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2023.6.27 ヒト・コト・トーク#9@5day's market(広電五日市)レポート

宮島線の沿線で活躍する方々をゲストにお招きするトークイベント「ヒト・コト・トーク」。
前回は、オタフクソース株式会社 マーケティング部 共創課の小針一風さんと、Farmer’s collection代表の竹内正智さんにお話いただきました。(第8回レポートはコチラ)
9回目(2023年6月27日)となる今回は、5day’s marketのオーナー井上康子さんとpiece of cake!代表の蒲生美彩さんをゲストにお招きして開催しました。


-ゲスト紹介-

井上 康子 さん
広島県広島市出⾝。学生時代に外食産業の会社でアルバイトをし、接客のノウハウを学ぶ。同会社の洋菓子部を経て、飲食業を志向するようになる。婚家の美容室を手伝いながら美容師免許を取得。美容室を辞めた後の2006年4月、五日市に5day’s marketをオープン。夫婦で同店を経営するに至る。

蒲生 美彩 さん
広島県広島市出身。産後1ヶ月でチーズケーキ専門店を開業。原材料にこだわったチーズケーキをオンラインとイベントのみで販売中。back number、BiSH、STU48などのアーティストの差し入れにも利用頂いている。子育てをしながらママ起業家として活動中。

―まずはお二人の自己紹介をお願いします。

(蒲生)piece of cake!の蒲生美彩です。オンライン販売と広島、山口、福岡を拠点としたイベント出店でチーズケーキを販売しています。

(井上)5day’s marketの井上といいます。ここでカフェをやっていて、今年で18年目になります。よろしくお願いいたします。

―今の事業を始めた経緯について教えてください。

(蒲生)元々チーズケーキを始める前はドイツに住む予定で、準備を進めていたタイミング妊娠が発覚したのですが、ドイツ語も分からないし医療費も高いので、旦那に仕事を辞めてもらい日本に帰りました。私も仕事を辞め、旦那も仕事を辞め無職。そして生まれくる子供。何とかしないと!という思いがありました。日本に戻り、家もなかったので祖母の家に居候したのですがそこが田舎で。近所の人から野菜やお肉をおすそ分けしてもらうくらい田舎で、そのお返しにチーズケーキを渡していました。その時にこれだ!とひらめきチーズケーキを作ることになりました。初めて作ったチーズケーキは売り物にならないくらい美味しくなくて(笑)このままでは食べていけないと思い、全国から約100種類のチーズケーキを取り寄せて試行錯誤し、出産と同時に事業を始めたといった感じです。会社員時代から何か自分でしたいという思いはずっとあったのですが、背水の陣で背中を押してもらったという感じです。

(左から蒲生さん、井上さん)

(井上)私は以前勤めていた会社が外食産業の会社でレストラン部や洋菓子部に在籍していて、主人はずっとコックをしていました。主人の母がこの場所で元々美容室をやっていて。美容室を引退すると同時に私たちがここを継いで、カフェをオープンしたという形です。

―それぞれの屋号もおもしろいなと思ったのですが、どういった由来があるんでしょうか?

(井上)そのまま五日市を英語にしました(笑)店の名前は色々考えていたのですが中々まとまらず。お店の内装を手掛けていただいた方も含めて話し合いをしたのですが、名前に思い入れを入れすぎるとよくないっていうジンクスを聞いて。土地名や人名をもじったらいいんじゃないの?ということで五日市をそのまま英語にして「5day’s market」になりました。

(蒲生)もともと「piece of cake」は英語のスラングで”余裕”という意味です。事業を始めたタイミングが産後一か月と慌ただしく余裕がなかったので自分への戒めの意味と、チーズケーキぽい可愛さがあったので決めました。

―5day’s marketの店内にはハンドメイドの作品がたくさんありますね。

(井上)知り合いの作家さんからの依頼で、作品を常設でお店に置かせていただいています。他にも5、6名の方の作品を置いていますね。
あとは、趣味でハンドメイドをされている70代くらいの奥様からの依頼で日曜日にはお店を貸したりしています。店舗を借りるのは負担だし、休みたいけどお店のようなことをしたいと相談があり、店舗のスペースを間貸ししています。

―お客様が自由に表現できる場になっているのが素敵ですね。一方蒲生さんは、店舗を持たずにオンラインとイベントのみということで井上さんと対照的ですよね。

(蒲生)元々おしゃれな空間を作りたいという気持ちはあったのですが、産後間もないこともあり、改装する余裕がなく今の体制で始めました。ただ続けていくうちに店舗を持たないというメリットが大きいなということに気が付きました。まずロスが出ないこと、そして店舗に張り付けにならない分人件費・光熱費がかからないので無駄がないんです。自分たちが好きなように、フレキシブルに動けることはすごくメリットだと考えています。今後店舗を持つこともあるかもしれませんが、当面はこの体制のままで続けていくつもりです。

―そのスタイルがかえってチーズケーキの購買意欲を高めている気もします。ですが、こちらの写真はピンチっぽいですが…

(蒲生)これ大変だったんですよ!チーズケーキを始めてしばらく経った頃に、ある時トラブルが起きてしまって。何か所かイベントに出店するはずだったのですが出られなくなり、約500個のチーズケーキの行先が無くなってしまいました。まだ始めて3か月くらいで、さすがにこんな数売ったこともなかったのでかなり焦りました。藁をもすがる思いで、インスタグラムのストーリーでお願いしました。本当はしたくなかったのですが、そんなことも言っていられず…。結果それが大バズリで、皆さんがどんどんリポストしてくださったおかげで日本中に拡散されて、オンライン販売で一瞬にして売り切れました。
いまだから笑い話にできますが、当時はさすがに自営業しんどいと思いました(笑)皆さんの愛に助けられた事件でした。

―そうしたピンチも前向きに捉えていらっしゃる姿が印象的です。井上さんも自営業ならではの大変さはありますか?

(井上)ありますね。もし今からやろうと思っている人がいたら、相当な覚悟をもってやりなさいというかな。コロナの時は休業要請がでて急に休むことになって。販売なら営業しても良かったのですが、お弁当をお店で販売したことがなく、弁当の容器から集めなきゃいけなかったのでそれもしませんでした。それでも近所の方にテイクアウトするよって言ってもらえたり、営業再開後に定期的に来ていただいたりと、色々支えられました。休業中はコンビニでレジ打ちの仕事をしたりもしてました。

―続いて井上さんのお写真です。こちらはインスタグラムで投稿されている写真ですが、お店のPRよりもご自身の気持ちを吐露されている印象です。

(井上)メニューを変えることもないので、今更PRすることもないんですよね。こういう写真を載せている方がフォロワーが増えるんですよ。反対にメニューを載せるとフォロワーが減ります(笑)

―そうなんですね。蒲生さんは対照的に、イベントの出店情報等の発信が多く、マルチに投稿されている印象ですが、インスタグラムでの繋がりはいかがですか?

(蒲生)インスタグラムでしか広告宣伝をしてなくて、SNSに頼っている部分はありますね。同世代の人達も調べるときはインスタを使うみたいで、使ってみるかという感じでした。

―広島にライブで来られたアーティストへの差し入れもされているとのことですが、どういった経緯だったんでしょうか。

(蒲生)ほんとにラッキーで。始めて1ヶ月でbuck numberさんに差し入れして、そこからの繋がりでベリーグッドマンさんやSUPER BEAVERさん、この間はSTU48さんにケータリングで使っていただきました。主人の前職が音楽関係だったというのが大きいです。

―お二人がメニューに使われている食材には、どのようなこだわりがあるんでしょうか?

(井上)できれば国産のものをと思っています。コロナになって業者さんも廃棄が出て困っているようなので、できる限り国産の食材を使おうと思っています。

(蒲生)自分自身、原材料が気になってラベルを見てしまうタイプなので、自分が気になるからこそいいものを提供したいという思いがあります。自分が使ってくれたら嬉しいなと思うものや、自分の子供に与えたいなと思うものを基準に使うようにしています。

―そんな中、近年の物価高騰の影響も大きいと思いますが、いかがですか?

(蒲生)最近値上げをしました。物価高騰で一年前に比べ原材料の価格が約1.5倍になりましたが、その割に給料は変わらず。値上げするかどうかすごく葛藤しましたが、値上げしないと私たちの事業が続かないので、泣く泣く値上げさせていただきました。お客様が離れていかないか今も不安です。具体的には350円から400円への値上げですが、私が一消費者の立場で考えたときに大きいなと思っちゃうからこそ、ほんとに上げていいのかどうか悩んだのですが、このままだったら続けられず本末転倒になるなと思い…今も様子見です。

―会場の参加者の皆さんからお二人にお聞きしたいことはありますか?

(参加者)蒲生さんに質問です。最初に約100種類のチーズケーキを取り寄せて試行錯誤されたとのことですが、その中でここは取り入れたいと思ったこだわりポイントはありますか?

(蒲生)全部美味しかったのですが、それぞれ美味しさにも特徴がありまして。それを良いとこ取りしたのがこのチーズケーキになります(笑)最初は理科の実験みたいに、ここの食感をとりいれたい、だけど味はここだよねというのを繰り返しました。

(参加者)私自身、将来について悩むことが多いのですが、3人の子育てしながら飲食店を経営される井上さんにモチベーションや考え方を聞きたいです。

(井上)若い頃は何も考えず「やりたいことやろう」「絶対成功する」という気持ちがあったので出来たのだと思います。ただコロナになるとかは全く考えていなくて。コロナになったからこそ、今お店が出来ていることに感謝できています。やりたいことがあるのであればやった方が良いと思います。人生の先輩にも話を聞いた方がいいと思う。子供が3人いるのですが、負担もかけたし迷惑もかけたけど何も言われたことはなく。その子供を通して知り合った方にも支えられました。自分がまじめにやっていれば周りの人が必ず支えてくれると思います。とにかく何か始めないとそこからは進まないと思います。

(蒲生)新しいことを始めるのは怖いですよね。

(井上)本当に勢いで始めた感じなので、若いとなんでもできちゃうなと。今思えば何も考えてなかったです。お店を改装するために借金を抱えたのですが、住宅ローンよりも返す期間が短いんですよね。それも全然考えてなくて、で蓋開けてびっくりでした。失敗するとか、こんな事起こるとか全く考えてなくて。でも、目の前にあることを確実にこなしていくじゃないですけど、失敗も嫌なこともたくさんあったけど、色々な方に助けてもらっての今なのかなと思います。

―蒲生さんは地元が五日市で、井上さんもお店を始めてからずっと五日市で過ごされていると思いますが、ずっといるからこそ分かる、ここ変わってきたなと思う点や逆に変わらないなと思う点はありますか?

(井上)良くも悪くも垢抜けすぎないところです。お店を始めたころからずっと変わらない。新しくお店ができると病院か美容室になることが多いと思います。(笑)

(蒲生)人と人との距離がほどよいと感じます。五日市に帰る前は田舎に住んでいましたが干渉がすごくて。ごみ捨てのルールとか回覧板とかめんどくさいと感じていましたが、五日市はそこまで干渉がなくて心地良いなと感じます。程よく色々物があって、でも都会過ぎず。五日市で生まれ育ってこれが普通だからというのもあるのですが、私にとっては心地が良い街なのかなと思います。

―五日市ならではの居心地の良さがある気がします。では、広電との思い出は何かありますか?

(井上)実は宮島線の車内で20年前に倒れたことがあります。3人目を妊娠してすぐで、中電病院にいくのに宮島線に乗っていた時の話です。3月頃でまだ寒かったのもあり、暖房がガンガンかかっていて。目の前の席には人生の先輩方が座られていたので、ちょっと座れないなと思いずっと立っていたら気分が悪くなってきて、原爆ドームが見えて次で降りようとおもった瞬間に意識がなくなりました。運転手さんの「救急車呼びますか」の声で目が覚めたのですが、そこに座っていた先輩方が全員立って、座席に私が横になっていました。その後、一人の方が声をかけてくださって「実は妊娠していて」というと「全く分からなかったよ。言ってくれればよかったのに。」と病院までついてきてくれました。

(蒲生)私は高校生の頃にアルバイトの通勤に使っていました。本当はアルバイト禁止の高校だったのですが(笑)バレないように宮島でやっていたので広電でこそこそと通勤していました。背徳感を感じた懐かしい思い出があります。

―お二人とも今だから話せる思い出ですね。では改めて今後の展望について教えていただけますか?

(井上)良くも悪くもこのままで出来ていればいいなと思います。

(蒲生)まずはチーズケーキをもっと頑張っていきたいなと思っています。いろんな方に知っていただいて、大げさかもしれませんが、広島の方なら知っているくらいの知名度になりたいという気持ちはありますね。

―今後も五日市、そして宮島線を代表する味であってほしいと思います。最後にお二人から宮島線についてヒトコトお願いします!

(蒲生)「実家」
宮島線ってどこか落ち着くんですよね。県外から帰ってきて広電に乗ったときに、帰ってきたという実感がすごく沸きます。その帰る場所があるというあたたかさを、これからの100年も変わらず持ち続けてほしいなと思います。

(井上)「変わらず人と人の思いを運ぶものであってほしい」
いま母の入院先の病院まで広電の電車で通っていますが、その1時間の時間で母と会う気持ちを整理するんです。私自身も元気じゃない時には電車の中で気持ち立て直して、そして元気な状態で家に帰れるようにしています。多分皆さんも同じように通勤や通学で電車に乗っている時間で、気持ちをつくってリセットしているんだと思うんです。

―蒲生さん、井上さん、ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました!
ヒト・コト・トークは、宮島線の沿線で場所を変えながら毎月開催していく予定です。
次回は2023年7月25日(火)、会場は広電宮島口@宮島口広場です!
詳しくは、コチラをご覧ください!


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