります。

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しかし臨床やスポーツ現場における足部・足関節疾患を有する方のトレーニングに対する認知度は低いように思えることが多々あります。

その理由としては"痛みが取れる=治った"というイメージが浸透し、適切な機能改善を行わずに日常生活での負荷の増加や早期のスポーツ復帰などが原因にあると考えています。

患部の痛み=炎症と捉えるのであれば、炎症が消失することをゴールに設定するのではなく、機能的な面に着目し、動作の改善などをゴールに設定することが重要になるのではないのでしょうか。


トレーニングによる疾患へのアプローチ

そもそもトレーニングを行う目的として患部への負荷の軽減や原因動作の修正などが挙げられるかと思います。

足関節捻挫を例に出して考えてみましょう。

足関節捻挫については今月の最初の記事でご紹介した石橋さんの記事を参考にしていただけたらと思います。


度重なる足関節内反捻挫などによる前距腓靭帯損傷により構造的安定機構の破綻を招いてしまうと、足関節の安定性は筋や固有受容感覚など神経系による機能的安定機構に依存する形となります。

距骨に直接付着する筋は存在しないため、距腿関節の安定性を担うのは靭帯や筋となりますが、前距腓靭帯損傷を損傷してしまうと筋による安定性が求められます。

構造的安定機構の修復には靭帯再建術などが行われますが、保存療法を選択した場合、私達セラピストとしては機能的安定機構をトレーニングにより機能改善を図ることが重要であると考えられます。

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またアキレス腱障害や足底腱膜炎などの慢性疾患においても腱膜や腱組織の退行性病変により症状が発生しているという報告もあり、改善には下腿三頭筋や足底腱膜に対する遠心性トレーニングが有効とも言われています。

今月のL-tra.+の記事でも紹介してきた足関節捻挫、アキレス腱炎、足底腱膜炎などに対しても原因となる機能改善のためにトレーニングを段階的に行うことは症状を改善するためには欠かせないアプローチとなります。


しかし参考書などではトレーニングの有効性は示されている関わらず、動作やトレーニングの注意点など内容について詳しく明記されているものは少ないように思えます。

そこで今回の記事では私が普段からフィットネスクラブやスポーツ現場でも活用している足部・足関節疾患の改善に対する段階的なトレーニングプログラムをご紹介していきたいと思います。


今回のnoteは

✔足部・足関節疾患に対するトレーニングを知りたい
✓足部・足関節疾患のアプローチ積極的にトレーニングを取り入れていきたい

このような疑問などを抱えるセラピストの方に向け臨床やスポーツ現場ですぐ活用できるトレーニングプログラムを紹介していきたいと思います。


足部・足関節の段階的トレーニング

足関節に対するトレーニングを行うには基本的には以下の順序でトレーニングプログラムを展開していきます。

①足部アーチトレーニング
②外在筋トレーニング
③股関節 - 足関節連動トレーニング
④CKCトレーニング

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1|足部アーチトレーニング

最初に取り組むプログラムとして足部内在筋によるアーチ機能の獲得が挙げられます。

足部アーチは骨により内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチの3つのアーチによって構成されます。

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各アーチには頂点となる骨が存在し、特に内側縦アーチの舟状骨、外側縦アーチでは立方骨が挙上することにより足部アーチ機能は維持されます。

これらの頂点になる骨の支持性を高めるためには静的支持機構の靭帯や動的安定機構である内在筋による支持機能が必須になります。

荷重時には剛性が高まった足底腱膜や内在筋が伸張することにより衝撃緩衝作用を果たしますが、足底腱膜や内在筋の機能低下により剛性が低下した状態では荷重を骨構造での支持に依存するため、舟状骨の降下などアーチ低下を招きます。

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①内側縦アーチ

内側縦アーチを形成するためにはトラス機構の役割が重要になります。

トラス機構は内在筋により荷重が加わった際に足底腱膜や内在筋の伸張によりアーチの低下を防ぐ役割があります。足底腱膜は短趾屈筋の収縮により荷重負荷を分散させる機能をもつため足底腱膜炎などにも有効なトレーニングとなります。

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※タオルギャザーのような足趾屈曲トレーニングは長母趾屈筋、長趾屈筋などの外在筋の機能が主となるため内在筋トレーニングとは区別して行う必要があります。

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過剰な外在筋の収縮は足趾伸展制限によるウィンドラス機構の機能不全を招く可能性があります。また、足趾屈筋群は距骨内側後方を通過するため、距骨の後方移動制限を誘発し、足関節の可動域制限を招くため、トレーニングの際には足趾屈曲に注意する必要があります。


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