地主 幸

ことばを並べるのが好きです

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雫を落として

涙をぐっと堪えて、歩いていた。 雨上がり。 傘をさす人はなく、すれ違う表情を見ればどこか晴れやかで。 「雨が降っていればよかったのに」 灰色の雲の隙間から、光の線が柔らかく差し込む。 私は空を睨んだ。 雨が止みさえしなければ。 雨が止みさえしなければ、 泣いていても、傘で見えなければ誰にも気づかれない。 雨が止みさえしなければ、 嗚咽も、鼻をすする音も、誰にも聴こえない。 あの人が居るはずもない思い出の喫茶店に行って、感傷に浸って泣きそうになりながらの帰り道。

    • 雨、飴、降れ、振れ

      傘の下君の名前が消えている もうふらないであめは要らない

      • ゆるゆる短歌

        幼き日〈だいじなもの〉を集めてた お金と石とそれとビー玉 消えないように、ここにも残す

        • 花びらみたいね

          君の言葉なら 散らかっていても美しい 地面を飾る花びらみたい あちらこちらに散っている ああきれい それらを大事に大事に集めて 瓶に入れて飾るのが好き

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        雫を落として

          我が道をゆく(詩)

          道なきところに道をつくるのは あとに続く人のためだと 誰かが話しておりました そんな格好いいこと言えないから 私は辛くなったときに逃げるための道を 今日もせっせとつくっているの あんなときはあの道に そんなときはその道に こんなときはこの道に すぐに逃げられるようにと その先に その先に思いもよらぬ 待っていてくれる人がいたりして

          我が道をゆく(詩)

          ふたりだけのミルクレープ

          どんなにささやかなものでも、温度のある優しさに触れると心地いいものです。 例えそれがたいそうなものでなくても、それは重なって。 ありがとうを挟みながら重なって重なって重なって。 そうやって、積み上げたら美味しいものができますね。 薄い生地を焼いてクリームをあいだに入れて重ねるミルクレープはいかがでしょう。 できあがったふたりだけのミルクレープを、微笑みあっていただきましょう。 珈琲をいれてきますね。 用意するので、ちょっと待っていてくださいね。

          ふたりだけのミルクレープ

          ひと月の短いこと

          何も書かないまま、ひと月が経っていました。 突然何も、浮かばなくなっていました。 文字が出てこないというか、言葉を上手く選べないというか。 どうしたものか。 ひと月、「うーんうーん」と唸っておりましたが、筆が止まっていることをここに書くことで救われたりするかしら、と書いてみました。

          ひと月の短いこと

          心模様、空模様

          天気ひとつで気持ちが落ち込む。 曇り空。 湿った空気。 土砂降りに、雷。 天気なんかに振り回されてたまるか、なんて思う時がある。 でも、天気ひとつで気持ちが救われる。 優しい晴れ間。 やわらかい風。 麗らかな陽気に、雨上がりの虹。 自分一人ではどうしようもない怒りや悲しみや苦しみも、天気が良い方に動かしてくれることがある。 だから心に正直にいる。 意地を張っていたいと思った時は、意地を張っておく。 晴れるから。 泣きたい時は、泣いておく。 晴れるか

          心模様、空模様

          春かおる十七音

          木蓮や 幾度目の春を 迎えたか 静かさや 落ちぬ椿に 夢を見る 春暁の 小雨は今日も 柔らかく 沈丁花 濡れる花びら 艶やかに 蕗の薹(ふきのとう)苦さに恋し 摘み取って 艶やかに 魅惑を放つ 芍薬よ 美しい花を見て「きれい」と微笑み合える人がいることほど、幸せなことはないのかもしれません。

          春かおる十七音

          頭の中の本棚

          福井県立図書館さんの 「覚え違いタイトル集」が更新される度、にやにや見ています。 「私もその間違え方した!」と共感したり、 「ひ〜!予想の斜め上〜!」と驚愕したり。 よく図書館に行く方、書店に行く方は、見かけたことのあるタイトルもあるのでは? このあたりがすごく好き。 いや、好きなものを挙げ始めたらキリがないです… 覚え違いのタイトルだけで、新しいストーリーが作れそうなくらいです。 誰かの頭の中の本棚を覗いているような気分になります。 ぜひ一度ご覧くださいませ。

          頭の中の本棚

          雀や(詩)

          雀や 雨宿りか 椿の木の中で 雀や 濡れた羽を 震わせながら 雀や 濃緑の葉の影で 何を話しているのか 赤い花びらがひらり 小さな重さに耐えられず はらり落ちていった 雀や 枝から枝へ 雫が跳ねる 雀や雀 教えておくれ 身の寄せあい方というものを ------------------------- 冬の羽毛の、まんまる雀たち。 突然降り出した雨から逃れて、椿の木の中で遊んでいるのを見かけました。

          雀や(詩)

          嬉しいご報告

          2021年3月31日リリース 地方創生RPG「キズナファンタジア 〜海辺の国の大聖典〜」 こちらのゲームアプリ内に出てくる魔法名と、その呪文の募集(回復、炎、雷の3種類)がありまして…… 思いきって応募してみたところ、 2つ採用していただきました。 ここでセルフ拍手(*´꒳`ノノ゙パチパチ 採用していただいた魔法・呪文は以下2つ 応募する際に考えたのは ・地域の特産や観光地、方言を使う ・詠唱っぽくする 応募するも採用とならなかった残り2つも含めて、こちらに供

          嬉しいご報告

          花は咲く

          真っ白な 雪道に 春風香る わたしは なつかしい あの街を 思い出す 叶えたい 夢もあった 変わりたい 自分もいた 今はただ なつかしい あの人を 思い出す 誰かの歌が聞こえる 誰かを励ましている 誰かの笑顔が見える 悲しみの向こう側に 花は 花は 花は咲く いつか生まれる君に 花は 花は 花は咲く わたしは何を残しただろう (NHK『明日へ』復興応援ソング「花は咲く」より) これからを、見ていきたいです。 過去を思い返さないのではなくて、 過去を想い続けて、これ

          花は咲く

          若い芽は

          摘んでから食べるタイプです! …怖いですね。 怖いです。 お笑い芸人のトム・ブラウンのみちおさんが言いそうです。 「芽キャベツがおいしかったよ」と言いたいだけなのに、サイコパスな感じになってしまいました。 ここ最近の楽しみは、『有吉の壁』を観ることです。

          若い芽は

          54字の物語 子ブタ

          三匹の子豚の元に、住宅会社から電話があった。「施行不備が発覚致しましたので、退去して頂かなければいけません」 過去のものです。 以前PHP研究所さんの、「54字の文学賞」のために作っていたお蔵入りのものです。 こちらで供養させてくださいませ。

          54字の物語 子ブタ

          上がリチャード・ギア、下がトム・クルーズ

          母はよく言っていました。 「パパはね、パパはね、顔の上半分が、リチャード・ギアなの!それでね、顔の下半分がトム・クルーズなの!ほら、見て!かっこいい!」 「ひとりで二人分のかっこよさを持っているというのはなかなかすごいなあ」と子どもながらに思ったりしていました。 上がリチャード・ギア 下がトム・クルーズ 完全に一致!!!! …とはならないものの、「なるほど言いたいことは分かる」というくらいには似ていました。 母が頬に手をあてながら嬉しそうに話しているのを見ている

          上がリチャード・ギア、下がトム・クルーズ