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読書感想文〜『大人スキップ』松田洋子

2巻完結の短いお話の漫画です。
ネタバレ含みますので先に本の紹介を。
興味のある方はぜひ。

日野希子、14歳、中学2年。事故で眠り続けていた彼女は、目覚めると40歳になっていた! 中身は子供のまま、見た目は中年になった希子。果たして「いい大人」になれるのか……っていうか、「大人」って一体何だ!? 『ママゴト』(NHKBSでドラマ化)『私を連れて逃げて、お願い。』の著者が、大人になり損ねたすべての人たちへ贈る、不条理にして奇跡的な突貫成長コメディ、スタート!
amazonより

事故で意識がなくなり、目覚めると40歳に。中身は子供、見かけは大人。不安しかない希子ですが、そばについていろんなことを教えてくれたり連れ出してくれたりする『くろけー』がいれば大丈夫。
そんなくろけーは実は…。

どこまでが現実でどこからが夢の中なのかがわからない不思議な話なのですが、希子の夢とくろけーの現実、希子の現実とくろけーの夢の交流で、ラストは本当に会話ができた、ということなのかな、と私は理解しました。

意識がない間に両親が亡くなった希子は突然現れて世間に連れ出すくろけーに頼らざるを得なくなったのですが、反発したり喧嘩しながらもくろけーを信頼していき、希子とくろけーの立場が入れ替わっても、希子は眠りつづけるくろけーにずっと話しかけます。
現実では会話したことがないけど、夢を通してお互いが支え合っている関係です。

人と人が信頼し合うというのは、言うのは簡単だけど本当はとても難しいことだと思います。
相手の気持ちや考えは本人さえもわかってない部分も多いし、親子でも夫婦でも他人でも私が知ってる『Aさん』は一面でしかない。それが現実だと思います。
そんなこと言ってたら慎重になって誰に対しても不信になりそうですが、相手対自分の1対1で考えると、自分に対する態度と行動からその人を信じることができること、そして頼った時に逃げることなくきちんと向き合って支えようとしてくれること、向き合って支えようとしてくれると信じることができることが『信頼できる』ということだと思います。
信頼関係は相互関係だと思うので、お互いに大切に思う気持ちが伝わっていて、打算や駆け引きなく相手に対して誠実で尊重した行動ができることが『信じて頼れる』信頼関係には大切なのではないでしょうか。
決して言葉だけではなくて。

ラストの高齢になった希子とくろけーの会話で、くろけーの「こうしてるのも全部夢だったらどうします?」という問いかけに希子が「くろけーと夢見てられるならそれでいいよ」と答えて2人で微笑み合うシーンがあります。

私は時々そのページだけを見て泣いてしまいます。
近くにひとりでも、信頼できる人がいるのはとても幸せなことなのではないでしょうか。


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