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読書感想文〜『人魚の眠る家』東野圭吾

東野圭吾は昔ほんとによく読みました。
ジャンルがミステリー、サスペンスになるので私の稚拙な感想が食レポの「おいしいです」だけのあかんやつみたいになってしまうので書きにくいのですが…。
ちなみに乃南アサもすごく好きなのですが同理由で書きにくい感あります。

そこをどうにか『人魚の眠る家』。
本はあったのですが何かと忙しく読めず、1年間ほど温めていた本を3年前に読みました。

娘の瑞穂の有名私立小学校の受験が終わったら離婚するつもりでいた和昌と薫子。
ある日、薫子の母や妹たちとプールに行った瑞穂がプールの排水溝の網に指を突っ込んで抜けずに溺れてしまい、脳死状態であることを告げられ医師から厳しい選択を迫られてしまう。
薫子は臓器提供を拒み、そこから心臓は動き続けるが眠り続ける瑞穂。
IT系機器メーカーを経営している和昌は人工呼吸器を外し人工知能呼吸コントロールシステムを装着する手術を瑞穂に受けさせ、さらに社員の協力で瑞穂の筋肉に電気信号を流し手足が動かせるようになり筋肉量も維持していく。
普通の子がただ眠っているような姿のまま成長していくが、脳死したはずの瑞穂が動くことを気持ち悪がる人間もおり、その偏見の目は瑞穂の弟・生人にまで及ぶ。
家族は薫子を思い今まで違和感を口に出せずにいたが、瑞穂の死を受け入れなければならないと考えるようになる。そして瑞穂の体調も急激に悪化し始める…。

Wikipediaより抜粋

脳死と宣告された親の衝撃、この子は生きてる、認めたくない、と願う母親の行動はどんどん常軌からはずれていきます。

科学的に『元気な姿』に見えるようにする可能な術が身近にあるため、もっとこんなことができる、もっと、もっと、と薫子や薫子に協力する社員の行動に拍車をかけていきます。

薫子と社員の気持ちには差があって、薫子は娘が『事故などなかったと思いたい』『愛する娘の元気な姿を見ていたい』、社員はおそらく『会社に自分の技術を認めて欲しい』『探究したい』。
2人の思いの差もきつかったです。

自分が目を離したばかりに、と自分を責めながら瑞穂のお世話をして、薫子には強く言えない祖母の立場も、
薫子の息子の生人くんも薫子の行動のために周りから距離を取られ、幼いのに親に甘えることも出来ず、それでも家族のことを思っての言動も、読んでいて胸が痛かったです。

こどもの事故や病気は親にとって一番といっていいほどの辛い出来事です。
こどもの辛い様子を見ていたくないし認めたくない。薫子の気持ちや行動は責めることはできないし、薫子も気づいていながら止まるタイミングがわからなくなっていたというところもあったと思います。
ただ、娘の瑞穂ちゃんはどう感じているのか、瑞穂ちゃんはそれを望むのか…ラスト近くまで娘を薫子自身の望む姿に近づけることに必死で娘のことを本当の意味で慮ることはなかったのは、娘を愛するが故に感情が逸脱していたのでしょうか。

生と死の判断とは、人の尊厳とは、など考えさせられる話です。

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