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フランスメディアによる『世界選手権:準々決勝までに日本について知っておくべき6つのこと』

Quentin Migliarini



フランスは、今週の月曜日夜 (午後 9 時)世界選手権ラウンドオフ 16 で日本に挑戦する。フランス人のフィリップ・ブランが率いる日本NTは、主要な大会の最後の4強に登り詰めるという野心に駆り立てられているが、レ・ブルーの元コーチは、変えるのが難しいほとんど不変の伝統にも対処しなければならない。

上昇、上昇、上昇するチーム…

レ・ブルーのセッターであるバンジャマン・トニウッティは、先週、あるジャーナリストが「ベスト4への道はすでに描かれている」とほのめかしたとき、少し声を詰まらせた。フランスのバレーボールは、世界の他の国のように観客がいるわけではない。だから、レ・ブルーの次の対戦相手が日本だと言っても、ブラジルやアメリカに対するほどの恐怖心を煽られない。それは習慣の問題。しかし日本はバレーボール大国であり、巨額の資金を投入し、結果を出している。世界ランキング7位の男子チームは、トップ5相手に苦戦しながらも、主要大会の終盤(2021年東京五輪、2022年VNLでは準々決勝)に向けて手ごたえを感じ始めているようだ。

トニウッティは先週の記者会見で日本について「技術的にはほぼ完璧、レセプションで動かすのは非常に難しい。彼らはフィジカルに少し欠けるが、それを補ってあまりある正確さがあり、レシーブやパスなどすべてのコンタクトに優れている」と語った。日本からはパナソニック・パンサーズのロラン・ティリ監督が「同じ価値観」を持つ2チームの対戦に意気込んでいる。「フランスは有利だが、日本は失うものが何もない。失うものがないときこそ、最も危険なとき」。

若いチームでありながら、日本は多くの分野で向上してきており、特にカウンターは他のチームと比較してインチが足りない分野だが、この高さの不足を補うために、日本チームはカウンターのテクニックとセット軌道の読み方について、特別な取り組みを行ってきた。「東京五輪から学んだことの1つは、我々は非常に優れたサーブを打つことができるが、効率が悪かったということ」とブラン監督。「バックのディフェンスは非常によかったのだが、カウンターでの効率性が欠けていた。今ベスト8の最下位に到達したと言えるだろう。次のレベルへ進むには、ブロック技術を向上させ、ボールをスローダウンさせるだけでなく、カウンターで得点する能力を向上させるべくブロック技術を高めることが必要だと考えている」。

世界選手権予選ラウンド終了時点でのベストカウンターアタッカーは、日本人の小野寺大志、201cmの「小さな」MBである。ティリ監督は「彼らはすべての技術面で間違いなく進歩しているが、とりわけレセプション能力に少し安定性の欠けるチームに対する、興味深いサーブの質に依存している。読みがよく、アグレッシヴで、以前よりずっとアグレッシヴになっている」と言う。

キャプテンが戻ってきた

日本のカウンターアタックの好調は、イタリアで数年間過ごしたベストプレーヤー(VNLフランス戦2試合は欠場)石川祐希が戻ってきたことも、要因の1つだろう。チームのキャプテンがコートにいることで、カウンターだけでなくサーブのレベルも上げることができる。ブラジル戦では必ずしも先発出場できる状態ではなかったが、ブランは復帰を早めるためにプレー時間を与えた。「残りの大会のためにも重要だった。このスパイカー兼レシーバーはすぐにリズムを取り戻し、キューバ戦ではよりいい試合をした」

「彼はまわりにあと少しの安心感と確信を与えてくれる。自信と意欲を与えてくれる。彼は才能あるプレーヤーだ。サーブもあるしアタックもある。レセプションではフランス人ほど安定していないかもしれないが、優れたプレーヤーだ」とティリ監督は言う。世界選手権が始まって以来素晴らしい配給をするセッター関田が、そのレベルを維持すれば、日本はさらに手強い存在になるだろう。

予選ラウンド最終戦からこのラウンドオブ16のフランス戦までの期間は、選手にとって管理が複雑で、みんなプレーするのが待ち遠しかったので、石川が負傷前のレベルを取り戻せたのは間違いないだろう。そうなればレ・ブルー戦の状況も間違いなく変わってくる。

ボーイズバンドの影響力

今夜、ビデオチャレンジやタイムアウトの最中に、ヒステリックな叫び声が会場に響いても驚かないでください。カメラが西田有志や髙橋藍の顔にフォーカスすれば、なおさら。これで説明がつくかもしれない。キャプテンの石川祐希とともに、この2人のスターは日本中で慕われている。3人のスターは行く先々で絶大な人気を誇り、グルーピーの情熱を解き放つ。その大部分が女性である。

「日本の観客の95%は女性か若い女の子だから、確かにボーイズバンドみたいなものだね」とブランは微笑む。「理解するのに時間がかかったのだが、ビデオチャレンジ中にみんなで画面を見ていると、急に人が騒ぎ出す。それがどうしてか最初はわからなかった。この反応を引き起こしているのはチャレンジのビデオだと思っていたのだが、実際は西田や石川の顔が映し出されていたからだった。おもしろいよね」。

まるで神様にお供え物をするように、選手にプレゼントが贈られる現象がある。日本人が憧れる選手への崇拝の形。「かなり過激で狂信的ともいえる」。これはSNS上でも確認されており、3人の人気は記録を更新している。西田有志(94万1,000人)と石川祐希(77万5,000人)は、レ・ブルーのスター選手エンガペ(41万9,000人)の2倍のフォロワーをインスタグラムで獲得している。髙橋藍がさらに頑張って、フォロワー100万人を突破(1.1M)!

跳躍するサウスポー、西田

今夜のフランスの仕事は、日本の攻撃の先鋒、小柄なポイントゲッター西田有志の動きを鈍らせることだ。彼は攻撃で爆発すると、マンガから飛び出してきたようだ。いろいろな意味で異例な、非凡なプレーヤー。身長187cmという体格は、日本では決して珍しいことではない。しかし、一般的に2mを超える身長のスペシャリストがいる超一流レベルでは、チームはこのタイプの選手にあまり信頼を寄せていない。ただし、西田有志は他の選手とはちょっと違う。

「彼が持っているリラックスさとパワーでは成功しないだろう、と言ったであろうコーチは、それによって大きなリスクを負うことになったはずだ」とブランは断言する。「スイングにパワーがあり、非常に卓越した選手」。跳躍力のあるレフティーは、天性のジャンプ力と優れた打撃力を兼ね備えており、改善の余地はあるものの、すでに地球上で最高のアタッカーの一人となっている。

1日5時間、週7日、1年中トレーニングをしなければならない日本の労働文化に鍛えられながら、西田はまた別のオープンさという資質も身につけた。そして昨季、彼の監督の勧めでイタリアのVibo Valentiaに移籍したのも偶然ではないだろう。

ブランは、西田が非常によく組織化されたチームに立ち向かうのを見たいと思っていた。「ポイントゲッターとして最高のレベルでプレーするためには、最小限の状況で相手のカウンターに対応すること、高い打点で打つこと、ラインを打つこと、ブロックアウトを取ることを学ばなければならない。それにはイタリアリーグは完璧な場所であり、それが彼の背中を押した」。最初のシーズンは怪我をして臨み、また怪我に苦しんだため、期待どおりにはいかなかったかもしれないが、西田は30点を超える試合をするなど非常に高いパフォーマンスを見せることができた。

伝統を揺るがすフランス人

2017年にアシスタントとして日本での仕事をスタートしたフィリップ・ブランは、この1年間監督としてチームを率いてきた。フランスを11年間率い、国際的な表彰台(2002年世界選手権銅メダル、2003年と2009年のユーロで銀メダル)に導いたブランは、日本列島のパイオニア的存在となった。それまで日本は決して外国人監督を信用したことがなかった。

その後、同じくフランス人のブルーノ・シャトーがチームに加わった。この元選手はアメリカ人の元選手と結婚し、妻に同行してアメリカに渡り、その後、妻の転勤先の沖縄に移った。フィリップ・ブランとブルーノ・シャトーという、フランスリーグのコートで顔を合わせていながら個人的に面識のなかった二人が、さまざまな事情から再会することになった。

シャトーは、ブランが選手のワークのために必要な、ボールを打つ能力を買われて採用された。「私は4人目のアシスタントで、担当は非常に限られている。私の他には統計のアシスタントが2人、ゲームプランの構成についても2人いる、それが普通だ。自分自身を証明し、ヘッドコーチにいいパフォーマンスを見せなければならない。

クローズドシステム

フランスの選手たちは、海外に出て一流の選手たちと肩を並べ、最高のリーグ(ロシア、イタリア、ポーランドなど)で新しいトレーニング法に立ち向かうことが、自分たちの成長を可能にしていることをよく知っている。日本のバレーボール界は、少しずつ、この道を歩んでいこうとしている。日本は伝統に根ざし、他者に心を開くことを好まず、孤立を好んできた。フィリップ・ブランとロラン・ティリは、それぞれのレベルで、こうした文化の壁を取り払おうと努力している。

2024年パリ五輪の出場権獲得も視野に入れ、日本の監督はパフォーマンス目標を掲げているが、出場するためには、このサイズ不足を補えるようになりたいという思いもある。「これからの時代は形態学がますます重要になるので、私たちはより大きなアスリートに取り組まなければならないことを彼らに説明しようとしている。それはすでに明らか」とブラン。

しかし残念なことに、日本の教育のあり方では、必ずしも大物が育つとは限らない。「選手の育成には大学が大きな力を持っている」とティリは断言する。世界最高の選手は17〜18歳で既にプロとしてプレーしており、その頃日本人はまだ大学リーグで低迷していて、学業が終了する22歳か23歳までそこから出ることはない。

「優れた選手と向き合えば、選手は進化し、進歩する。このコンセプトは、私が昨年打ち出したもので、それによって軽く叱られたもの」とティリは説明する。「スピードアップを図っているが、非常に政治的で階層的。ラインを動かすのはとても複雑なんだ」。そして、その困難は大学にとどまるものではない。若くしてプロ選手としての道を選ぶ選手もいるが、大半の選手は大企業に入社することが多く、なかなか辞められず、時には代表になることもある。

「あるクラブから別のクラブへ勧誘するにも、会社の許可が必要。パナソニックはトヨタに『こういう社員を出してください』と許可を取るのだが、トヨタが嫌がると採用できなかったり、財政状況が悪くなったりするので、非常に複雑なんだ。選手たちはほとんどクラブを変えないのだが、プロになりたいということで少しずつ動き始めているようだ。この純粋なプロフェッショナリズムの道を歩んでいるクラブは3つか4つある。日本のバレーボールは今、転換期を迎えていると思う」。

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