原田知世 40周年アニバーサリーツアー2022「fruitful days」
6月21日、夏至の夜。原田知世さんの40周年アニバーサリーツアー2022「fruitful days」へ。「So kakkoii 宇宙 Shows 名古屋」(小沢健二さんです)からの帰りに余韻を引きずりながらっていうのはどうなんだと躊躇しながらも、出かけてみれば、やっぱりとても心がゆるんで広がって。歌う人としての知世さんの充実ぶりに感動した。よきコンサートだった。
衣装もかわいかったな。特に、二部のロマンチックなニワトリみたいな羽根のドレス。ファンタジックな衣装なのに、髪をオールバックにしていて、『時をかける少女』の頃の知世ちゃんみたいな雰囲気もあった。ほんとうにどうなっているのだ? 可憐なるOver Fifty。「ハレルヤ 愛しい日々よ」
一部はカバー曲と懐かしいナンバー中心。「ユー・メイ・ドリーム」と「地下鉄のザジ」がかわいかったー。今このときだからこの雰囲気を出せていると思う。そして、いついかなるときでも「ロマンス」のイントロが流れると自動的に手拍子が始まる。
若いファンの人も増えているという話。そうでしょう、そうでしょう。『スナックキズツキ』の話も出て、楽しかった。ドラマは、回想シーンとスローモーションの場面を除けば、とてもおもしろかった。最終回だけ録り忘れていて(後から気付いた)見ていないので、どこかのチャンネルで見なければ。そっか、やっぱり最終回はドラマ・オリジナルなんだ。後から読んだ原作コミックもよかった。
二部は『L'Heure Bleue』以降の曲を中心にした構成。
『fruitful days』で、若い世代の新しい音楽家たちとつくった曲は挑戦だったと話していたけれど、どの曲もとてもよかった。デビューの頃からずっと聴き続けているけれど、ここまでの音楽宇宙をよくぞつくりあげたなと思う。
高橋久美子さんの歌詞はぴったりと知世さんの世界におさまり、最初も最後も。伊藤ゴローさんの「LIKE THIS」~川谷絵音さんの「ヴァイオレット」~網守将平さんの「邂逅の迷路で」~「シンシア」へと続いた流れもすばらしかった。今回のアルバム『fruitful days』で新たに録音された「シンシア」が本当にしみた。
アンコールは、「ping-pong」「時をかける少女」と続き、ダブルアンコールは「くちなしの丘」。すっかり知世さんの代表曲になった。キセルの辻村豪文さんの曲で、今回は歌わなかったけれど『fruitful days』に収録されている「真昼のたそがれ」もとてもいい。
今回のコンサートのセットリストには鈴木慶一さんの曲が入っていなかったけど、10月のスペシャルなコンサートでは聴けるかしら。
カーテンコールで感極まったような知世さん。深くおじぎをしたまま幕がおりた。
コンサートはオーチャードホールだったので、開演前に地下のアート系本屋さん「NADiff」に寄った。堀江栞さんの作品が展示されていると聞いて、それを見たかったのだ。
堀江栞さんの絵の隣には、堀川理万子さん『海のアトリエ』の原画も。サイン入りの絵本が置いてあって、迷ったけど、旅帰りで荷物が多かったのでなんとかあきらめる。
この絵本が「ドゥマゴ文学賞」を受賞したのは知っていたのだけど、美術館のほうにリーフレットも置いてあって、堀川さんの受賞の言葉の一節がぐっときた。
《絵本は、文章と絵とが互いに補い合って世界を作ります。その場合、絵は文章を説明しないこと、文章は絵を説明しないことが理想となります。文と絵はどちらが主でも従でもありません》
すごくわかる。そして、それは演劇や音楽についてもいえるのではないか。
とか思いながらTwitterを見ていたら、6月22日はシンディ・ローパーの誕生日らしく、川上未映子さんがすてきなツイートを連投していた。
この一連のツイートがまたしても胸に来て、《(音楽には遠くの誰かにもそう思わせる力があるよね)》というくだりに、特別にやられてしまった。
小沢健二さんの「彗星」の歌詞を読みながら、改めて心に刻んだこの一節にちょっとリンクしたのだ。
《今遠くにいるあのひとを 時に思い出すよ
笑い声と音楽の青春の日々を
再生する森 満ちる月 続いてゆく街の
宙を横切る彗星のように》
ほんとうに、わたしたちは日々、音楽や言葉や絵や表現の数々にどれだけ力をもらっていることか。誤読し、誤解する力も含めて。
(堀川さんの言葉に反して、説明的な「名画」を使ってしまった)
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