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短編集

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別名義で投稿していた小説を、自選で掲載しています。
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記事一覧

くよくよ団

呪いのマスミ 「呪ってやる……嫌いじゃ……バチ糞嫌いなんじゃボケがあああああ!!!!」 マスミはある日、キレた。この女、マスミは、ネット上では「おっさん」として知られている。しかし、マスミはれっきとした女性であり、編みぐるみ作りをこよなく愛する、三十一歳の、極めて大人しい性格の実家暮らしなのだ。祖母のデイサービスへの送迎は、マスミの仕事だ。そして、おっさんでは無い。 大福のような拳を叩きつけたキーボードの隙間には、柿の種・梅しそ味がびっしり張り付いている。「L」が取れて

死神

あるところに、惨めな子供がいました。彼の名前は「ジョイ(喜び)」。名前の通りの人生だったらこの少年はきっと、死神を見ることは無かったのかもしれません。 ジョイが八っつの時の、冬の夜の事です。ジョイは寒さと空腹で眠れないので、仕方なく、くたびれた毛布を体に巻き付けてじっと耐えていたのです。隣の部屋から、酔いつぶれた父親の大いびきが聞こえてきます。 こういう時の、ジョイの気持ちといったらどんなものかというと……おやじがこのまま朝まで目を覚まさなければいいのに。だけどあんなに大

バベル流星群

あらすじ 「旧約聖書・創世記」に記された、れんが造りの高い塔「バベルの塔」をイメージして作ったお話です。 主な登場人物 ・羽が生えた人……単眼の機械化人。生物の部分と、機械の体を持つ。体長は、130センチくらい。太陽光発電で動いているため、夜明けごろは元気がない ・羽が生えていない人(忘れられたじいさん)……ノアの大洪水の時に、たまたま大きな魚に飲み込まれて助かった男。とくに神に選ばれてそうなったわけではないので、歴史上では忘れられた存在となっている 流れ星になった太陽の