見出し画像

龍神さまの言うとおり。(あとがき)

いきなりだが、本当に「龍神さま」って、いるのだろうか?

筆者は見た事がない。しかし、「いる」と信じたい。見えない世界に存在すると・・・。そんな、見えない世界をモチーフにした小説、あってもいいと思い書いたのが「龍神さまの言うとおり」である。

主人公である三河洋介は、すでに中年サラリーマンの域に達している。海外に憧れて旅行会社に入った後は、仕事ひと筋で生きてきた人物である。髪には、うっすらと白髪が混ざっているのかもしれない・・・。

そんな洋介は、はるか昔の高校時代に同級生と恋に落ちるが、プラトニックでフェードアウトしてしまう。淡く美しい高校時代の恋。人によって濃淡はあれども、昔の純粋な恋物語を、胸の中にしまって生きてきた方は少なくないと思う。

もし、あの時の異性と偶然、出逢ってしまったら・・・。

ただ単に、すれ違うだけの出逢いではなく、お互いの過去を語り合い、淡く美しい思い出を分かち合う時間があったなら、あなたは何を伝えようとするだろうか?

小説の設定では、お互いにパートナーと別れて、高校時代の同級生と再婚するという流れで展開する。しかし、実際はケースバイケースであり、単純に世間話しで終わり、その場で明るく会話して別れ、もう二度と会わないかもしれない。しかし・・・。

「あの時、もっと正直に気持ちを伝えていれば・・・」

そんな後悔の念にも似た想いを抱いたままの人であれば、「もし出逢ったなら、昔の胸の内を今こそ伝えたい・・・」、そう思う人も多いのではないだろうか。

ただ、そこでフォーカスすべきものがある。それは、人生のシナリオ。

それは予め生まれる前から設定した人生の筋書きといってもいい。もし、あの時の出逢いが、淡く美しい恋で終わってしまったのであれば、あの時は、それでよかったのかもしれない。だって、そうなることが人生のシナリオなのだから・・・。

淡く美しい恋。それは、「遠い日の花火」のままでいいのではないか。

人生には、さまざまな分岐点がある。そんな岐路に立った自分が選んだ道、その行きついた先が今である。

中年期を迎え、これから先、まだまだ進む道は続いている。「フレンパ」の小説に登場する綾島吾朗ではないが、会社の窓際に追いやられ、不本意極まりない仕事に従事している方もいるだろう。

今は、過去の積み重ねから出来ている。

淡く美しい思い出。そんな過去があるのなら、浸る時間は必要だろう。なぜなら、それは・・・、思い出の「宝箱」なのだから。いま現在が辛い境遇であれば、その「宝箱」が疲れた心を癒す薬にもなるだろう。たまには、箱を開いて遠い日の花火に酔う・・・、それは人情である。

胸にしまった「宝箱」。それを開けて、また閉める。

つまり、「謙虚に歓び、潔く諦める」。そんな生き方ができれば、これからの人生は楽しくなるのかもしれない。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?