見出し画像

あのバンクシーも、パレスチナに対するイスラエルの非道な行いにずっと前から物申していたってことなど。パレスチナについて思うこと・その1

Make hummus,not walls

「壁なんて作ってんじゃねえよ、フムス作れ」

日本でも大人気のバンクシーが、パレスチナの壁に描いたメッセージの一つだ。壁、と簡単に言っているけど、それはイスラエルがパレスチナの領土との境に造った「分離壁」のことで、今、大変なことになっているガザ地区もずっと前からこの分離壁で囲まれ、人々は自由に出入りできず閉じ込められている。今に始まったことじゃないのだ。だから「天井のない牢獄」だなんて言われてもいるわけで、イスラエルはこの分離壁をガザ地区だけでなくパレスチナの領土内のあちこちで、領土内にどんどん侵食して造っているのだ。境界線にではなくて、境界線の内側にどんどん入り込んで。なのに大メディアは日本も欧米も、「壁が」とか「検問所が」とかサラリと書いて流しているだけ。そんな状況がずっと続いているから、バンクシーは抗議の意味を込めて「壁なんて作ってねえで、フムス作ってろ」と言ったわけ。

トップ写真に使ったポスターの壁画、こっちが本物。ベツレヘム市内の分離壁に描かれていた。ワタシ撮影。2019年5月

フムスとはご存じひよこ豆のペーストで、美味しいだけじゃなくてタンパク質などの栄養素も豊富なことから、最近はスーパーなヴィーガンフードとして人気が高い。これをイスラエル料理だとSNSに投稿したアメリカ人カリスマシェフがいて物議を醸したそうだけど、本来これはアラブ料理、つまりパレスチナの料理でもある。だからバンクシーはそのあたりのことも皮肉をたっぷり込めたのかもしれないね。

ちなみにバンクシーが全てデザインしたというホテルが、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区にあるベツレヘムにあって、私は2019年、そのホテルに泊まるため、という軽いノリでパレスチナと、そしてエルサレムなどイスラエル周辺を旅行した。その時のことを書いていこうと思う。

これがバンクシーのホテル。その名もthe walled off hotel(壁に囲まれたホテル)。ニューヨークにある超高級ホテルWardolf Hotelをもじったのは見え見え。ワタシ撮影
実はこんなぐちゃぐちゃで壁に囲まれた場所にある。「世界一眺めの悪いホテル」とホテル自ら皮肉っている。ワタシの友人撮影


分離壁の存在が今回の戦争で大きくクローズアップされて、まるで今、始まったことのように錯覚させる報道がされているように感じるのは私だけだろうか? 本当は、もう何十年も前から、イスラエル人が入植してきたことで土地を奪われたパレスチナ難民の人々が、ガザ地区に閉じ込められているのに。特に2005年にイスラエルが行った「撤退」という名の下に開始したガザ地区の封鎖政策で、人々はイスラエルの許可なく自由に出入りすることはできなくなっている。水や電気や食料をイスラエルが止めたことを今、「戦争だからって人道に反するよ、ダメだよ!」と報道しているけど、実はこの物資の封鎖も今に始まったことでは全然ないらしい。私が2019年にバンクシーのホテルに泊まって、ホテルが企画している難民キャンプを見学した時にも、「水はイスラエル領土からトラックで週に何回か運ばれてくるだけだから、ストップした時に備えて、建物の屋上に設置したタンクに溜めておく」と案内してくれた人が説明してくれた。

AIDA CAMPを案内してくれたパレスチナ人のおにいさん。分離壁の上部には有刺鉄線が見えている。ワタシ友人撮影。

農業をしてのんびり自分の国で暮らしていたのに、ある日、いきなり他所から誰かがやってきて、ここは神様が決めた私たちの国だから、お前は出ていけって言われて、どこか別の地区に押し込められて自由を奪われる。畑を耕しにもいけないから、土地は荒廃して農業ができなくなる。そうして収入がなくなって、土地を売らざるを得なくなる。そこへまたイスラエルがどんどん入植してくる。そういうことがどんどん進む。

たとえば今15歳ぐらいのガザ地区で生まれ育った少年少女たちは、生まれた時からガザから出たこともなければ、同じパレスチナ人が住む別の地域におじいちゃんやおばあちゃんを訪ねていくとかもできないし、多分一度も会ったこともない。どんなに優秀で高い教育を受けたいと思っても、ガザ内の学校にしか行けない。パスポートも持てない(!)から、海外旅行なんて当然未体験。失業率はガザ地区では50%近くて、仕事もなく、貧しく、将来も見えない。教育も与えられず、憎しみや抑圧や暴力に囲まれて育つ。

ハマスのやった絶対的に許されない暴力の裏側には、そういう背景がある。

サポートいただけたら嬉しいです!いただいたサポートで、ますます美味しくて楽しくて、みなさんのお役に立てるイタリアの話を追いかけます。