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マミコ、アミーゴ、ラテンアメリカのアラブの遺産と、イスラエル国家に反対したキューバの反植民地主義

 昨日、ドジャースとパドレスの開幕戦の中継を観ていたら、パドレスの金河成(キム・ハソン)選手はテレビのインタビューに答えて「この舞台に立たせてくれたアジアの先輩選手たちに感謝する」と語っていた(「韓国の先輩選手」とは言わなかった)。昨年、WBCで日本が優勝した時も大谷翔平選手は「日本だけじゃなくて、韓国もそうですし台湾も中国も、その他の国も、もっともっと野球を大好きになってもらえるように、その一歩として優勝できたことがよかったなと思いますし、そうなってくれることを願っています」と述べていた。金選手や大谷選手のような意識や姿勢を、日本を含めてアジアの政治指導者たちがもてば、ミサイルも「反撃能力」も不要になるだろう。

パドレスのキム・ハソン(金河成)内野手 https://full-count.jp/2024/01/15/post1499125/

 中継カメラは大谷選手の真美子夫人をしきりに追っていた。大谷選手の打球の行方に一喜一憂する夫人の表情は微笑ましかったが、真美子夫人がスペイン語圏で人気があるというデイリースポーツ紙の記事があった。「マミコ」の音がスペイン語の「アミーゴ(友達)」に似ているからだという。スペイン語圏の人々が愛想よく「アミーゴ」と声かけるのは、ロサンゼルスで暮らしている時にもよく遭遇した。

https://www.nikkansports.com/baseball/mlb/photonews/photonews_nsInc_202403200001266-1.html

 スペイン語には4000語ぐらいのアラビア語起源の単語がある。その理由はアラブ・ムスリムがスペインやポルトガルが位置するイベリア半島を支配していたからだが、少々例を挙げれば、limón(リモン):レモン、álgebra(アルジェブラ):(数学の)代数、cero(セロ):ゼロ、almuerzo(アルムエゾ):昼食、arroz(アロス):米などだ。料理でも、野球が盛んで、昨年WBC準決勝で日本と激闘を繰り広げたメキシコの人々はアラブ・ムスリムたちがイベリア半島にもち込んだコリアンダー、クミン、シナモン、クローブなどの香料を用いる。

 メキシコのタコスのチェーン店には「エル・カリファ」(イスラム世界の最高指導者を意味する「カリフ」から由来)、「タコス・アラブ」や「カフェ・エミール(首長)」など、アラビア語名がついた有力なチェーン店がある。

エル・カリファのタコス https://twitter.com/ElCalifaMx/status/958111126151221248

 メキシコの代表的チーズのオアハカチーズ(ケスィージョ)もアラブの影響があるとされる。メキシコのお菓子のマサパンの起源は、中世アラブ世界にあり、アッバース朝(750~1258年)などでは砂糖とアーモンドで作られたが、メキシコではアーモンドの代わりにピーナッツが使われる。

 キューバではアラブ・イスラム文化は料理のアロス・モロ(ムーア人のご飯の意味。黒豆ご飯。)や建築のムデハル様式(スペインのレコンキスタ後に、スペインに残留したムスリムとクリスチャンの建築様式を融合したもの)などに見られるが、これらのアラブ文化はスペイン領になるともち込まれたものだ。

アロス・モロ 健康的な感じがします https://pronacatqma.com/recetas-de-1-a-20-minutos/recipe/1779-arroz-moro.html

 「アロス・モロ」の黒豆はムーア人を、また白飯はクリスチャンを意味し、建築のムデハル様式と同様にイスラム文化とキリスト教文化の折衷を象徴的に表しているという。ムデハル様式の建築物は多くがスペイン人の職人によって17世紀につくられたが、そこでは意識しなくてもアラブ的要素が採り入れられた。キューバには、フラメンコとベリーダンス、そしてキューバ・ダンスを混ぜたような踊りも見られる。

メキシコ・グアダラハラのサンタマリア大聖堂 ムデハル様式 https://photogoroda.com/foto-247405-templo-de-santa-maria-de-gracia-y-torre-de-la-catedral-de-gu.html?fbclid=IwAR1zV04f52zqrMXmhL5SiKVQsDm4goPHdve1qR4qcHvqG0iIH8s2FI-PYQk

 キューバに独特なグアヤベラ・シャツの起源にもアラブ人たちの貢献がある。グアヤベラ・シャツは、開襟で、左右の身頃を縦に走るタックや刺繍があり、両胸、あるいは両脇にポケットがあるが、カストロたちの革命以前、キューバのアラブ人たちは織物業で中心的役割を果たしていた。

キューバのグアヤベラ・シャツ https://detailsandtraditions.com/blogs/our-blog/all-about-guayabera-shirts-and-outfits-and-how-to-wear-them

 キューバは、1947年の国連パレスチナ分割決議案、つまりイスラエル国家の成立にも反対した国だった。キューバの反対は、法律家だったエルネスト・ディーゴ国連代表によって表明された。ディーゴはバルフォア宣言や国連の分割決議案には何の法的根拠がなく、また先住のパレスチナ人たちの権利を擁護せず、シオニストの入植者植民地主義は強制によって先住の人々の土地を奪うものであると主張した。

 キューバの主張は、パレスチナ問題の本質を突くものといえるが、スペインの植民地主義に抵抗して、独立したキューバだからイギリス帝国主義によるバルフォア宣言や、シオニストの植民地主義は許容できなかった。イスラエル国家成立に反対したキューバの姿勢はその民族自決運動の遺産によるものだった。

オアハカチーズ https://meatexpress.jp/ja/product/queso-oaxaca/


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