最近の記事

イスラエルへの抗議はフランスの大学にも飛び火 ―学生の運動がアメリカ・イスラエルの「特殊関係」を変えるか?

 ガザ停戦やイスラエル企業からの投資撤収を求めるアメリカの学生たちの運動は、フランスにも飛び火し、マクロン大統領などを輩出してきたフランスの名門パリ政治学院でもガザでの戦闘に反対するが学生たちが建物の一部を占拠した。  占領地におけるイスラエルによる国際法違反の行為すら容認するアメリカ政府の姿勢がパレスチナ和平の停滞をもたらしてきたことはまぎれもない。アメリカはロシアのウクライナ侵攻を非難するが、占領地におけるイスラエル人入植地の拡大については、いっこうに批判することがない

    • 「いちご白書をもう一度」 ―コロンビア大学の学生たちは「パレスチナ問題の公正」を訴える

      1969年7月にジョン・レノンはプラスティック・オノ・バンドの名前でベトナム反戦歌の「平和を我等に(Give Peace a Chance)」をリリースし世界的にヒットさせ、この歌の中で繰り返される「All we are saying is give peace a chance/言いたいことは平和に機会をってことさ」というフレーズとともに、平和のメッセージを世界に浸透させることに成功した。「平和を我等に」は、1968年のコロンビア大学の学生運動を描いた映画「いちご白書」のラ

      • 欧米とは異なる姿勢でイスラム世界の評価を受けた明治期の日本

         明治期の日本は植民地主義の欧米とは異なる、独立した姿を見せ、ヨーロッパ支配の下に置かれていたアジア、中東イスラム世界の人々に勇気を与えていた。  イランのメフディ・ゴリー・ヘダーヤト(1863~1955年)はパフラヴィ―朝時代の1927年から33年まで首相であった人物で、政治回想録やイランの音楽、教育などに関する著作を残している。その紀行文の『メッカへの旅』の中で、1903年末から04年初頭にかけて首相在任以前に来日した際の印象を書き記している。  ヘダーヤト(1863

        • アメリカの学生たちはイスラエルのジェノサイドへの抗議に立ち上がる

          アメリカの大学ではイスラエルのガザ攻撃に抗議するデモが広がりを見せつつある。コロンビア大学では、4月18日、イスラエルのアパルトヘイト政策やジェノサイド、パレスチナ占領から利益を得る投資から撤退するよう大学側に求めるデモが行われると、警察が投入された。100人が逮捕される事態になると、抗議デモはいっそう勢いづき、コロンビア大学は対面授業を断念し、オンライン授業に切り替えざるを得なくなった。デモは、マサチューセッツ工科大学(MIT)やイェール大学、カリフォルニア大学などに波及す

        イスラエルへの抗議はフランスの大学にも飛び火 ―学生の運動がアメリカ・イスラエルの「特殊関係」を変えるか?

        • 「いちご白書をもう一度」 ―コロンビア大学の学生たちは「パレスチナ問題の公正」を訴える

        • 欧米とは異なる姿勢でイスラム世界の評価を受けた明治期の日本

        • アメリカの学生たちはイスラエルのジェノサイドへの抗議に立ち上がる

          イスラエル軍が撤退したナセル病院から280人余りの遺体 ~いっそう求められる国際社会の停戦圧力

           イスラエル軍が撤退したガザ南部のナセル病院から280人余りの遺体が発見された。言うまでもなく、病院への攻撃は国際人道法違反、武器をもたない民間人の殺害は国際法違反のジェノサイドだ。国際社会はイスラエルに対して最大限の抗議の意思を表明すべきだ。ナセル病院は国境なき医師団日本会長の中嶋優子医師も昨年11月から12月にかけて活動していたところだ。  日本政府は岸田首相も、上川外相も昨年10月7日のハマスの奇襲攻撃があって以来、「ハマスのテロを断固非難する」と表明してきたが、この

          イスラエル軍が撤退したナセル病院から280人余りの遺体 ~いっそう求められる国際社会の停戦圧力

          パレスチナの国連加盟に拒否権を行使した米国と、イスラエルの人権侵害を非難してきた世界の作家たち

           18日、国連安保理は米国が拒否権を行使して、パレスチナの国連加盟を勧告する決議案を否決した。米国のロバート・ウッド国連代理大使は拒否権を行使した理由を「イスラエルとパレスチナの紛争を恒久的に解決する和平合意が必要だ」と説明したが、米国はパレスチナ問題の二国家解決を主張しているだけに支離滅裂だ。反対は米国だけ、イギリスとスイスが危険し、日本を含む12カ国が賛成した。これに対してイスラエル外務省は賛成した国々の大使を呼び出し、抗議することを表明した。外務省報道官は、パレスチナの

          パレスチナの国連加盟に拒否権を行使した米国と、イスラエルの人権侵害を非難してきた世界の作家たち

          ロシアは招待しないで、イスラエルは招待する広島の平和式典 ―世界は日本の「二重基準」を見ている

           広島市は今年8月の平和式典にロシアとベラルーシを招待せず、イスラエルのガザ攻撃は世界の評価が定まっていないという理由で、イスラエルは招待するするのだそうだ。2022年に初めてロシア、ベラルーシを最初に招待しなかった時、「式典に招待することで、ロシアに誤解を与える懸念がある」という理由で、これら二国の不招待を政府と協議して決めたという。(「中国新聞」同年5月20日の記事)。  イスラエルを招待するという今回の措置も広島市は政府と協議して決めたのだろうが、昨年10月7日にハマ

          ロシアは招待しないで、イスラエルは招待する広島の平和式典 ―世界は日本の「二重基準」を見ている

          イラン・イスファハーンは「世界の半分」と呼ばれるほど繁栄し、東西文明の交叉する都市だった

           19日にイスラエルの報復攻撃を受けたイランのイスファハーンは、サファヴィー朝(1501~1736年)時代に「世界の半分」とも称されるほどの繁栄を謳歌した。イスファハーンが繁栄した様子は、現在でもこの街を歩くと容易に垣間見ることができる。縦が50メートル、また横が300メートルの世界遺産「イマーム(シャー)の広場」を中心にモスク、バザール、宮殿、また神学校が建築された。「イマームの広場」の南には「イマーム(シャー)のモスク」が、また東にはシャイフ・ロトフォッラー・モスク、北に

          イラン・イスファハーンは「世界の半分」と呼ばれるほど繁栄し、東西文明の交叉する都市だった

          イスラエルのイランへの報復攻撃 ―イラン人から最も好感のもてる国とされる日本の可能性

           イラン中部のイスファハーンの軍関連施設で爆発があり、イスラエルが報復攻撃を行ったと見られている。  イスラエルは今月1日、シリア・ダマスカスのイラン大使館領事部に攻撃を行い、革命防衛隊の司令官やシリア市民などを殺害したが、それに対してイランも13日にドローンやミサイルで報復攻撃を行った。イスラエルが先にイランを攻撃し、それも国際法で禁じられる外交関連施設への攻撃だった。イスラエルのさらなる攻撃は事態の悪化を招くだけだと思われたが、イスラエルは報復攻撃に踏み切った。イランが

          イスラエルのイランへの報復攻撃 ―イラン人から最も好感のもてる国とされる日本の可能性

          イスラエルに核兵器を保有させたアメリカの「二重基準」と、日本はその「二重基準」に従う?

           イスラエルは、イランをはじめイスラエルと対立する国の核開発には容赦ない姿勢を見せてきた。イランへの報復で、イスラエルがイランの核関連施設を攻撃するという可能性も指摘されているが、このイスラエルの姿勢は1980年代のイラクの核へのそれに類型を見るようだ。  イスラエルは、サダム・フセイン政権下のイラクが核兵器開発の疑惑をもたれると、1981年にイラクの首都バグダード近郊のオシラク原子炉を空爆して破壊してしまった。 イラクと、イラクに原子炉を輸出したフランスは、イラクの核が平

          イスラエルに核兵器を保有させたアメリカの「二重基準」と、日本はその「二重基準」に従う?

          ヨーロッパ帝国主義が盗みまくったエジプトの誇りと文化遺産

           小池百合子・東京都知事の学歴詐称疑惑をめぐってやはり東京都知事を務めたことがある舛添要一氏が小池氏はもう政界から去ったほうがよいと✕に書き込んだ。舛添氏は2020年に小池氏の疑惑がもち上がった時に「カイロ大学が小池都知事が1976年に同大学を卒業したと声明。卒業証書や卒業に至る経過、成績表は公開せず。先進国の大学なら、全ての記録を保管し公表できる。声明など出すこと自体が政治的で胡散臭い。日本からの援助を期待する外国政府まで(小池氏は)使う。・・・エジプトという専制国家ならで

          ヨーロッパ帝国主義が盗みまくったエジプトの誇りと文化遺産

          不毛な報復と、アジアの人々は「復讐」を考えなかった

           イランのイスラエル攻撃についてイスラエルが報復を考えているようだが、イランの攻撃はイスラエルが4月1日にシリア・ダマスカスのイラン大使館領事部を爆撃してイランの軍関係者などを殺害したことに対する報復として行われたもので、イランの報復的攻撃はイスラエルが自ら種を蒔いたものだ。報復の応酬はキリがなく、その規模を拡大させるだけでまったく不毛なものだ。イラン革命防衛隊の参謀総長も「われわれの攻撃はこれで終わりだ」と語っている。  広島の被爆体験を英語で語る小倉桂子さんがいわゆる「

          不毛な報復と、アジアの人々は「復讐」を考えなかった

          イランの報復攻撃のみを非難する岸田政権は「アジア同胞」としての視線に欠ける

           イランがイスラエルとの本格的戦争を望まない背景には1980年から88年まで継続したイラン・イラク戦争の記憶もあるだろう。この戦争では前線でサダム・フセインのイラクが化学兵器など大量破壊兵器を用いるなど、イラン側には甚大な被害が出て、革命防衛隊、政府軍、バスィージュ(民兵組織)を合わせた戦死者は60万人、また市民の犠牲者も10万人と推定されている。    サダム・フセインのイラクでさえも8年間戦ってイランの首都テヘランを制圧できなかったのだから、イスラエルにとってもイランと

          イランの報復攻撃のみを非難する岸田政権は「アジア同胞」としての視線に欠ける

          イラン・イスラエル戦争―戦争は終わらせるのが難しい

           イランがイスラエルに向けて弾道ミサイルやドローンを発射した。4月1日のイスラエルによるものと見られるシリア・ダマスカスのイラン大使館攻撃に対する報復として行われたものだ。イランのイスラエルに対する報復攻撃が指摘される中、12日、アメリカのバイデン大統領はイランに対して「やめろdon’t」と警告したが、他方でバイデン大統領はイスラエルによるイラン大使館攻撃を非難することは決してなかった。  岸田首相の訪米で出された日米共同声明ではガザ問題について「我々は、昨年10月7日のハ

          イラン・イスラエル戦争―戦争は終わらせるのが難しい

          大谷翔平選手と、世界の普遍的表現「あるがままに生きる」

          「人は運命の矢から逃れることはできない。だから起こった出来事をあるがまま甘受することが唯一の盾になる。」サーディー(イランの詩人)。  ドジャースの大谷翔平選手は、3月25日の会見で、「僕自身も信頼していた方の過ちというのを、悲しくというかショックですし、今はそういうふうに感じています」と語った。大リーグに移籍してからずっと元通訳とは行動が一緒と見られるほど、誰からもその信頼ぶりがわかるほどだったから精神的な衝撃の大きさは容易に想像できる。事件が明るみになってからも大谷選手

          大谷翔平選手と、世界の普遍的表現「あるがままに生きる」

          科学者アインシュタインの最後の訴えと、戦争の空しさを説くプレヴェール詩集

           1955年4月11日に科学者のアルバート・アインシュタイン(1879~1955年)は「ラッセル=アインシュタイン宣言」に署名した。アインシュタインが他界したのはその直後の4月18日だったから著名な科学者の最後の訴えだった。  「ラッセル=アインシュタイン宣言」は「われわれの前には、幸福、知識、知恵の不断の進歩がある。争いを忘れることができないという理由で、われわれは死を選ぶのであろうか。われわれは人類として、人類に向かって訴える。あなた方の人間性を心にとどめ、他のことを忘

          科学者アインシュタインの最後の訴えと、戦争の空しさを説くプレヴェール詩集