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tokeiという曲の話をしよう

SoftBallBear(通称そふべ)というバンドをご存知だろうか?
僕がギターボーカルを努めているバンドで、元々はBase Ball Bearのコピーバンドとして2019年の5月頃に結成された。

しかし、いい大人がバンドをやっていくうちに、いつかはオリジナル曲をやりたくなるもの。(自分はそうだった)
そんな結成10ヶ月程のタイミングでリリースされた、SoftBallBear初であり、唯一のオリジナル曲である"tokei"という曲。


この曲はいくつかの奇跡…というとちょっと大袈裟かもしれないが、偶然が重なって出来たら曲である。


奇跡その①〜リズムマシーン「Dubsteppin」との出合い

まずはそもそもこの曲は、このバンドのために作った曲ではなかった。
元々は弾き語り活動用に何かルーパーでリズムを流しながら弾く、隙間の多い曲を作りたいと思っていた。
そんな時になんとなくダウンロードしたリズムマシーンのアプリで、なんとなく流したBPM=140の「Dubsteppin」というリズムが、奇跡的にピンときて、そのリズムに合わせてアコギのアルペジオを弾いたものがこの曲の原型になった。(そのDubsteppinというリズムパターンは、tokeiの完成形のイントロのパターンそっくり!)


奇跡その②〜Bassえりな、風邪にてスタジオ練習を欠席する〜

その日は通常通り、4人でライブ前の練習をするためにスタジオを予約していた。
しかし当日になり、ベースのえりなが体調不良で欠席となる。

とりあえずスタジオは予約していたので男3人でスタジオに入るものの、やっぱりBase Ball Bearの楽曲にベースも女性コーラスも必要不可欠。
今ひとつモチベーションの上がらない男3人は、「曲作るか!」という流れになり、そこで僕が「そふべっぽくない曲で良ければすぐ出せるけど]と言ってメンバーに聴かせたのが、その「Dubsteppin」のリズムパターンに乗せたtokeiの原型だった。

そしてその日のうちに7割型曲を完成させた。
あれは奇跡の夜だった。ライブ前だというのに。

ある意味、あの日えりなが風邪で欠席しなければ生まれていなかったのかもしれない。


奇跡その③〜漢の一発レコーディング〜

とはいえ、バンドとして曲が完成したのは2月下旬のことである。
その時点で既にギターのゆすけは北海道への引っ越しがきまっていたので、発売するなら3月のライブしかないよね?
…となるとゆっくりレコーディングしている時間もない。
そうなると残された選択肢は一つしかない。

「一日で録る」

オリジナル曲のレコーディングの経験のあるバンドマンならなんとなくわかってくれるとは思うが、レコーディングとは通常はだいたい、

1.ざっくりしたガイドとなるデモをとる。
2.それをガイドにドラムを録る。
3.ベースを重ねる
4.ギターを重ねる
5.ボーカルを重ねる
6.コーラスを重ねる
7.MIX(録音するソフトで調整)をする
8.マスタリングする
9.CDに焼く

といった手順を踏むことになる。殆どの場合、すべての工程を一日で終わることは、ほぼほぼないだろう。

しかもタイミングがなかなか合わず、レコーディングの場所を確保できたのが、、なんと発売予定日の前日だった!笑

これはもう、そうだ。上記の1〜9までの手順を、省けるものは省いて、かつ一日でやるしかないのだ。無謀じゃね??



そして迎えたレコーディング当日(発売日の前日…)
我々の選んだ方法は『一発録り』という方法だった。
ドラム→ベース→〜と重ねていくのではなく、全ての楽器を、ライブと同じようにみんなでせーの!で録音するというもの。(録音品質や諸々の事情で歌だけは後で重ねる)
想像はつくかもしれないが、これは相当な練習と一体感が必要だ。なにせ、誰かが途中で間違えたら即終了。また曲の初めから取り直さなければいけない、いわば『完奏まで全員が納得するまで帰れま10』状態なのだ!

でも多分、それでもバラバラに録るよりは早い、きっとそうだ。その時僕らは信じていた…

午前中から始まったレコーディングは、いつもゆるゆるを極めていたそふべのそれとは到底思えないほどの例え難い程の緊張感によりミスを連発、テイクを重ね、気がつけばもう夕方…。4時間程、一曲の曲の演奏を繰り返した。
「きっともう、これ以上やってもなっとくのいくテイクは録れない…」
そう思い諦めようとした、泣きの一発。
ラスト28テイク目、奇跡的に全員が納得のいくテイクを録る事ができたのだ!!!(やっていくうちに拘りも出てきて、更に自分の中での合格ラインが上がっていた… )
28テイクって。

そして楽器を取り終えたそふべは、ある程度スタジオを片付け、僕は歌を重ね録りし、コーラスを重ね、なんとか素材を揃えることができた。この時点で感無量になりかけたが、まだ早い。

その日はその後、家電量販店にCD-Rを買いに行き、メンバー全員で猫カフェに行き()、僕は録った楽曲をMIXし、CDに焼かなければいけなかった。


奇跡その④〜超絶短時間MIX〜

何を言いたいのかと言うと、あの短時間でのMIXだった割には、今聴いてもなかなか良い音でとれているなぁ、と言うこと。それが奇跡。
最近、友人バンドのレコーディングを担当したのだが、数日かけてMIXしてもまぁ納得いかない。それなのに、tokeiのMIXは数時間、いや、下手したら一時間未満で終わった。これも凄い奇跡。



そして次の日のライブの物販で、無事に発売をする事が出来た。
そんな経緯があったのでした。

余談ではあるが、「なんでカラオケバージョンが入ってるの?」「お前の曲なんて誰も歌わねぇよw」と思う方もいるかもしれない。
何故今回、インストバージョンを入れたのかというと、
それがあの日のリアルなそふべの音」だから。
歌以外一発録音なので、つまりはインストバージョンの音こそが、あの日スタジオで演奏された、そふべの音なのです。
それをそのまま収めたかった、そういう想いがあります。

あとは、自分が他のバンドのインストバージョンを聴くと、歌が無いならではの発見があると思ったから。
(あとは単純に、自分が聴くときに恥ずかしくないしねw)

そんなことを意識して、もう一回"tokei"を聴いますてもらえたなら嬉しいです。





長くなりましたが、今日はnote第一弾として、"tokei"にまつわるお話をしました。

実はそふべは解散していません。
八戸にいないメンバーもいるし、この状況下において、モチベーションがどこかにいってしまうのも無理はないけど、いつの日か、またこのメンバーで、この曲を演奏できたらと思います。その時は泣いてしまうだろうなぁ。

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