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イライラの行方

こんにちは。

先日、昼下がりの静寂な図書館にて。

突然、イライラの塊が飛び込んで来ました。
それは、ご年配のおじいさんでした。

直前に、嫌なことでもあったのか。

猛然と新聞の棚に、向かって行くと、一部を手に取って、荒々しく椅子に座りました。

バサバサッと音を立てて、新聞を開くと、すぐに立ち上がり、「あぁっ!イライラするっ!」と声を上げました。

その場には、十数名いたでしょうか。
完全に、そのおじいさんを無視していて、注意を向けている人は、誰ひとりいませんでした。

私は、あまりに目立っていると、図書館のスタッフさんは、声をかけるのかしら?と思いながらも、そのまま読書を続けていました。

おじいさんは、また違う新聞を取りに行っては、椅子に戻るを繰り返しています。

それでも、その場の空気は、一向に乱れるようすもなく、みなが、平然と自分の作業に没頭しています。

しばらくすると、おじいさんのイライラは、この図書館の濃密な真綿のような空間に、吸収されていくように、自然に消えていきました。

それから、おじいさんは、閲覧席の手続きをして、なんと私の隣席に座りました。

ただ、その時には、もう先ほどのイライラの面影はなく、机や椅子や、書物を読む人間と同様に、その場の置き物と化していました。

その間、15分くらいでしょうか。

人は、空間に同調する。

イライラした時には、積極的に、落ち着いた空間に身を置こうと、決意をしたできごとです。

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